長編SS投下用スレッド (142レス)
1-

105: 『諦念と執念』 2013/08/17(土)05:23 AAS
放課後になり、俺は止む無く古泉の教室へと向かう。古泉は如才ない笑顔で迎えた。
「歓迎は出来んな。事と次第によっては扱いが手荒になるぜ。」
古泉は肩を竦めると、また如才ない笑顔を浮かべた。
「立ち話も何ですし、宜しければ文芸部室に行きますか?涼宮さんはお帰りになられましたし、そちらのほうが話もしやすいですから。」
古泉の言葉に、俺は露骨に顔を顰めた。
「断わる。俺は文芸部室に近寄るつもりはない。」
確かにそっちが都合はよかろう。長門や朝比奈さんにしても、あの二人の話も聞けるだろうしな。だが。
今更話す事は何もない。接近した理由も全てハルヒ絡みであった以上、ハルヒとの付き合いを絶った今、彼女らとの繋がりもないわけだ。それはお前にしても同様なんだがな、古泉。
明確な拒絶の意思に、古泉は溜息をついた。
「言い訳を宜しいでしょうか?」
「既に聞いている。」
団を抜ける時に、お前らの意思は聞いたよ。お前らは俺よりハルヒが大切であり、俺は仲間ですらなかったんだよな?
「それは語弊があります。我々の目的は確かに涼宮さんの観測。そちらを優先せざるを得なかった。」
確かにそうだ。お前にしろ長門にしろ朝比奈さんにしろ、ハルヒとの絡みがある時以外は俺を積極的にいじめなかったわけだからな。
けどな、だからこそ辛かったんだよ。あの時はお前らに助けてもらいたかった。我儘だと理解しているが、当時の俺にはどうしようも出来なかったからな。それすら甘えだった事は今ならよく分かるが。
全校生徒が敵に回ったも同然だった時、異常事態に対して動いた人間はいなかった。俺は単純にハルヒの力かと当時は思っていたが…
ハルヒはそれは願わないだろう。楽しんだだけで、後先を考えなく自分の前だけでやっただけだ。まぁ十二分にアホだが、そこらへんをあいつに期待するだけ無駄だ。
これは仮説だが、機関の人間も鱈腹いるこの高校でこれだけ事が露見しなかったという事は…機関の根回し、長門の力、未来の指示の何かしらかのものがあった。そう考えるのが妥当。
それならば、お前の話も納得がいくぜ。言葉は悪いがハルヒの観測の為に俺を売ったとな。
「…沈黙は肯定と見做す。」
「…否定しませんよ。」
…否定して欲しい仮説だったんだがな。まぁいい。終わった話だ。それに立場上仕方なかった話だろうしな。最初から仲間などと思った俺が愚かだっただけだ。
「話を脱線させたな。…で、用件は何だ?」
古泉は、一息つくと言った。
「佐々木さんとお付き合いされているんですか?」
「答えはノーだ。付き合っているわけではない。」
俺にはあいつを好きだという資格はない。だからこそ好きだとは言わない。どれだけあいつの存在が、俺の救いになっていたとしてもな。
いつか佐々木の傷が癒えたら俺は佐々木の為に身を引くつもりをしている。佐々木とふたりぼっちで過ごすのも悪くないが、このまま佐々木と居たら、佐々木まで堕ちる。
既に俺は手遅れだが、だからと言って佐々木まで付き合わせたくはない。
1-
あと 37 レスあります
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル

ぬこの手 ぬこTOP 0.124s*