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●◎短編小説・曝し場◎●

19カサリズマ・メモリー 10/13:2003/05/05(月) 03:01
「何言うとんじゃ。だれも頼んどらんぞ、そんなこと。トーシロが勝手ほざくな」
 戦闘時に匹敵する形相で迫る少年を前に、少女は怯えの表情を浮かべていた。だが、理不尽さを感じたのだろう、少年を睨み返してきた。
「そやかて、あぶないとこやったやん。ウチがおらんかったら死んでたんやないの? あんた。カタナも何も全部のうなって、どうしようもあらへんかったやん」
 少年は右手で少女を突き飛ばした。
「よう見さらせ!」
 片足を上げて見せる。爪先をぐっと曲げると、その先からは勢いよく短剣が飛び出した。
「これで後ろから突き刺すつもりだったんじゃ。お前の助けなんぞいらんかった」
 鼻息も荒く、少年は説明する。獲物を横取りされ、少女が厭わしかった。
「でも、たすけてもらったんやから、お礼はした方がええと思う」
 なおも言い返す少女に、少年は上段蹴りを見舞った。爪先の短剣は、少女の首の皮一枚手前で止まる。少年は低い声音で言った。
「ええか、オレはお前を殺せた。でも殺さなかった。そやから、オレはお前の命の恩人や。お前がオレを助けたと見ても、おあいこっちゅうわけや。オレを助けたなんて思て、調子に乗るな、ドアホ」
 少女は今度こそ悲哀に満ちた表情になり、その場でしゃがんで顔を両手で覆った。その頭に更に切っ先を向ける少年であったが、少女の嗚咽を長く聞いているうちに足がつってきた。
 少年には、同年代の友人などいない。まして泣きに入った少女の扱い方など及びもつかない。親父に反発するのと同じように接したら、この始末だ。泣き出した親父など見たこともないので、どう対処していいのか判らず、辟易してただ見ていた。
「オレが悪いんか? ジャマしてきたのはお前……、いや泣くなや、ホンマに」
 子供じみた脅迫から転じて、慰めに移る。心中では、何やっとんじゃオレはと、自分の頭を殴りながら。


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