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●◎短編小説・曝し場◎●

16カサリズマ・メモリー 7/13:2003/05/05(月) 03:00
 悪魔の群れに囲まれていた。イヌ科から進化した、最も一般的な系統で、しかも人食種である。外れの方とはいえ、人里に悪魔が現れたのだから、立ち入り禁止の警告板があってしかるべきである。つまり、今少年が投げ捨てた看板のようなものが。
 数が多い。油断は即、死に直結する。拵すらも投げ捨て、曇天に鈍く輝く刀を八双に構える。細く息を吸い、親父の十八番を真似た。
「かかってこいやあ!」
 大音声が木々に木霊し、飛び出かかってきた一匹と共に返ってくる。
 連携がなっていない。初太刀で横に切り伏せた。着地の衝撃で上半分だけが滑り、びちゃりと地面に引っ付いた。
『ヒュアッ、イアッ!』
 犬の外観からは想像もつかないような鳴き声で、群れの幾つかが喚く。
 少年にとって、三日振りの実戦だ。親父の見ている前でやるよりも緊張感があり、楽しい。少年は満足感を噛み締めながら、動き回ってずれないように眼鏡を深く押し込んだ。
 空腹に任せてむしゃぶりつくより、頭を使う手間を取ったか、今度は三匹が同時に襲い掛かってきた。始めに左右から、時間差で正面から来る気だ。
 ――左が近い。
 少年は左に踏み出し、下から犬の頭部を薙ぐ。その勢いで身体を回し、飛び掛って滞空している右の悪魔を払い上げた。二つの死骸は丁度真中の点で二つに、いや四つに折り重なる。間髪を容れず、本命の一匹が真っ直ぐに向かってきた。上段から血塗れの刃を打ちおろす。が、悪魔は前足を踏ん張って急停止し、直前で難を逃れる。フェイントだ。
 ――さすが悪魔。
 すぐに振り終わりを狙い、がら空きの首を噛み破るべく迫ってくる。少年はすかさず柄から片手を離し、肘で横殴りした。が、悪魔は長袖に牙を噛ませてぶら下がっている。少年は片手で刀を振るい、首を刈り取った。吐血で袖を染めながら、口を開いて首が落ちる。
 ――小手調べにしてはレベル高いな。


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