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●◎短編小説・曝し場◎●

15カサリズマ・メモリー 6/13:2003/05/05(月) 02:59
 それからは、少女は銃と共に現れ、少年の見る前で狙撃の練習をし、弾切れと共に去るようになった。見る間に上達していくのが判り、その成長過程の観賞は少年の新たな楽しみとなった。そのうち、魚のいる場所に見当を付け、癖のある動作で撃つと、大小様々な魚が浮かんでくるようにまでなった。たまに跳ね上がった魚を射止めた時など、少年は喝采を送ってやった。ただし、少女がすまし顔で自慢してくると、
「でも、そんなヘンな撃ち方しとったら、オレでも簡単に避けられんで!」
 と揶揄し、少女を怒らせるのだ。
 ある日、少年はふと思う。いつも自分のことを見ていたのは、自分たちが悪魔狩りの修行をしていたからなのではないか。両親と自分を殺した悪魔を憎く思い、それを滅する者の姿を少年の中に見ていたのではないか。
 少女に撃たれた魚は水面に浮かべど、血を流すこともなく漂い、やがて意識を取り戻して泳ぎ去ってゆく。
 ――これが悪魔やったら、当たったとたん霊魂パワーでバクハツしたりしてな。
 少年は心中で皮肉な感想を漏らした。

 今日は珍しく曇天だ。親父に「街の外れにある小山のてっぺんに登って、降りて戻って来い」と命じられ、少年は言う通りに登山へと赴いた。
 ――何やこれ。
 頂上には『立ち入り禁止』と記された金属製の看板が刺さっていた。裏を見ると、親父の字で「こせがれ、これを持って行け」と書かれていた。登山の証拠としてだろう。ご苦労なことだ。
 下山途中の藪の中、少年は立ち止まった。眉間に皺を寄せ、鋭く舌打ちをする。
「楽な運動と思たら、こういうことかいな。お父はんも甘くないわ。なぁ?」
 誰ともなく同意を求める。直接的な返事は得られなかったが、周囲の気配が強さを増してそれに答えた。獰猛な獣の息遣いは、明らかに敵意と興奮を含んでいた。
 合わせて、殺意。


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