●◎短編小説・曝し場◎● (327レス)
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17: カサリズマ・メモリー 8/13 2003/05/05(月)03:00 AAS
 第一波を凌いだ少年は、戦況を再確認する。悪魔の群れは、リーダーが雑魚をけしかけて獲物を襲うのが普通だ。たった今さばいたのは群れの下っ端であり、次はもっと格上のが来る。残りは三匹だが、大木を右手にして三方を囲まれている状態である。しかも包囲網が狭まっているので、ひどく立ち回りにくい。
 今度も二匹同時に、前後から襲ってきた。左手の悪魔を正面に見据え直し、泰然と構える。刀を左片手で持ち、右手は懐を探る。
「はっ!」
 取り出した大振りのナイフで腰の高さで飛び来る右に、左の刀で足を狙い来る左に応対する。左は刀の突きで、右はナイフの打ち下ろしで急所を貫き、地面に縫い付けて屠った。
 真正面から小細工なしに来る最後の一匹には、地面に刺さった得物を見舞うには遅い。
 ――しゃあない、一発もらったる!
 刀は捨て、左の二の腕で頭部を庇い、悪魔の牙に晒す。突風のような勢いに負け、後ろの大木に叩きつけられる。息を詰まらせながら、ぐっと堪える。左腕の咬傷が数個の穴で済んでいるうちに、右手に握っていたナイフで犬の頭蓋骨を串刺しにしてやる。悪魔の真っ黒い眼球が裏返って白濁し、少年の腕を鋭利な牙で引き裂きながらずり落ちた。死体を横手に蹴り飛ばすと、少年は木に背をもたれ、目を閉じて安堵の息をつく。
「お父はん、こないなキケンな奴らなんやから、早よ通報せえよ……」
 通報どころか立ち入り禁止になっていたほどなのだが、少年は親父自ら移動した看板のことを失念していた。
 一陣の風が吹き付け、山の木々が葉擦れを立てる。左腕の傷が風に染み、疼いた。
「げっ!」
 出し抜けにもの凄まじい衝撃が襲い掛かり、何か硬質なものに正面から押し付けられた。目を見開いてみると、目の前には焦茶色の塊が粘っこい液体を出して迫ってくる。
 ――木の上に本命がおったんか!
 少年は愕然とした。犬の悪魔たちの視線を思い起す。上にいるこいつの指示を仰いでいたのだろう。この大木に追い詰めろと指示したものに違いない。
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