●◎短編小説・曝し場◎● (327レス)
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1: 2003/05/05(月)01:22 AAS
お題小説やシチュエーションテーマに乗っ取って作品を晒すスレは別にあります。
ここは、完璧にオリジナルな作品を晒すスレッドなので、
お題やシチュエーションテーマを決めらていると作品が書きづらいという方はここに晒して下さい。

批評なども遠慮をせずにどんどんと書き込んでいってくれれば幸いです。

※作品投稿のルール
・一番目のレスのはじめに、作品のタイトルと原稿用紙換算枚数を明記。
・名前欄には作品のタイトルと、いくつかのレスに分ける場合は”2/7”というように明記してください。
・4096文字・30行のいずれかを超えた場合、省略されてしまうので注意。
・あまり長くなる場合(80枚程度が目安)は、WEB上の作品へのリンクという形で投稿してください。
2: 2003/05/05(月)01:23 AAS
ありがとうございました。
すれたてお疲れさまです。

カレーはさインド料理だけどシチューは何処の料理なんだろう。
3: ぼるじょあ(EncckFOU) 2003/05/05(月)01:24 AAS
AA省
4
(1): ぼるじょあ(EncckFOU) 2003/05/05(月)01:24 AAS
(・3・) アルェー
5: 2003/05/05(月)01:25 AAS
>>4
ごめん、俺が2getした。
ま、俺の方が早かったってことで……。
6: 2003/05/05(月)02:11 AAS
ここは、ショートショートもOKですよね?
7: 人言 2003/05/05(月)02:35 AAS
ではさっそく……。
元々、またり文庫に載せてもらったやつなんだけど、
今はサイトがリニューアルして消えちゃったみたいだから
ここで晒したい。

ではみなさん、よろしくお願いします。
8: 人言 2003/05/05(月)02:36 AAS
作品名:カサリズマ・メモリー
原稿用紙換算枚数:二十八枚
9: 2003/05/05(月)02:46 AAS
晒さないの?
10: カサリズマ・メモリー 1/13 2003/05/05(月)02:57 AAS
 見上げる度に青い空と、それを映して青い海。
 少年の街は、そんな清々しくも野暮ったい風景を持っていた。少々北に位置するここは、真夏の今でも過ごしやすい。
「こせがれ、何を緩んどんじゃ。あと少しや、しっかりせえ」
 少年の父が呼びかける。確かに気候は穏やかだが、太陽の照りつける日中に腹筋運動を連続五十回させられれば、汗だくにもなろうというものだ。少年は歯を食いしばり、顔を赤黒くしながら引きつった腹筋をギリギリと上げていく。
「百五十!」
 達すると同時に背中を倒し、大の字になって開放感を味わう。息苦しいが、口を開けると乾いていけないので、鼻から大きな音を出して無様に呼吸した。
 その時、見あげている蒼穹を背景にして、視界の横合いから黒い粒がふっ、と出現した。大きくなるそれは、親父が投げ上げた石くれだった。
「ぐわっ」
 少年は素早く横たわって一度は避けたが、既に二度三度の追撃が迫ってきていた。一回転して仰向けになり、仕方なく手で受け止める。凶器には尖ったものが選ばれていて、受ける手のひらに突き刺さって痛い。勢いよく起き上がる。
「少しぐらい休ませてくれたってええやろが! 一セット増やしたんやから」
省8
11: カサリズマ・メモリー 2/13 2003/05/05(月)02:58 AAS
 少年は、親父を尊敬していた。ふざけてとぼけた性格だが、政府の偉い地位にいる悪魔狩りだ。彼は息子を自分の後継ぎにしようとして直々に鍛錬を施したが、少年自身もそれを強く望んでいた。悪魔狩りの免許は満十五歳にならないと取得できないので、十歳の少年はまだまだ狩場に立てない。早く親父のパートナーとして刀を振るいたいと、常々思っていた。
「ふー、っしょ」
 細く鋭く息を吐き、勢いをつけて立ち上がる。日向は暑い。近くに海沿いの大きな石碑が大きな日陰を作っているが、目指すのはそこではない。コンクリートの水際まで寄り、同じくコンクリートの対岸に向けて叫んだ。
「何見とんじゃ、ワレーッ!」
 大音声が空気に伝播し、じんじんと揺れ、風に拭い去られた。視線の向こうには、白いサマードレスを着た黒髪の少女が三角座りをしていた。
 少年はここに来ると、いつも対岸からこちらを見ている少女に向かって、こう叫んで挨拶することを習慣にしていた。水際ぎりぎりに行儀悪い姿勢で腰掛け、少女と向き合う。
 初めて見かけた時、彼女は辺りはばかることなく泣いていた。やはり晴天の下で、やはりこの場所で。少年が大声で呼びかけると、少女は驚いた様子でこちらを向いた。少年はずれた眼鏡を直しつつ見やり、可愛いと言うよりは、綺麗な顔立ちの娘だなと思った。その日一日中、泣き続ける彼女へ呼びかけ続けた。
 その次の日から、彼女はここへ通うようになった。やはり対岸で、やはり少年から呼びかける。しかし、少女からは一言も話してこず、父にしごかれる少年を見続けているだけだった。訓練が終わり、二人だけになって少年が話し掛けてきても、はいと頷くか、いいえと首を振るか、さようならと立ち去るか以外の動作をしない。だが少年は、自分の言葉で少女が怒ったり笑ったり、素直な反応を示すのが楽しかった。
12: カサリズマ・メモリー 3/13 2003/05/05(月)02:58 AAS
 ある昼時、少年は親父と一緒に野外食堂で茶漬けを掻き込んでいた。すぐ後ろの席で、世間話が聞こえてくる。
「どこにする? 廃屋なんて、そうそうないぞ」
 どうやら、男女数人が肝試しをするために適当な舞台を探しているらしい。
「何言ってんの。廃屋っていったら、ここらには一つしかないよ。一年くらい前に、ハンターの一家が悪魔に殺されて以来、そのままにされてる家」
「ハンター? 悪魔狩りのことか?」
「違うの。普通の鹿とかウサギとか撃つ人。現場には他に誰もいなかったんだけど、事後調査では悪魔反応があったんだって。後には骨どころか、血の跡も残ってなかったってさ」
「やめろよこいつ。人がトマトジュース頼んだのに」
 機嫌を損ねる男友達にごめんごめんと謝る女。それでなくても、食事時にする話ではない。少年に聞こえるということは他の客にも聞こえているということだが、普段からもっとモラルに反したことを平気でかます親父を持つので、少年自身は気にならなかった。
「でもさ、可哀相な話だよねえ。夫婦には、まだ小さい女の子がいたっていうのにさ」
 スプーンを持つ手が止まる。――女の子?
省6
13: カサリズマ・メモリー 4/13 2003/05/05(月)02:59 AAS
「何見とんじゃワレーッ!」
 少年は少女に向かって叫んだ。やはり青空の下で、やはり海を隔てて。
 ところで、足がなければ、少女には三角座りができない。注視したところで、少女の向こうに背景が透けて見えるなどということもない。
「ユウレイが真昼間から出てきてええんか」
 声が届く程度の大声で、単刀直入に訊ねる。少女は不思議そうな顔をして、首を横に振るばかりだ。
「お前の親は」
 以前にもしたことのある質問を投げかけるが、案の定少女は顔を曇らせ、首を振って否定した。ということは、やはり彼女は例のハンターの娘なのだろうか。だが、それを確認するのは酷な気がした。伸びをしながら、軽口を叩く。
「まあ、お前みたいなんがユウレイでも、オレはちぃとも怖くあらへんで。じぃっと見続けて、祟り殺せるワケでもなし」
「ちゃうっ!」
 少年は驚きのあまり、後ろへひっくり返った。少女が初めて言葉を発したのだ。自分と同じ言葉遣いで、怒鳴って否定した。
省2
14: カサリズマ・メモリー 5/13 2003/05/05(月)02:59 AAS
 次の日。
「三千!」
「休憩。一時間後にはここにおれ」
 素振りを終えると、親父は習慣に従ってふらりと街に消えていった。少女とは、昨日気持ちの良くない別れ方をしたので、もう来ないと思ったのだが、さっきから視界の端にちらちらと白いものが見えていた。正視すると疑うべくもない、いつもの少女だ。
「何見とんじゃワレ」
 いつもよりは小さな声で、しかしいつもの挨拶を欠かさない。少女も、何かいつもと様子が違う。傍らに置かれた長い物を拾い上げると、斜めに構えてニッと笑いかける。真横の海に棒の先を向け、指先を動かすと、水面の一点が少し跳ね上がった。
「ライフル?」
 思わず声が出る。少女の構える鉄の筒は、ライフル銃なのだった。ハンターの使う、いわゆる散弾銃ではないが、彼女の両親がハンターだったという裏付けであるように思われた。彼女のような子供にも扱える無反動銃など、一般人が使用を許されるものではない。死んだ親の幽霊から借りたものだろうか。
 大海原を狙っているだけなので、彼女の狙撃の腕前は知れない。が、跳ね上がった魚を撃とうとして、タイミングと場所を大きく外したらしいところを見ると、まだまだ初心者のようだ。当然のことなのだが。
 少女の耳に届かない程度の小声で呟く。
省3
15: カサリズマ・メモリー 6/13 2003/05/05(月)02:59 AAS
 それからは、少女は銃と共に現れ、少年の見る前で狙撃の練習をし、弾切れと共に去るようになった。見る間に上達していくのが判り、その成長過程の観賞は少年の新たな楽しみとなった。そのうち、魚のいる場所に見当を付け、癖のある動作で撃つと、大小様々な魚が浮かんでくるようにまでなった。たまに跳ね上がった魚を射止めた時など、少年は喝采を送ってやった。ただし、少女がすまし顔で自慢してくると、
「でも、そんなヘンな撃ち方しとったら、オレでも簡単に避けられんで!」
 と揶揄し、少女を怒らせるのだ。
 ある日、少年はふと思う。いつも自分のことを見ていたのは、自分たちが悪魔狩りの修行をしていたからなのではないか。両親と自分を殺した悪魔を憎く思い、それを滅する者の姿を少年の中に見ていたのではないか。
 少女に撃たれた魚は水面に浮かべど、血を流すこともなく漂い、やがて意識を取り戻して泳ぎ去ってゆく。
 ――これが悪魔やったら、当たったとたん霊魂パワーでバクハツしたりしてな。
 少年は心中で皮肉な感想を漏らした。

 今日は珍しく曇天だ。親父に「街の外れにある小山のてっぺんに登って、降りて戻って来い」と命じられ、少年は言う通りに登山へと赴いた。
 ――何やこれ。
 頂上には『立ち入り禁止』と記された金属製の看板が刺さっていた。裏を見ると、親父の字で「こせがれ、これを持って行け」と書かれていた。登山の証拠としてだろう。ご苦労なことだ。
省4
16: カサリズマ・メモリー 7/13 2003/05/05(月)03:00 AAS
 悪魔の群れに囲まれていた。イヌ科から進化した、最も一般的な系統で、しかも人食種である。外れの方とはいえ、人里に悪魔が現れたのだから、立ち入り禁止の警告板があってしかるべきである。つまり、今少年が投げ捨てた看板のようなものが。
 数が多い。油断は即、死に直結する。拵すらも投げ捨て、曇天に鈍く輝く刀を八双に構える。細く息を吸い、親父の十八番を真似た。
「かかってこいやあ!」
 大音声が木々に木霊し、飛び出かかってきた一匹と共に返ってくる。
 連携がなっていない。初太刀で横に切り伏せた。着地の衝撃で上半分だけが滑り、びちゃりと地面に引っ付いた。
『ヒュアッ、イアッ!』
 犬の外観からは想像もつかないような鳴き声で、群れの幾つかが喚く。
 少年にとって、三日振りの実戦だ。親父の見ている前でやるよりも緊張感があり、楽しい。少年は満足感を噛み締めながら、動き回ってずれないように眼鏡を深く押し込んだ。
 空腹に任せてむしゃぶりつくより、頭を使う手間を取ったか、今度は三匹が同時に襲い掛かってきた。始めに左右から、時間差で正面から来る気だ。
 ――左が近い。
省4
17: カサリズマ・メモリー 8/13 2003/05/05(月)03:00 AAS
 第一波を凌いだ少年は、戦況を再確認する。悪魔の群れは、リーダーが雑魚をけしかけて獲物を襲うのが普通だ。たった今さばいたのは群れの下っ端であり、次はもっと格上のが来る。残りは三匹だが、大木を右手にして三方を囲まれている状態である。しかも包囲網が狭まっているので、ひどく立ち回りにくい。
 今度も二匹同時に、前後から襲ってきた。左手の悪魔を正面に見据え直し、泰然と構える。刀を左片手で持ち、右手は懐を探る。
「はっ!」
 取り出した大振りのナイフで腰の高さで飛び来る右に、左の刀で足を狙い来る左に応対する。左は刀の突きで、右はナイフの打ち下ろしで急所を貫き、地面に縫い付けて屠った。
 真正面から小細工なしに来る最後の一匹には、地面に刺さった得物を見舞うには遅い。
 ――しゃあない、一発もらったる!
 刀は捨て、左の二の腕で頭部を庇い、悪魔の牙に晒す。突風のような勢いに負け、後ろの大木に叩きつけられる。息を詰まらせながら、ぐっと堪える。左腕の咬傷が数個の穴で済んでいるうちに、右手に握っていたナイフで犬の頭蓋骨を串刺しにしてやる。悪魔の真っ黒い眼球が裏返って白濁し、少年の腕を鋭利な牙で引き裂きながらずり落ちた。死体を横手に蹴り飛ばすと、少年は木に背をもたれ、目を閉じて安堵の息をつく。
「お父はん、こないなキケンな奴らなんやから、早よ通報せえよ……」
 通報どころか立ち入り禁止になっていたほどなのだが、少年は親父自ら移動した看板のことを失念していた。
 一陣の風が吹き付け、山の木々が葉擦れを立てる。左腕の傷が風に染み、疼いた。
省4
18: カサリズマ・メモリー 9/13 2003/05/05(月)03:00 AAS
 目の前のボスは近すぎて全身を把握できないが、察するに何種かの甲殻虫が複合した悪魔だ。数本の節足で大木にしがみつき、硬質の外殻でもって少年の身体を押し潰してくる。どうにか右手で押し返しているが、人肉を求めるグロテスクな嘴が徐々に近づきつつある。右手も左手も塞がった。親父の助けも望めない。
「こん……インケツが……」
 少年が喘いだ、正にその時、凄まじい風圧と共に、悪魔の姿が右方へと消失した。悪魔を目で追うと、土の地面を削りながら四、五メートルは吹き飛んでいる。外殻腹部が爆ぜ割れ、既に絶命しているのは一目瞭然だった。
 呆けた顔で反対側を向くと、そこにはライフル銃を構えた少女がいた。彼女は硝煙を吹き散らすように銃口にふっと息を吹きかけ、得意げな笑顔を向けてくる。それを見て初めて、少年はいつも遠目に見ていたあの娘だと認識した。
「ユウレイ女……」
 指差して呼ばわると、
「ちゃう」
 と、気分を害した様子で答えた。少女に正面から向き直り、唾を飲み込んで気分を整えた。
「どうしてお前、こないなとこに」
「ウチの家、このへんにあんねん」
省5
19: カサリズマ・メモリー 10/13 2003/05/05(月)03:01 AAS
「何言うとんじゃ。だれも頼んどらんぞ、そんなこと。トーシロが勝手ほざくな」
 戦闘時に匹敵する形相で迫る少年を前に、少女は怯えの表情を浮かべていた。だが、理不尽さを感じたのだろう、少年を睨み返してきた。
「そやかて、あぶないとこやったやん。ウチがおらんかったら死んでたんやないの? あんた。カタナも何も全部のうなって、どうしようもあらへんかったやん」
 少年は右手で少女を突き飛ばした。
「よう見さらせ!」
 片足を上げて見せる。爪先をぐっと曲げると、その先からは勢いよく短剣が飛び出した。
「これで後ろから突き刺すつもりだったんじゃ。お前の助けなんぞいらんかった」
 鼻息も荒く、少年は説明する。獲物を横取りされ、少女が厭わしかった。
「でも、たすけてもらったんやから、お礼はした方がええと思う」
 なおも言い返す少女に、少年は上段蹴りを見舞った。爪先の短剣は、少女の首の皮一枚手前で止まる。少年は低い声音で言った。
省5
20: カサリズマ・メモリー 11/13 2003/05/05(月)03:01 AAS
 少女が嗚咽混じりに、何か言っているのが判ってきた。
「やって、チ、やって、ずっ。パパ、ママと……アクマが、ふっ」
「お前の両親のことかいな」
 首肯する。悪魔に殺された両親のことを言っている。
「死んじゃっ、日に、も泣いで……あん、あんたと、じめて会っ、って」
 切れ切れに言う少女の言葉を繋げると、今までの事情が判ってくる。
 初めて見かけた時に彼女が大泣きしていたのは他でもない、その日に両親が殺されたからだ。自分は遊びに出ていて、帰ってくると両親の遺書が残されていたという。
 長年生き、人並み以上に知能が発達した悪魔が両親を嬲り殺す前に書かせたものだとは、その時の彼女には知る由もなかった。
 その後、両親の死は公開されないまま、少女は養護施設に入れられた。世間では、故意であれ事故であれ、悪魔に関与した人間は白い目で見られがちなためだ。彼女は義務教育の拒否権を使い、毎日あの場所へ通って悪魔狩りの親子を見ていた、というわけだ。
「ウチも、アクマガリ、なりたいねん」
省11
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