【774の真夜中連載小説】 (15レス)
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7: ぽにょ◆Ponyo.BYss 2014/10/01(水)22:50 ID:???0 AAS
「なあ、生き物なんてみんな獰猛で野蛮さ…己れが生き延びる為に他を殺し喰らう…君も私もやっていることだろう? 違うかい?」
当然始まった先生の独白にキョトンとするわた坊。その彼女のまだ伸ばしたままだった右腕の先を長く大きな舌がゾロリと舐めた。
「ヒッ!!」
思わずその手を引っ込める。
「なっ、可愛いだろ? こいつは人懐こい奴なんだ…」
チワワニは舌を出しながら、先細りの尻尾をぶるんぶるんと千切れんばかりに振っていた。
わた坊は舐められた右手をさすっていた。感覚の無い筈の右手。しかし今確かにざらりとした舌でゾロリと舐められる感触があった。
先生の言葉は続く。
「チワワニはこの奇形地味た体型のせいで、自由に陸に上がって餌を求めることが出来ない」
わた坊は素直に頷いた。目の前のチワワニは頭の重さに負けて今にも膝から崩れ落ちそうだ。
省7
8: 774 2014/10/03(金)04:37 ID:3QkkoJQQ0(1/2) AAS
酷く喉が渇いていた。
いつから歩いていたのかわからない。
数歩先に水溜りがある。
膝が折れ腰が落ちた。霞んだ太陽が視界を一瞬よぎり頭は水に沈む。
飲んだ飲んだ飲んだ。
濁った水を飲み干し、顔を上げた時、既に無い筈の水溜りからワニの大きく広げられた口が飛び出した。
9: 774 2014/10/03(金)04:48 ID:3QkkoJQQ0(2/2) AAS
「わたちゃん!?」

ビクリと身を起こした。
顔が冷たい。

「わたちゃん大丈夫なの!?」
心配そうに顔を覗き込むのは佐和先輩。

わた坊はようやく眠りから覚めた。
10: 774 2014/10/03(金)05:30 ID:Mt9SQZHA0(1) AAS
「だ、大丈夫れす…」

呂律の回らない寝起きのまま、わた坊は今現在における自分の状況を素早く分析した。

ワニ 水 ナースステーション 佐和先輩 溺れる ワニ 冷たい 顔

「わたちゃん、顔、びちょびちょだよ? 大丈夫!?…寝不足なのかな?」

自分が突っ伏していたデスクには涎の水溜りが出来ていた。
咄嗟にそれを両手で覆う。
省6
11: 774 2014/10/10(金)03:41 ID:gox4dl5M0(1/2) AAS
「野良チワワを捕獲してきて欲しい」
先生は水面を見詰めたまま、そう言った。
川はいつの間にか落ちていた陽射しを受けて赤く染まっていた。
「この辺りの野良チワワは激減した。奴らも馬鹿ではない。犬だ。より安全な住処を求め群れで山へ移動したと聞く」

夕焼けが照り付ける川が血に染まっていく。

「わた坊くん、君の住まいの裏山、其処が奴らの本拠地だ」

わた坊の眼前にはどす黒く重いコールタールの川が流れを停止させていた。
12: 774 2014/10/10(金)04:38 ID:gox4dl5M0(2/2) AAS
「で、出来ません」
わた坊は声を震わせながらも先生の要求を拒否した。

「出来る、出来ないかじゃない。やるか、やらないかだ」
「やりません」
今度はしっかりとした声で即答した。
「ヒャッ!」
先生の顔を睨みつけたわた坊の顎をチワワ二の長い舌が捉えた。その舌がゆっくりと首筋に流れてゆく。
「ヒャッヒャッ!」

「わた坊くん、君はこの醜くも可愛い生物が、地球上から絶滅しても良いと言うのかね?」

「ぜ、絶滅は良くないです…ヒャッ! で、でもチワワを餌になんて…ヒャッ」
省17
13: 774 2015/01/16(金)06:59 ID:8ioMeVoY0(1) AAS
満月。

太陽の光を浴びた月明かりの道をひとり歩く。

『あのお月様は光さんのおでこみたい』

不安を掻き消すように呟く。

長期入院患者の光さん。前立腺肥大の治療が主だが、認知症も併発している。
冬山に登るのが趣味だったらしい。
来月にも登山計画を立てていて病院のスリッパを念入りに手入れしている。
省10
14: 774 2015/01/24(土)04:33 ID:163fuiiQ0(1) AAS
あからさまに疲れた顔をしている。

洗面所の鏡に写る自分を見て、わた坊は深く溜息を吐いた。

『昨日は50センチしか登れなかった』

頂上は遥か遠く高く、絶望的な道程だった。

「あ、わた~ 何溜息ついてんの?」
省13
15: 774 2015/01/24(土)05:06 ID:gYmGNtbo0(1) AAS
しばらく掌を眺めた後に、今度は右手首を掴んだ。

「こっ、これは…」
慌てて手を引こうとしたわた坊だが、光の握力に抗えない。

「かっ、硬い…」
「こ、これは色々事情があって、と言うか離して下さいっ!!」
「俺のチンコ並みに硬いっ!!」

わた坊の腋から汗が噴き出した。

「いや…やめて…離して」
「ここまで鍛えた右手と軟弱な左手…これが意味するところは…」
「いいから離してくらさい~」
省4
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