プロローグ仮 (65レス)
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1: ◆jVEgVW6U6s 2012/02/29(水)06:01 AAS
途中までですがプロローグを投下!!
アヘメン教とイトーイ教の戦いの始まりまでを書きました。

実に壮大で既に10レス・・・これが街狩りクオリティです
46: 2012/03/11(日)05:24 AAS
                     ( ^ω^)アへ顔ダブルピース2のようです

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47: 2012/03/11(日)05:25 AAS
 アヘメンがヴィップに齎した奇跡。
 そのお零れを頂戴したように、大陸北方はシベリアは豊かな自然を持っていた。
 荘厳なる山々、農耕に最適な土壌、背後には広大な大海原まで控えている。
 有数の海港都市として成長したシベリアは、ヴィップに次ぐアヘメン教の主要都市でもある。

 聖地ヴィップ巡礼の際の重要な中間地点だ。
 教徒の殆どがヴィップに訪れる前に聖シベリア大聖堂で祈りを捧げてゆくが、大半の祈りは旅路の無事を思った物だと言われている。
 それも、海とは対照的に鬱蒼とした森が延々と続くからである。

 シベリアで最も背の高い塔から眺めれば、まさに樹海と言える景色を展望できよう森を「暗い森」と言った。
 数多の巡礼者が数百年作った轍の道に沿えば迷う事は無いが、しかし森に関して奇妙な噂が存在するのだ。
省8
48: 2012/03/11(日)05:26 AAS
( ´Д`)「抱え切れぬな…………」

 大司教モナーは、聖シベリア大聖堂の尖塔型ドームに組み込まれた窓から見える光景を、そう嘆いた。
 森を貫いては途切れぬ民と、そして空に居座った暗黒の太陽を見て。
 見通せぬ先々に良き展望が訪れる事を祈りたくも、神は暗黒に包まれている。
 政治とは関係が希薄なものの、民の信望を集めるアイコンであった神の子アヘメンも、もうこの世にはいない。

 シベリアに難を凌ぎに来ている一方、教徒達はアヘメン教会を疑い始めていた。

 神の加護はどうした!
 アヘメンは奇跡を持って我々を助けてくださらないのか!
 神は、我々は見捨てになったのか!
省6
49: 2012/03/11(日)05:27 AAS
v( )v v( )v v( )v 「 「 「 「 ア ヘ メ ン ! 」 」 」 」 v( )v v( )v v( )v

 モナーが一人ごちた直後、声を大にして聖なる子を称え、アヘメン教会枢機卿達は現れた。

 大司教、そして数々の省と局から構成される政治機関。
 「アヘメン元老院」の緊急会議が、ここに催されようとしていた。
50: 2012/03/11(日)05:28 AAS
 枢機卿達は場の中心に用意された円卓を囲う。
 最後にモナーが椅子に座るなり、モナーは奇跡認定局の者に向かって切り出した。

( ´Д`)「して、調査の方は?」

「面目ございませんが、日食に関する文献は発見出来ませんでした。
 しかし、ヴィップ陥落から僅か3日後に日食が発現したとなれば、神の子の力と考えるしかないでしょう」

( ´Д`)「あるいは、ペンダントの力だ」

( ´Д`)「蛮族共がペンダントを発見し、それを悪戯に使ってしまったと考えるのが妥当だろう」
省6
51: 2012/03/11(日)05:29 AAS
( ´Д`)「……呪わしき、死霊共だ」

 モナーが目を伏せて言うと、シベリア治安維持騎士団の団長が立ち上がって激昂する。
 円卓には泡を飛ばし、ホールには怒気を孕んだ叫び声が響き渡る。

「大陸を混沌と化すのがイトーイ教徒の最終目的だとしたら、まさに願ったり叶ったりと言ったところだろうな!
 忌々しい……! 領地を追われ我々に仇名すどころか大陸すら滅ぼさんとするとは! 邪教徒共め!」

( ´Д`)「落ち着きなさい団長。貴方の調査結果を聞かせて頂きたい」
省6
52: 2012/03/11(日)05:30 AAS
( ´Д`)「黄金に目を眩ませた盗人がヴィップから帰らぬと耳にしてはいたが……。
      我らが教会騎士団でも帰還すら間々ならぬか……」

「このまま成す術なく、我々も奴らの仲間となるのを待つのでしょうか?」

( ´Д`)「………………」

 大司教モナーはそこで押し黙り、椅子から立った。
 皆は彼の次の言葉を待とうと一挙一動を見守るように見つめる。
 大司教はその期待を背に受けている事をひしひしと感じながら、窓辺に近寄る。

 モナーの目の先には、暗黒の太陽を浴びてますます鬱蒼と返る森があった。
省2
53: 2012/03/11(日)05:31 AAS
 長い沈黙を破って発せられた言葉に対し、枢機卿達は弁えずどよめいた。

 「暗い森のエクソシスト」。

 アヘメン教に属しながら邪教さながらのカルト研究を行っている事で、教会内で忌み嫌われている者である。

 その研究は実に奇怪だという。
 銀に輝く十字を掲げて聖句を唱えたり、墓地に向かって祈祷を捧げるのはよい。
 だが彼奴は、動物の羽やら骨やらを集めたり、果ては人の頭蓋骨に話しかけるようなおぞましい一面を持つのだと噂高い。

 教会内で忌み嫌われているのは奇怪な実験と研究だけでなく、その存在自体が教会を揺るがすからでもある。
 本来、死霊とはペンダントが齎す奇跡の一面である。
 その死霊に対し干渉出来るという存在は、まさにもう一つの奇跡なのである。
省5
54: 2012/03/11(日)05:33 AAS
 とはいえ、出来ることならエクソシストなどに本件を任せたくないのが、元老院の本心である。
 エクソシストがこの窮地を救ったとなれば、ますます我々元老院の立場は危うくなるのだ。

「し、しかし大司教。あのような輩に任せてよいものなのか――――」

 それを懸念し、奇跡認定局長が立ち上がって進言しようとしたが、

( ´Д`)「案ずるな。手は打つ……入りたまえ」

 大司教に招かれ、別の入り口から現れたのは数人の騎士であった。
省6
55: 2012/03/11(日)05:35 AAS
 一向に答えが出ぬものだから大司教に視線を集める。
 しかし、大司教は不敵で自信に満ちた笑みを浮かべるだけであった。

 数瞬の後、枢機卿達はハッとして気づいた。
 その不敵な笑みこそが、答えだ。

 特殊な分類にあるリスクブレイカーの中でも、彼等は更に特殊に位置している。

 つまるところ彼等は、大司教直属の暗殺者達なのだ。

 大司教が長年に渡って地位の安泰を保っていられる理由が、教会の上層部で密かに噂されていた。
 大司教は何らかの手段で、野心に満ちた要人教徒を抹殺しているのではないか?と。
省7
56: 2012/03/11(日)05:36 AAS
 疑問を浮かべた視線を集める中、大司教はすっくと立ち上がる。
 円卓を離れ、巨大なVVの紋章が刺繍された幕の下の椅子――着座椅子に堂々と腰掛けて言った。

( ´∀`)「あくまで民に救いの手を差し伸べるのは、我々アヘメン教会元老院だ」

 言葉の真意を理解できた者は、暗殺者を除いていなかった。

 しかし、大司教の唇が冷酷に曲がっている事だけは確かであった。

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57: 2012/03/11(日)05:37 AAS
 * * *

 太陽は闇に隠された後、張り付いたように動こうとしなかった。
 水平線に沈みかける位置としては夕刻に価するものの、夜は訪れやしないし、言う間でもなく朝も訪れない。
 しかし視線を変えれば僅かに色の違う空もあった。

 薔薇色の空に灰色が散りばめた、夕焼けの空だ。

 暗黒の影で赤い光を灯らせて空を染める太陽が、確かに存在する。
 見方を変えれば、神の愛も消える灯火と言ったところでもあろうか。

 大陸の大半を覆うのは黒く塗りつぶされた不気味な夜空なのだ。
省3
58: 2012/03/11(日)05:38 AAS
( ^ω^)「ふー……」

 空を眺め嘆くのに飽きた男は、何気なく足元の草をにじりながら息を深く吐いた。

 男が立つのは、空と似つかわしくない濃密な草原が広がる丘である。
 しかし、その二つの背景とぴったりなオブジェクトがずらりと並んでいた。

 それは、直下に眠る者の慰霊の為に立てられた墓である。
 墓石はどれも平たく切断されて造形されたシンプルな物で、特に個性差はない。

 ただ、一つだけ、高価な薔薇の花に彩られた墓石があった。
 僅かに残る薔薇色の空よりも、ずっと赤らしい赤を放っている。
 墓の傍らには毛並みの美しい白馬が、主人の用が済むのを健気に待っている。
省4
59: 2012/03/11(日)05:39 AAS
 そう。通る者がいればの話なのだ。
 供えの花を無碍にする存在がいるとすれば、それは盗人などではない。

 日食以後、昼と夜が一緒くたになったように、

 世界は生と死の差別が薄れたのだから。

 ――――墓石が独りでに音を鳴らして震えている。

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60: 2012/03/11(日)05:42 AAS
 土が一気に隆起する。
 赤茶の土から灰色の棒切れが飛び出す。

 土を自ら掘り返し、"彼等"は暗黒の太陽の下に現れた。

          「あ゙ああああああああああ…………」

  「寒い……痛い……痛い痛い…………」

                      「腹が、減った……体も、痛い……」
省4
61: 2012/03/11(日)05:44 AAS
( ^ω^)「ググレ=カス、510年〜546年。グロ=チュウイ、498年〜554年……」

 倒れた墓石を見れば一人一人の名と没年を参照出来るが、いかんせん数が多く、
 男は4人の名を知ったところで止めた。

 ともかく古い遺体であれば白骨し、最近死んだ者なら虫に蝕まれて白骨化の途中にあったようだと分かる。
 いずれも見るに絶えず、無残な姿とはよく言ったものであると、男はごちる。
 確かに、墓を暴くのは死者に対する冒涜となろう。

 墓地でただ一人、息をする事が叶う男は、鞘から剣を抜き出した。

 僅かに存在する薔薇色の空を浴びる刀身は銀。
 長さは70センチ、重さは1.4キロ。
省1
62: 2012/03/11(日)05:48 AAS
 男はまず、Vの字をゾンビ達に見せるように剣を掲げた。
 研きがかった刀身は醜悪なゾンビの体を映す一方、裏側で生身の人間の顔を映していた。、

 決して浅くない皺と、まばらに散る白髪と共に輪郭まで伸びた髪があり、男を40才前後だと特徴付けている。
 だが、上等の衣服の下に隠された肉体は、立派に鍛え上げられた剣より逞しかった。

(#^ω^)「はあっ!!」

 男が持つその豊潤な血肉を求め殺到する死体に対し、丸太のように太い腕で剣は振るわれた。

 一撃で数個の首が宙を舞う。
 生首の開いた口からは黒味がかった靄が断末魔と共に空に上がり、霧散する。
省4
63: 2012/03/11(日)05:49 AAS
v( -ω-)v「我等が父の御許へ逝かれよ。そして安らかな眠りにつきたまえ……アヘメン」

 慰霊の為の聖句と祈祷が彼等皆に伝わるよう、男は流れるそよ風に言霊を乗せた。

( ^ω^)「よし……これでしばらくの間は墓地は安全だお。
      まあ、ここに眠る者なんて、もう誰もいないんだがね……」

( ^ω^)「……この墓も、さめてもの俺の慰みに過ぎないんだお」

 供えた花と墓の美しさを確認した後、愛馬に跨った。
省3
64: 2012/03/11(日)06:09 AAS
 アヘメン元老院が隠匿するエクソシスト、ブーン=ホライゾン。
 彼の屋敷は、悪魔の棲む森と恐れられる「暗い森」にあるのだ。 

  * * * 

 轍の道を外れ、森を更に奥へと進む。
 人里から大きく離れた場所には、背の高い木々に隠された大きな屋敷がある。
 門付きで立派な中庭を有し、紅茶と共に森林浴を楽しめるようテーブル椅子まで完備した気品を放つ。
 大陸一と呼べる名馬に薔薇をと買える当主の財力は、屋敷を見れば大体察しが付くであろう。

 尤も、悪魔が棲む森と蔑み恐れる人々が見れば、幽霊屋敷にしか見えないかもしれない。
 気品を備えていても屋敷は幾らか古びているし、壁や屋根にはだらしなく蔦が伸びている。
省5
65: 2012/03/11(日)06:12 AAS
イトーイ登場からアヘメン殺害のくだりを書き直しました。
元老院と暗殺者の面々、それからブーンさん登場まで書きました。

このあとブーンの過去をさらりと触り、素性を詳細に描写した後、
クーさんが登場します。

クーさんは元老院からの言伝を預かっていて、ブーンに伝えます。
んで、聖都ヴィップに向かい二人が出立するという流れとなります。
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