Ammo→Re!!のようです (977レス)
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938: 2015/01/03(土)21:09 ID:mWYJPbvk0(18/42) AAS
玄関から出て行ったアサピーを見送り、トラギコはびっこを引きながら、空のペットボトルや古い日付の新聞、洗濯物が散乱したリビングを通って台所に向かった。
電気を点けてると、そこには見た事のある黒い酒の箱が転がっているのが見えた。
金色の線で描かれたシルクハットに杖と云う特徴的なシルエットは、その酒の名前を広く知らしめるのに一役買っている。
人々は親しみを込めて、その酒をこう呼ぶ。

(=゚д゚)「ジョニ黒かよ」

ジョニー・ウォーカーは代表的なブレンデッド・ウィスキーだ。
様々な種類が出ており、その中で最も有名なのは赤ラベル。
それに次いで黒ラベルが広く知られている。
違いは熟成年月や混ぜている酒の種類だが、値段には雲泥の差がある。

黒ラベルは十二年以上熟成されたものを四十種類使用しており、複雑な香りが売りの一品だ。
省12
939: 2015/01/03(土)21:14 ID:agZNneXE0(1/3) AAS
支援
940: 2015/01/03(土)21:14 ID:mWYJPbvk0(19/42) AAS
ボトルから直に飲み、ソーセージにかぶりつく。
味は殆ど感じられなかった。
いい酒、いい肴だったとしても同じだっただろう。
途方もない怒りが全身を支配している時は、いつもそうだ。

酒は何の効果もたらさず、料理も味を感じない。
ただ吸収し、動くための燃料としてしか体が受け付けないのである。
新品のボトルを十分足らずで飲み干すと、トラギコは適当な服を見繕って持ってきたスーツに着替える。
脚の傷を触って確かめるが、まだ痛む。

(=゚д゚)「くっそ……」

カールを殺害した人間は、射撃に自信のある人間に違いなかった。
省11
941: 2015/01/03(土)21:21 ID:mWYJPbvk0(20/42) AAS
AA省
942: 2015/01/03(土)21:25 ID:mWYJPbvk0(21/42) AAS
その店に入った瞬間、アサピー・ポストマンは店主から軽蔑の目を向けられた事を理解していた。
店主だけでなく、居合わせた客からも汚物を見るような目で見られた事も知っていた。
記者とは常に嫌われるものだ。
嫌われると云う事は、それだけ情報を嗅ぎまわっている事の証拠であり誇るべき事だと、アサピーの先輩は教えてくれた。

今なら言える。
そんな事はない、と。
人から好かれなければ欲しい情報もニュースも一向に耳に入らず、詳細は彼方へと遠ざかる。
昔の自分にそれを教えてあげたかった。

ジュスティアの膝元であるティンカーベルに事件など転がるはずもなく、そこに飛ばされると云う事は遠まわしに退職を宣告されたのと同義だと。
それに気付いた時にはもう遅い。
省14
943: 2015/01/03(土)21:29 ID:mWYJPbvk0(22/42) AAS
その後についてはよく分からないが、犯人が殺され事は覚えている。
そんなトラギコと仕事を共に出来るとは夢にも思わなかった。
正直、彼が怪我をしていなければあの場でサインでも求めていたかもしれない。
ともあれ、現実的な事に目を向けると金が手元にほとんどなかった。

要求されたものを買えないわけではないが、店側が気前良く売ってくれるのかどうか、そしてトラギコのネタが金に結び付くのか、それが心配だった。
ともあれ、品物を用意しなければチャンスはない。
この島で手に入れた数少ないチャンスだ。
使わない手はない。

品物を探して店内を歩くアサピーは、溜息を五回ほど吐いた。
デジタルカメラを買うために貯めていた金をここで使う事になるとは思わなかった。
省14
944: 2015/01/03(土)21:34 ID:mWYJPbvk0(23/42) AAS
AA省
945: 2015/01/03(土)21:39 ID:mWYJPbvk0(24/42) AAS
AA省
946: 2015/01/03(土)21:42 ID:mWYJPbvk0(25/42) AAS
AA省
947: 2015/01/03(土)21:46 ID:mWYJPbvk0(26/42) AAS
AA省
948: 2015/01/03(土)21:51 ID:mWYJPbvk0(27/42) AAS
AA省
949: 2015/01/03(土)21:56 ID:mWYJPbvk0(28/42) AAS
AA省
950: 2015/01/03(土)22:09 ID:mWYJPbvk0(29/42) AAS
礼を言われる事は何もない。
利害関係が一致していなければ、こんな事はしない。
トラギコはカールの仇討を、アサピーはスクープを。
それだけの関係だ。

――だから、彼が会社に行っている間に尾行者を処分するのはトラギコの役目なのだ。

(-@∀@)「じゃあ、ちょっと行ってきます」

(=゚д゚)「人通りの多いところを行けよ」

再び家を出て行ったアサピーが車に乗ったのを見届け、トラギコは窓の下にいる尾行者を目の端で見下ろした。
黒いセダンはアサピーが帰ってくるのとほぼ同時に現れ、その後部屋を見上げられる位置に駐車されたままだ。
運転手はそこから降りてきていない。
省11
951: 2015/01/03(土)22:14 ID:mWYJPbvk0(30/42) AAS
――代用品なら、あった。
ペットボトルを使えばいい。
作った仕込み杖の射撃性能を試す絶好の機会だ。
車までの距離は目算で二十ヤード。

狙撃と云うよりも、射的と言った方がいい距離だ。
このぐらいの距離ならば、あまり誤差は出ないはずである。
すぐに大きめのペットボトルに加工を施す。
加工といっても底と飲み口を切り落とし、アサピーの衣服を中に詰めてテープで止めただけのものだ。

杖先のゴムの部品を取り、音と熱が出ていくように数か所穴を開ける。
そこに先ほどのペットボトルをはめ込むと、衣服とペットボトルがある程度の音を吸収してくれる仕組みだ。
省14
952: 2015/01/03(土)22:19 ID:mWYJPbvk0(31/42) AAS
狙撃は忍耐が必要な攻撃だ。
動じず、慌てず、静かにその時を待つ。
だからトラギコは苦手だった。
相手の動きを見る。

五分、十分と時間が過ぎてゆく。
そして、その時が来た。
車の運転席、そして助手席の扉が開いたのだ。
ここで焦ってはいけない。

後部座席に人が残っている可能性がある。
また、彼らがトラギコを狙っているのかもまだ不明だ。
省11
953: 2015/01/03(土)22:24 ID:mWYJPbvk0(32/42) AAS
もう少し血気盛んな若者であれば銃を手にしていただろう。
それなら、気前よく銃弾を胴体に撃ち込んでやれたのに。
そして二人は建物の死角に入り込み、終ぞ撃つ事が出来なかった。
こうなっては仕方がない。

残った車に照準を合わせ、人の動きがないかを見る。
どうやら、中には誰もいないようだ。
ボルトを引いて銃弾を取り出し、床に杖を置いた。
この部屋に来られたらこのライフルでは戦えない。

充電中の棺桶を使うか、それともM8000を使うか。
答えは決まっている。
省12
954: 2015/01/03(土)22:32 ID:mWYJPbvk0(33/42) AAS
玄関付近から人の声がしたのは、二分も経った頃。
どのような手段で訪問してくるのか、それが問題だ。
爆弾で扉をぶち破る事はしないだろうが、ショットガンでも持ち出されていたら事だ。
室内であれに勝てる見込みがない。

ドアノブが回り、扉が開いた。
跫音を忍ばせて進入してきた気配は二つ。
床を軋ませながら、土足で上がってきた。

「すみませーん、隣の部屋の者なんですが……」

気配の一つは現像室に向かい、もう一つがリビングに向かってくる。
リビングに現れた男の手には、ナイフが握られていた。
省12
955: 2015/01/03(土)22:39 ID:mWYJPbvk0(34/42) AAS
AA省
956: 2015/01/03(土)22:50 ID:mWYJPbvk0(35/42) AAS
AA省
957: 2015/01/03(土)22:55 ID:mWYJPbvk0(36/42) AAS
AA省
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