[過去ログ] 右塔フ菓子20 (361レス)
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6: 2013/09/10(火)21:17 ID:0(5/265) AAS
新スレ記念に。
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 毒々しい血の色よりもそれを連想させるこっくりとした赤色、そのマニキュ
アを丁寧に短い爪に塗っていく。
 彼の大きな手を取って、長い指の切り揃えられた爪は、たちまち知らない誰
かの顔になってしまう。似合わねえよ、と露骨に眉を寄せて嫌そうに吐き捨て
る彼も、まあそう言わないで、とやさしげな声をかける俺も、今夜は酔ってい
る。
 ただ、飲んでいた場所はふたり別々だった。
 そして彼は俺の知らない香水の匂いをさせている。
「お前のが似合うって」
「アベ君塗るの下手くそそうだからダメ」
「オレの指、ささくれてんじゃん。ウエノの指の方が断然キレイだって」
 俺のアベ君はどこもかしこもキレイだよ、と言ってみれば、猫の目で薄く笑
った。
 真夜中。
 月の光もどこかへ消えた夜。
 いつものように酔って俺の家の玄関を叩いたアベ君は笑っていた。どこぞで
飲んでいたらしい、酔っ払いらしく名前も知らないような女を食ったらしい。
 女って勝手に濡れるから楽でいいな、と無邪気に感心していた。
 まあねえ、と答えた俺も今夜は女を抱いていた、確かに男とは違うやわらか
さで、鳴けよ、なんて言わなくても勝手に鳴いてこちらの劣情をそそってくれ
た。
 アベ君のポケットには女がマーキングのためにでも忍ばせたのか、銀のリッ
プケースに入った口紅。
 うちの絨毯の上には、同じく女が落として行ったと思われる真っ赤なマニキ
ュア。
 人間のメスは縄張り意識が強いのかねえ、なんて笑って、そしてアベ君の手
を引いた。マニキュアを塗りたかったのは、多分それが似合わない彼に安心し
たかったから。
 彼が、女の代わりでないことを、確認したかったから。
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