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【コスパ】DALI OBERON/ZENSORシリーズ 13【未知】 (1002レス)
【コスパ】DALI OBERON/ZENSORシリーズ 13【未知】 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/pav/1561435104/
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781: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2019/10/24(木) 13:09:31.61 ID:klH3i1Qp 「ふ…………馬鹿な子。犬のくせにまともに走れもしないなんて」 「いや、本当にプレイは他所でやってくれ」 「あ、つい」 ついってことは、今の素? 本当になんで村一番の清楚なんて無理なキャラ付けしたんだよ。 そんな二人は、結局泉の周りで三回こけて帰って行った。 なんでだよ! 他所でやってくれ! 「ふぅー…………。年に一回はあーいう変なの来るな」 食糧調達のため、ほどほどに人里に近い場所を選んだのがまずかったのか。 綺麗な水があるせいか、人目をはばかりたい奴らが引き寄せられてくる。 俺は白い石造りの家に入りながらもう一度溜め息を吐いた。 「殺人鬼が死体沈めようとしてた時とは、また違った衝撃があったな」 顔全体を覆う凹凸の少ない仮面をつけて、血に濡れた鉈を持っていた殺人鬼。 怪我人かと思って飛び出したらそんなのがいて。一昼夜に及ぶ追いかけっこの末、殺人鬼を捜して森に入った武装集団の下へと誘導できたから良かったものの。 「泉の精とか噂されてても、俺も生身だしなぁ」 ぶっちゃけ、国の依頼で倒したドラゴンや屍霊王より、生きた殺人鬼のほうが怖かった。 動物的な殺気や、死人の妄執より、生きた人間の生々しさが駄目だ。 「生きた人間が、一番怖いよな」 最たるものを俺は身を持って経験した。 いつものように招待された王宮の舞踏会。何故か俺を取り囲む人々。 冤罪を着せて断罪する奴らの醜悪さ。茶番とわかっていて傍観する奴らの冷酷さ。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/pav/1561435104/781
782: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2019/10/24(木) 13:17:20.80 ID:klH3i1Qp 生きた感情が、一番怖い。 俺はロッキングチェアに戻ると、目を閉じて嫌な記憶を奥底に沈める。 魔法を使うための初期技能、瞑想だ。 感情に左右されるようじゃ、魔術師としては三流。 だから俺も、あの冤罪劇では、見苦しく言い訳せず、速やかにあの国を後にした。 ま、冤罪着せて来たのが王子だったし、それが国の決定だったんだろ。 じくじくと胸の中に広がりそうになる感情を、瞑想で平らにならしていると、またも水を揺らす音がした。 「今度はなん…………?」 ボチャ、ボッチャンって、重い物が二つも落ちる音がした。 「不法投棄かこら!」 俺はすぐさま家を飛び出す。 不法投棄するような奴は後ろ暗いからすぐに姿を消すんだ。 逃がすか! と思って上を見たら、盛大に泡が立っていた。 透明な水を遮る、白い泡の中から沈んで来たのは、二人の子供。 硬く手を握り合わせて、顔には苦悶の表情を浮かべていた。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/pav/1561435104/782
783: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2019/10/24(木) 13:18:44.56 ID:klH3i1Qp 「嘘だろ!?」 慌てて結界を開き、水と共に招き入れる。 下は砂とは言え、俺が踏み固めてしまっていた。 「やべ!」 自分の考えのなさに舌打ちしても遅い。 俺は慌てて子供二人の落下地点に飛び込んだ。 「ぐえ…………!」 「ぐっ!?」 「ぷは!」 俺の上に落ちた子供たち二人は、どちらも大きく息を吐いて咳き込む。 どうやらあまり水を飲む前だったようだ。 が、早くどいてくれ。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/pav/1561435104/783
784: 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2019/10/24(木) 13:24:44.34 ID:PthJTN3Q つまんねーよ http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/pav/1561435104/784
785: 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2019/10/24(木) 13:24:54.53 ID:PthJTN3Q 他でやればか http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/pav/1561435104/785
786: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2019/10/24(木) 13:59:28.66 ID:XouMB5KW 異端魔術師、泉の精を詐称する 泉に降って来た子供二人を抱えて、俺は動けなくなっていた。 どっちも苦しげに身を丸めて咳き込んでる。 たぶん、俺を敷いてることに気づいてない。そして地味に肘が俺の腹に刺さっていることも。 こんな状態じゃ喋りかけても聞ける余裕ないだろうしな。 俺は泉の水面を見上げて、覗き込む者がいないことを確認した。 どうやら子供たちは二人だけで来て、二人して落ちたらしい。 未だに、硬くお互いの手を握り合ったままだ。 ずぶ濡れの二人は、同じ髪の色によく似た輪郭をしている。きっと兄妹なんだろう。 じっとりと俺に染み込んでくる水。同時に、確かな体温も服の上から染み込んで来ていた。 子供体温って奴か? 熱いくらいだけど、熱とかあるわけじゃないよな? じっと咳が収まるのを待っていると、兄だろうほうの子供が、妹の無事を確かめて安堵する。 そして支える俺の腕を辿って目が合った。 「な!? だ、誰だ!」 こっちが聞きたいんですがねー? っていうか、ずいぶん綺麗な青い目をしてる。 顔立ちも整っていて、こういうのを将来有望って言うんだろうな。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/pav/1561435104/786
787: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2019/10/24(木) 14:07:12.69 ID:FiAs1wMo 兄は妹を守るように抱きかかえると、ようやく俺の上からどいてくれた。 妹も同じ青い目をしており、怯えも露わに俺を見ている。 そんな怖がるほど陰気かね? 王宮にいる間は身嗜みにも気を付けていたけど、今は一人だし、髪も服もずるずるじゃ、幼女からすれば不審者か。 「勝手に人の住まいに侵入しておいて、誰とはとんだ不遜さだな。躾のなっていない子供は嫌いだ」 ここは俺の家! そこはしっかり主張させてもらうぞ。 と思ったら、兄のほうがすごい勢いで睨んで来た。 幼さの残る顔は十幾つかと言った年齢。 物事の分別がついていていい年齢だと思うが? 比べて妹は十歳に届いてないだろう。兄の胸に縋って俺に怯えた目を向けていた。 「あんたの住まいなんて知らない! 俺たちを何処に連れて来た!」 「状況把握もできない馬鹿か? 周りを見てみろ」 俺が横を指すと、警戒心満々で視線を離せずにいる兄より、妹のほうが先に声を上げた。 「なんで、水の中?」 「え? …………あ、ここ、は?」 「お前たちが俺の住む泉に勝手に落ちて来たんだ」 家の存在にも気づいたようで、兄は頭上で揺れる水面に半信半疑の目を向ける。 妹は素直なようで、乾いた砂を触り、濡れた自身の髪を確かめて、泉の中であることを受け入れたみたいだ。 「ど、どうして助けたんだ!」 「お前たちが勝手に落ちてきたと言っただろう。そっちこそ、どんな間抜けな理由でここに落ちてきたと言うんだ」 さっきからこの兄のほうは生意気だなぁ。 特殊プレイの犬野郎みたいに、泣きを見せる呪いでもかけて親の元に帰してやろうか。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/pav/1561435104/787
788: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2019/10/24(木) 14:14:03.50 ID:FiAs1wMo なんて考えたら、兄妹から削ぎ落されたように表情が消えた。 あ…………これは、やばい。 「死のうとしたのに、なんでお前みたいなのがいるんだよ」 あー! 自殺志願だったよ! 若すぎる身空で何やってんだ! おい、本当にこいつらの親何処だよ!? 「馬鹿なことを言うな。俺が何処を住処にしようと関係ないだろう。その時の勢いで死ぬにしても場所選びが最悪だ。そんな奴はどうせ死ねない。さっさと家に帰って寝ろ」 親元に帰れと言ったら、妹のほうの顔が無表情な中に悲壮感漂う空気を醸し出した。 そんな妹を腕に抱いて、兄のほうは俺に敵意に満ちた目を向けてくる。 「帰る場所なんて、もうない!」 「親は…………」 聞こうとしてやめた。 良く見れば、妹を抱く兄の腕は傷だらけだ。 兄に抱かれて投げ出した妹の足はほとんど肉がついていなかった。 あぁ、こいつらは親なしだ。 ただ言葉に拙つたなさはない。親を亡くしたのはそう何年も前じゃないだろう。 「お母さん、魔女なんかじゃないよ」 ぽつりと零した妹の言葉で、何があったかは想像ができた。 周辺の国々では今、魔女狩りが起きている。男も捕まるんだが、最初にやり玉に挙げられたのが魔女だったために、魔女狩りと言われていた。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/pav/1561435104/788
789: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2019/10/24(木) 14:16:09.51 ID:FiAs1wMo 狩られるのは市井にいる権力者に与しない魔法使いたち。つまりは、権力者による魔法の囲い込みの一種だ。 もちろん、魔法使いも馬鹿じゃない。俺みたいに隠棲する奴もいる。追っ手をかけられても逃げ切る奴もいる。 ただ、この兄妹の母親は、子供二人を連れて逃げ切れなかったんだろう。 そして残された魔女の子供二人。 世を儚む理由、ばっちり揃ってんじゃねぇか。 「こんな世界、生きるなんて願い下げだ。魔女の子なんて言われて、見世物みたいに殺されるくらいなら、俺は、自分の死にざまくらい、自分で…………」 「無理だな」 「なんだと!? あんな残虐な人間たちの中でなんか!」 「少なくともお前らの母親は本物の魔女だ」 「お母さんは、いつも優しい普通のお母さんだったよ!」 「だったら、お前たちの命を繋ぐ加護は、誰の魔法だ?」 わからない顔で兄妹は顔を見合わせた。 ま、魔法使いじゃない奴じゃわからないか。 この兄妹、良く見ると生き残りを願う加護がついてる。これは、妖精や精霊と呼ばれる者たちへのメッセージだ。 どうかこの二人を守ってくれという、母親の愛によってかけられた魔法だった。 「お母さん…………」 「今さら、加護なんて!」 わからなくても思い当たることはあったのか、兄妹は加護の存在を否定しなかった。 綺麗な青い瞳をした兄妹だ。 なのに、兄の目は猜疑と憎悪で濁ってる。妹の目は悲嘆と諦観で曇ってる。 親も、こんな目をさせたくて生き残りを願ったわけじゃないだろうに。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/pav/1561435104/789
790: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2019/10/24(木) 14:18:31.52 ID:FiAs1wMo そんなことを考えながら、俺は指を一つ鳴らして魔法を使った。 兄妹を受け止めた時に濡れたローブが不快で、乾かしただけ。ついでに濡れ鼠二人も乾かした。手間は変わんねぇからな。 「ふ、服が…………? 今の、魔法か?」 「他に何があるんだ?」 兄のほうが自分の体をまさぐると、妹は転がり落ちるように兄の腕から出て来た。 「どうして? 杖は、呪文は?」 「俺には必要ない」 他の魔法使いならそういう触媒が必要になるけど、俺は天才だからな。 昔からそういうのがいらない。頭の中で思い浮かべるだけでいい。 妖精や精霊なんかの魔法の使い方だ。俺は自然と身に着けたけど、他の魔法使いたちはやろうとしたら何十年か研鑽を積まなきゃいけないらしかった。 「まるで、お伽噺の妖精みたい…………」 「に、人間じゃ、ないのか?」 妹の感想に、兄のほうが警戒の種類を変えた。 人間相手なら強気に出られるの? 生きた人間のほうが加減知らないことあるから怖いもんよ? ま、母親が魔女狩りにあったなら、人間が何処まで非道で残虐になれるかを目の当たりにしたのかもしれない。 既知の恐怖より、未知の恐怖のほうが対処もわからず腰が引けるってことか。 「さて、俺は近辺でも有名な意地の悪い泉の精のはずだがな」 まさか泉の中で人間が生きていられると思わなかった近隣住民たちが、泉の精だと言い始めたんだよな。 面白がって肝試しに来る若いの多くて困ったもんだ。色々やって近づかないようにしたんだが、その次は意地悪だ、陰気だと噂が流れた。 まったく、娯楽のない田舎はこれだから。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/pav/1561435104/790
791: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2019/10/24(木) 14:19:44.35 ID:FiAs1wMo 「泉の精…………? 水に関係する精霊は、女のはずだろ」 「お前、妙なこと知ってるな。だが、それは水から生まれた人型の精霊に限定だ。別に生まれた後、泉に住みついたなら女じゃなくてもいるぞ」 大抵が女だけどな。昔関わった水の精は、人間の男に惚れられるほどの美貌を持っていた。本当ならそのまま男を水の中に攫う習性の精霊だったけど、まぁ、男のほうもイケメンだったんだよ。 殺さずに男を帰したら、男のほうが水の精に猛アタックかけてた。 恋は盲目と言うが、あのイケメン人の話聞かないくらい猛進してたから、何度か魔法で爆破したな。あれも今じゃいい思い出だ。 「本当に、泉の精さん?」 「おい、こんな陰気で胡散臭い奴の言うこと信じるな」 「でも、触った時の冷たさ、人間じゃないよ」 悪かったな、人外疑うほど冷たくて! 昔から体温低いんだよ! その上今じゃ水中暮らしだから、体温も上がらないんだよ! 妹は泉の精という話を信じたみたいだが、兄のほうは半信半疑だろうな。 ま、さっきみたいに噛みついてこないだけましか。 人間相手には相当思うところがある兄も、人間じゃないかもしれない俺には強く出られないようだ。 「に、人間じゃないなら、もうどうでもいい。俺たちを泉から出してくれ」 「ふん、物を頼む態度じゃないな」 反射的に噛みつこうとした兄は、思い留まって黙った。 これくらいのほうがいいな。よし、泉の精のふりをしておこう。 となると、それらしいことでも言っておこうか。 「せっかく自分からやって来た生贄だ。なんの対価もなく返すわけがないだろう。さぁ、まずは名乗れ。お前たちの働き次第では、泉の外に出してやってもいい」 「おい、まさか! 俺たちをここに閉じ込めるつもりか!?」 「名を寄越さないなら、脱出の機会も与えないぞ」 それっぽく笑ってみせると、なんか思ったより怯えられた。 強気な兄のほうまで身を引き気味なんだけど。え、俺ってそんなに悪人面? http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/pav/1561435104/791
792: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2019/10/24(木) 14:20:07.17 ID:FiAs1wMo 「お、お兄ちゃん…………」 「だ、大丈夫だ。お前は、俺が守るから」 一緒に入水自殺しようとしといて何言ってんだよ。 その気概はもっと早く発揮しとけ。 「それで? 名を寄越すなら、俺の召使として生かし、働きによっては泉から出してやるが?」 「…………わかった。俺の名は…………ヘンゼル。こっちはグレーテ、ルだ」 はい、偽名いただきましたー。 魔法使い舐めんなよ。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/pav/1561435104/792
793: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2019/10/24(木) 14:21:11.52 ID:FiAs1wMo 3章(タイトルネタ切れ) 仮名、ヘンゼルとグレーテルを拾った俺は、さっそく二人をこき使うことに決めた。 ま、ご主人さまに偽名名乗るなんて舐めた真似したお仕置きだ。 俺が本物の精霊だったら、今頃問答無用で呪われてたぞ。 「寝る間も惜しんで俺のために働け! それがお前たちの役目だ!」 それっぽく手を広げて命じてみたら、兄ことヘンゼルに冷めた視線を返された。 妹ことグレーテルは、何度も瞬きをして首を傾げる。 「働くって、何をすればいいんだ? こんな水の中で、俺たちにできることがあるとは思えない」 「大抵のことは魔法でどうにでもなるがな。ちゃんとお前たちように仕事は考えてやる」 「今から考えるのか」 その青い目で胡散臭そうに見るな! ちゃんと、生きる気力のないお前らに、生き方ってものを教えてやるさ。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/pav/1561435104/793
794: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2019/10/24(木) 14:21:46.47 ID:FiAs1wMo というところで、ちょっと魔法を使う。これは俺が考えた魔法で、相手の基本的な情報を読み取れるというもの。 王宮で人の名前とか血縁関係とか覚えられなくて作った魔法なんだよな。 えーと、ヘンゼルの本名はヨハネス=ドルフ。グレーテルはマルガレーテ=ドルフ、ね。 ドルフってのは家名じゃなくて、村を表す名前だ。つまり村人っていう身分を表す。 が、気になる項目が魔法にある。血筋だ。 こいつら、水の精とのハーフだな。水の精が女って知ってたのは母親が水の精だったからか。けど兄妹の反応からして、正体は秘密にしてたんだろうな。 水の精は誘惑の性質があるから、たまに人間の男と結婚する奴いるんだよなぁ。 「いつまでも座り込んで怠惰に耽るな。立ってこっちにこい」 「なんだその言い方!」 「あの、泉の精さま!」 グレーテルがなんか言った! い、泉の精さま!? いや、そうか。召使とか言ったし、そう呼ばれても…………。 「…………なんだ?」 「このお家は、どうして水の中にあるのでしょう?」 「どうして? 地上にいい家があったから、買い取って、そのまま沈めただけだが」 隠棲するにあたって、やっぱり住まいって大事だろ。終の棲家にするつもりだったし。 国外追放された後、なんかこの白い石の家気に入って買い取ったんだよ。 元国一番の魔術師だったから、それなりに蓄えあったし。 で、泉に細工して結界張って、家のほうにも魔法で補強して、後はドボン! http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/pav/1561435104/794
795: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2019/10/24(木) 14:22:40.80 ID:FiAs1wMo 「買い取ってって、金があるのか…………」 おっと、そこで俺への不信深めるのかよ。 「お兄ちゃん。こんな水の中におうち作れるなんて、すごい精霊さまだよ、きっと」 「魔法の腕は、確かみたいだけど…………」 うわー、背中に猜疑の視線が突き刺さるー。疑り深いな、ヘンゼル。 いや、こうしてなきゃここまで妹守ってこれなかったってことか? で、行き場失くして、このままじゃ死ぬってわかったから、命の終わりは自分で始末つけようって? ふざけんな! 死んだら負けなんだよ。 国が相手で歯が立たなくて、強がってその場を去ることしかできなくてもな、自分を陥れた奴らの思うままに死んでやる必要なんかないんだ。 俺はちょっと、復讐とか見返しやるなんてやる気起きない年齢だけどさ。お前らはまだ子供なんだ。今から巻き返しの未来を見据えて生きていいはずだ。 「そうそう、この結界は魔法を使えなきゃ抜け出せない。泳いで泉を出ようなどと浅知恵を働かせるなよ」 「…………し、しねぇよ」 図星、にしてはどうも反応が妙だ。悔しそうって言うより、恥ずかしそうな感じがする。 「あぁ、泳げないのか」 「なんで!?」 わかったとでも言いかけたのか、ヘンゼルは顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。 わー、すっごい自爆見たわ。ま、俺も泳げないんだけどな。 そこは、魔法でどうにでもなるから別に泳げなくてもいいし。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/pav/1561435104/795
796: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2019/10/24(木) 14:23:51.71 ID:FiAs1wMo 「そんなみすぼらしい体では、身体能力の伸びも見込めないだろう。少しは俺の役に立つように魔法でも覚えてみるか? まぁ、覚えられるだけの頭があったらの話だが」 「はぁ? 言ったなてめぇ…………」 いや、本当、ヘンゼルくん? なんでそんなに喧嘩っ早いの? 睨み殺しそうな顔するなよ。教える気が失せるから。 俺、小さい時から天才って持て囃されたから、肉体言語とか嫌いなんだよ。 「お兄ちゃん、泉の精さまにそんな口きくのは」 グレーテルはいい子だなー。 「やるなら魔法を覚えてからでいいでしょ?」 前言撤回! グレーテル、恐ろしい子! 「お前たちに才能があるかもわからないのに、魔法を修得できる気でいるとはおめでたい。仕事を疎かにすることは許さないからな」 「やってやる」 覚悟を決めたようだな。ま、親が親だから魔法は覚えられるだろ。 じゃ、さっそく一仕事してもらうか。 「ヘンゼル。お前は今からこの斧で薪を十本作れ」 「なんだ、それくらい…………!? なんだよこの斧! 刃がないじゃないか!」 家の横に立てかけていた斧を渡すと、ヘンゼルが食ってかかって来た。 渡した斧の刃は潰れており、薪にするべき木はグレーテル並に太い。普通に腕力でやろうとしても無理だ。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/pav/1561435104/796
797: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2019/10/24(木) 14:28:15.72 ID:8POCU8vg http://hissi.org/read.php/pav/20191024/RmlBczF3TW8.html http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/pav/1561435104/797
798: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2019/10/24(木) 15:21:47.39 ID:EIgWywm0 「できないことを仕事としてやらせるなんて、卑怯だぞ!」 「ほう? こんなこともできないのか。では、手本を見せてやろう」 俺はヘンゼルの手から斧を取ると、木を一本土台代わりの切り株に置く。 で、魔力を流して一振り。 カッコーンといい音を立てて、木は二つに割れて飛んだ。 やべ、ちょっと力んでやりすぎた。 薪割りって、一発で両断するもんじゃないんだよ。色々危ないから、斧刺して、もう一回木ごと打ちつけて割るべきだ。 そうしたらできた薪も今の俺みたいに飛んで行かない。 「とまぁ、ここまでしろとは言わん。普通に薪割りをしていろ」 俺から斧を受けと取ったヘンゼルは、もう一度刃がないことを確認している。 刃がないのに切れる理由は簡単。その斧、俺が作った魔法道具だから。 魔力流せば刃ができるようになってる。魔力を流すことさえできれば、斧を木に刺すだけの簡単な仕事だ。 そのためには、魔力を操ることを覚えなくちゃいけない。 無心になって自分の力を感じるままに動かす感覚を掴むには、ヘンゼルは気が強すぎた。 四苦八苦した上で、肉体疲労の限界の中で魔力が引き出されるのを待つほうが、口で教えるより良さそうだと思ったんだ。 「お兄ちゃん、無理なら…………」 「む、無理なんかじゃない! 俺はできる!」 おうおう、お兄ちゃんは大変だ。 「グレーテル。お前はこっちだ」 「幼い妹まで働かせる気か!」 「当たり前だろう。役立たずはいらないぞ」 グレーテルを見て言えば、なんか、驚いた顔された。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/pav/1561435104/798
799: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2019/10/24(木) 15:22:20.43 ID:EIgWywm0 そこ、怯えるんじゃないの? うーん、この子は良くわからんな。ヘンゼルくらい鼻っ柱が高いなら、俺も自分の子供の頃に覚えがあるから扱いやすいんだけど。 「やります! お仕事、やらせてください!」 なんでかやる気満々になった。 えー? これって簡単な炊事やってもらおうと思ってたんだけど、意気込みを買ってちょっときついことやらせるべき? 「グレーテ、ル! こんな変質者みたいな奴に何を言ってるんだ!」 「お前こそ何言ってるんだ、こら! 誰が変質者だ、誰が!」 腹立ったので、ヘンゼルには作る薪を四本追加した。 家の中に入っても、ヘンゼルは窓から室内を窺ってくる。 変質者みたいなことはしねーよ! 「私にできること、あまりなさそうですね」 何故か室内に入ったグレーテルが一気にやる気をなくした。 室内はいたって普通の家。 窓際にロッキングチェアがあり、それとは別にダイニングテーブルと椅子がある。 台所は最初から二口の竈があり、流しは広く、収納棚も備えていた。 元の家がいいから家具の必要はあまりなかった。だから正直、物は少ない。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/pav/1561435104/799
800: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2019/10/24(木) 15:24:26.00 ID:EIgWywm0 >>797 「もっとドロドロの薬品とか、なんの痕かもわからない染みとか」 「何を想像していたんだ、何を」 ちょっと想像力逞しすぎじゃないか? 「魔法使いなら怪しい本とか、大きな鍋とかがあると聞いてたんですけど。泉の精さまは違うんですね」 「そうした研究をする者もいるが、研究とは求めるもののある者がやることだ」 「泉の精さまには、求めるものはないのですか?」 「求めて得たものが、永遠に己の手の内にあるわけではない。求めることは、何かに束縛されることだ。得るだけ無駄だ、甲斐もない。そう知っているから、最初から求める気も起きない」 期待に応えようと王宮に上がって、地位を得て、失った。 あの国から持ち出す物などなくていい。 そう思って物品に拘らなくなると、自然、この家の中も物が少なくなっていた。 あえて気に入って手にしたものと言えば、この家と泉くらいか。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/pav/1561435104/800
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