[過去ログ] 【腐女子カプ厨】巨雑6498【なんでもあり】 [無断転載禁止]©2ch.net (316レス)
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305: (スププ Sdb8-AUQK) 2016/12/15(木)04:12 d AAS
 しばらくしてリヴァイが戻ってくると、落ち着いたはずの心臓がまた小さく騒ぎ始める。どうしよう、何を話したらいいのだろう。お礼をしなければいけないけれど、何から切り出したらいいんだ。
「怪我はもういいのか?」
「えっ、はい! もう全然! 違和感もありませんし、エルヴィン先生にも完治してるって言ってもらえました」
「……そうか。よかったな」
 リヴァイはそう言って少し笑ってくれた。
「アッカーマンさん、本当にあの時はありがとうございました。オレだったらいくら近くにいたって他人を咄嗟に助けるなんてできなかっただろうし、見ているしかできなかったと思います。
だからこれだけの怪我で済んだのは本当にあなたのおかげです。感謝してもしきれません」
 エレンは頭を下げる。やっとちゃんとした礼を言えたと安心した。
「……そんなに何度も礼を言わなくてもいい。お前が無事ならそれでいい」
「ありがとうございます……」
省10
306: (スププ Sdb8-AUQK) 2016/12/15(木)04:12 d AAS
「アッカーマンさん! あの、また会えませんか? もっとあなたと話がしてみたいんです」
 リヴァイが立ち止まり、振り返る。
「……おっさんと話したって楽しくねぇだろう」
「そんなことないです」
「俺は、若い奴のことはわからない」
「オレに合わせようとしてくれなくたっていいんです! 話すことがないっていうなら、その、映画でも、なんでも……」
 それなら、話さなくても一緒にいられるでしょう、と。
「……どうしてそんなに」
 どうして。どうしてオレはこんなにもこの人と一緒にいたいと思うのだろう。
 ああ、そうか。
省11
307: (スププ Sdb8-AUQK) 2016/12/15(木)04:13 d AAS
 朝起きた時にエレンを襲ったのは寂寥感だった。部屋には自分以外に誰もいない。静かで、冷蔵庫と常につけっぱなしにしている換気扇の音だけが微かに聞こえてくる。自分の中から何かがすっぽりと抜け落ちてしまったかのように虚しかった。
「……大学めんどくせぇ」
 エレンはぼそりと呟いた。
 今は人に会いたくないし、幼馴染みの二人にさえ顔を合わせたくなかった。顔を見ただけで何かあったのかと問い詰められそうだ。
 けれど、講義を休むわけにはいかない。
 エレンは一年の時は同じ大学の医学部に入学した。医学部に入ったのはもちろん父親の後を継ぐためだ。幼い頃から勉強はさせられてきたし、負けず嫌いなエレンは褒められるためではなく父を見返すために勉強をした。おかげで勉強はできる。
 経営学部に転学したのは二年の後期だった。周りからは医学部生が何故、とか挫折したんじゃないのか、とか散々言われたけれど、エレンには明確な目標があった。
 医者になるのは嫌じゃない。父の言いなりになっているのが嫌なだけで。成績だってトップだった。
 それでも経営を勉強したいと思ったのは……ああ、どうしてだっけ。思い出せない。ちゃんと理由があって、親も説得したのに。けれどエレンは今の勉強が好きだった。言われて医学部にいたあの頃よりも生きているという感じがするし、何よりおもしろい。
 まぁ、よってエレンは一年から経営学部にいた学生よりも、今とらなければならない単位が少し多いので、講義を休むわけにはいかないのだ。
省5
308: (スププ Sdb8-AUQK) 2016/12/15(木)04:13 d AAS
「……何もねぇよ。眠いだけ」
「嘘。眠いって顔はしてない」
「まぁまぁ、ミカサ。でも確かに元気がないよね。何かあったの?僕達で良ければ話を聞くよ。話した方がすっきりすることもあるから」
 エレンを挟んで両隣から顔を覗かれる。この位置では逃げることもできない。アルミンは優しいことを言っているように聞こえるけれど、話すまで逃がす気はないのでミカサよりも性質が悪い。
「……別に。昨日人と会ってて……帰ってくるのが遅かったから疲れたんだよ」
 間違いではない。人と会っていたのは本当のことだし、帰ってくるのも遅かった。というか、ぼーっとしていていつ帰って来たのか、そのはっきりとした時間はわからない。でも、そのままベッドに横になって、気付いたら朝だった。
「へぇ。誰と会ってたの?」
「そこまで言う必要があるのかよ……」
「言えないような人なら問題ある」
 両サイドから視線を向けられる。
省13
309: (スププ Sdb8-AUQK) 2016/12/15(木)04:14 d AAS
 いつエレンが気持ちを告げようが、一緒にいる時間は延ばせてもリヴァイが好きになってくれることはないのだろう。
 リヴァイには一生をかけたい人がいるのだとはっきり言われているのだから。その瞳は、その場しのぎで言っているようには見えなかった。
「それで? その人にちゃんとお礼は言えたの?」
「まぁ……」
 アルミンの問いに曖昧に頷く。お礼は言えたのだから当初の目的は達成したはずなのに、それはエレンに少しの達成感ももたらしはしなかった。エレンが欲しかった成果には程遠い。
 俯いて溜息を吐く。その様子を黙って見ていた幼馴染の視線にエレンは気付かなかった。

  +++

 失恋の傷は浅くとも治りは遅かった。もう二週間以上過ぎたというのに、頭からはリヴァイのことが離れない。
 リヴァイと会ったのはエレンの記憶の中ではたった二度だ。その時間の中で話せたことは多くはないし、彼の人となりを知るには十分ではなかった。
 だからこそ、リヴァイが結婚しているのかも、恋人がいるのかもわからなかった。ましてや忘れられない人がいるなんて。
省8
310: (スププ Sdb8-AUQK) 2016/12/15(木)04:14 d AAS
 辺りはすでに暗い。本屋のバイトをしているエレンは店長の厚意でしばらく治療に専念していたが、また働かせてもらっている。
 今日も閉店の二十二時まで働いて、あとは帰るだけだったのだが、曲がらなければならない道を真っ直ぐ来てしまったようで、街灯の少ない通りにまで来てしまった。
 小さく舌打ちをして、踵を返そうとする。
「……、どうせ眠れないし」
 少し考えて、エレンはそう呟くと再び歩き出した。
 どこにいたって考えることは同じ。だったら散歩がてら少し歩いてから帰ろう。
 正直ここがどのあたりなのかわからない。スマートフォンで調べてみればわかるのかもしれないが、エレンはそれをしなかった。
 すでにcloseの札がかけられている小さな雑貨屋を右手に真っ直ぐ進む。そして二つ目の道を右に曲がって、真っ直ぐ。
 次の道を左に曲がる。エレンの足に迷いはなかった。知らない道だけれど、不思議と不安もなかった。迷っているという感覚もない。ごく自然に、導かれるように歩く。
 少し大きな通りに出て、歩いている人もちらほら見かけるようになると、ここが駅前の通りなのだと気がついた。小さな駅の明かりが見えて少しホッとする。
省8
311: (スププ Sdb8-AUQK) 2016/12/15(木)04:14 d AAS
「えっ、あ、たまたまです! バイト終わって、散歩してたらここまで来ちゃったから、もう帰ろうと思って……! その、本当に、偶然で」
 エレンは慌てて答える。不快に思われてしまっただろうか。振った相手とこんなふうに会ってしまうなんて、あまりいい気分ではないと思う。エレンは会えて嬉しいけれど、リヴァイはそうじゃない。
「……あの、それじゃあ失礼します」
 顔は見れなかった。エレンは俯いたまま頭を下げて、駅の階段を上ろうとする。と、「おい」という声と共に腕を掴まれた。
「もう電車はねぇ」
「えっ……ほ、本当に?」
 こくりと頷いて返される。
 エレンはやってしまった、と額を押さえた。思い出したように頭が痛みだして、エレンは重い溜息をたっぷりと吐いた。
「どうするんだ?」
「どうするって……。あー、始発待つよりは歩いた方が早く家に着きそうなんで、歩いて帰ります」
省12
312: (スププ Sdb8-AUQK) 2016/12/15(木)04:15 d AAS
 早口で捲し立てられて、エレンは思わず後ずさる。いきなりの説教に驚くしかないが、リヴァイの言葉で心配してくれた幼馴染二人の顔を思い出して、エレンは目を逸らした。
「……今日は泊めてやる。来い」
「は? え、ちょっと……!」
 ぐい、と腕を引かれると、全く予期していなかった足はたたらを踏んだ。
 泊まる?リヴァイの部屋に?無理、そんなの無理だ。エレンは首を振った。
「い、いいです! 泊めてもらうなんて!」
「じゃあどうする」
「それは……やっぱり、歩いて……っ」
「却下だ。泊まれない理由が? 俺が納得する理由を言えば離してやる」
 どうしてこんなに頑ななのだ。リヴァイはエレンを振ったのに。今までだってリヴァイのことばかり考えていた。それなのに、少しでも一緒にいられるとなれば、忘れるなんて到底無理だ。
省15
313: (スププ Sdb8-AUQK) 2016/12/15(木)04:15 d AAS
「……オレ、お邪魔しちゃって、よかったんですか?」
「まだ言ってんのか。俺がいいって言ってんだろうが」
「でも、アッカーマンさん、誰かと一緒に、住んでいるんですよね……?」
 こんなの、一人暮らしの男の部屋ではありえないと思う。どれもがペアで、二人用。ああでも、相手の人と気は合いそうだなと思った。ソファの色も、クッションの柄も、エレンの好みだ。
「……もう一緒に住んでない。そのままにしているだけだ」
「そう、ですか」
 でもきっと、リヴァイの言う忘れられない人が選んだものだと思うから、彼は一生そのままにしとくのだろう。
 リヴァイはこれ以上そのことについて触れる気はないようで、スーツを脱ぐと別の部屋に入っていった。
 リビングに立ちつくす。自分だけがこの部屋に馴染んでいない違和感。他人の部屋なのだから当たり前なのに、自分は異物なのだという感覚が気持ち悪い。
 やっぱり帰ろうか。今ならば、リヴァイに気付かれずに帰ることができる。エレンは床に張り付きかけた足を引きずって部屋に背を向けた。
省12
314: (スププ Sdb8-AUQK) 2016/12/15(木)04:16 d AAS
「あの……上がりました……」
「……どうした?」
 顔が赤い、と言われてますます顔が色づく。
 だいぶ心も落ちつけて、洗剤のいい匂いがするタオルで羞恥に耐えながらも体を拭い、リヴァイが用意してくれた新品の下着に足を通すのも一苦労で、一瞬冷静になったのは寝巻に用意された服が自分のサイズとぴったりだとわかった時だった。
 それでもリヴァイの部屋に風呂上がりの自分がいるという異常さにエレンの羞恥が勝った。
「何でもないです……お風呂ありがとうございました。あと、服も」
「ああ。俺も入ってくる。寝室はあの部屋だ。寝たきゃ勝手にベッドを使っていい」
「え!? い、いやベッドまで使えません! オレここで大丈夫です」
 自分の部屋でもあまり眠れやしないのに、リヴァイの部屋でなんて緊張して眠れるとは思えない。
「どうせ眠れないので……」
省10
315: (スププ Sdb8-AUQK) 2016/12/15(木)04:18 d AAS
 実家では毎日湯を張っていたけれど、一人暮らしになると専らシャワーで済ませてしまうから、バスタブに浸かるのは久しぶりだった。
 けれど、リヴァイが普段入っているバスタブに自分が浸かっているというだけで恥ずかしくて、エレンは素早く体や頭を洗うと、すぐに風呂を上がる。
 乱暴に髪をわしゃわしゃとタオルで拭くと、途端に自分の使っているものとは別のシャンプーの香りがして、ぶわっと顔が熱くなった。リヴァイと同じ香り。
「〜〜〜っ」
 堪らずに脱衣所に裸のまましゃがみ込む。
 こんなの無理だ。耐えられない。そんなに入っていないのに、逆上せそうなほど頭がくらくらした。

「あの……上がりました……」
「……どうした?」
 顔が赤い、と言われてますます顔が色づく。
 だいぶ心も落ちつけて、洗剤のいい匂いがするタオルで羞恥に耐えながらも体を拭い、リヴァイが用意してくれた新品の下着に足を通すのも一苦労で、一瞬冷静になったのは寝巻に用意された服が自分のサイズとぴったりだとわかった時だった。
省11
316: (スププ Sdb8-AUQK) 2016/12/15(木)04:18 d AAS
 わかっている。リヴァイは優しい人間なのだ。けどそれが、エレンには苦しい。優しさが苦しいなんて初めてだ。だけど、
「……好きだなあ」
 エレンは掠れた声でそう呟くと、吸いこまれる様に意識を手放した。頭を受け止めるソファの感触は、懐かしいと感じるほど気持ちが良かった。

 ふかふかな感触を全身で味わうように寝がえりを打つ。いつもとは違う布団の匂いと柔らかさにエレンは頬を摺り寄せて、ぎゅっと体を縮ませた。
「……ん、」
 さらりと前髪を撫でられたような気がして薄く目を開ける。ぼんやりと視界に映るのは白い天井と、窓から差し込む光。それと、誰かの背中だ。その背中を見た途端にホッとする。ああ、今日もいてくれる。約束を守ってくれているんだ、と。
 ベッドの縁に座る彼に自然と手が伸びて、シャツの裾を控えめに掴んだ。振り向かれるよりも早く彼の名前が舌を滑った。
「リヴァイ、さん……」
「……エレン? 起きたのか」
 優しい声だった。今まで聞いた中で、一番。
省13
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