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興行収入を見守るスレ5656 (1002レス)
興行収入を見守るスレ5656 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/
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812: 岩瀬仁紀(熊本県) (ワッチョイ fb17-yILz [175.28.186.21]) [sage] 2022/09/10(土) 02:59:41.01 ID:8qrRT5uv0 オラとルエラ姫は、喋る大鷲を黙ったまま見送る。 オラとルエラ姫は、大鷲が飛び去った空を見上げていた。 ルエラ姫がため息を零して、オラの肩に顎を載せる。 「なんだったのよ。あの鷲。あいつのせいで興ざめよ。せっかくいい雰囲気だったのに。あ~あ、キスでもすればよかったなぁ」 ルエラ姫がオラから離れて肩を落とし、ぶつぶつ文句を言いながら、バルコニーの手摺に両手で頬杖を突く。 ルエラ姫はつまらなそうに、両手で頬杖を突いたまま満月を見上げている。 オラは、ルエラ姫がキスしようとしていたことに驚き、一瞬動きが止まる。 「まあまあ、ルエラ。って、キスしようとしてたんか!? ほんまか!? それは、その、心の準備がいるけえ。なんじゃ、その……」 オラは照れたように頭の後ろを掻いて咳払いし、恥ずかしそうにルエラ姫をちらちらと見た。 ルエラ姫は手摺に両手で頬杖を突いたまま、満月を見上げてため息を零した。 「なに本気になってるのよ。冗談に決まってるでしょ! バッカみたい」 ルエラ姫が不貞腐れて頬を膨らませ、オラに振り向き唸りながらオラを睨み据える。 ルエラ姫は顔を赤らめ、オラに舌を出して顔を戻した。 オラは怒りが込み上げ、拳を振り上げた。 オラの振り上げた拳が震えている。 「なんじゃと! キスくらいええじゃろが。今度は怪我ではすまんで?」 オラは天生牙を鞘から抜いて、八相の構えをして、ルエラ姫に不敵に笑った。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/812
813: 山本昌(熊本県) (ワッチョイ fb17-yILz [175.28.186.21]) [sage] 2022/09/10(土) 03:01:17.08 ID:8qrRT5uv0 「なによっ!」 ルエラ姫がオラに振り返って、牙をむき出す。 オラに掴みかかろうとしたとき。 ルエラ姫の寝室の扉が静かにノックされた。 「ルエラ姫、入っていいかな?」 扉越しに響く、よく通る低い男の声だった。 ルエラ姫がオラに襲い掛かるポーズのまま立ち止った。 「ほら見なさい。見張りの兵士に注意されちゃったじゃない」 両手を腰に当てて、思わず小声になる。 オラの責任だと言わんばかりに、ルエラ姫は目を細めてオラを睨み据える。 「すまんすまん。はしゃぎすぎたわい。オラが出るけえ」 オラは片手で頭の後ろに手を当てて、手をひらひらさせて舌を出した。 オラは天生牙を鞘に納めると、ルエラ姫の寝室の扉に向かった。 「行かないで、カイト。今日は百年に一度の紅月よ? 今日は朝からなんか胸騒ぎがして変なのよ……」 ルエラ姫の心配そうな声が降って来て、ルエラがオラの軍服の裾を掴んだ。 オラはルエラ姫に振り向いて、白い歯を見せてルエラに笑った。 ルエラ姫はオラを見つめ、ルエラの眼がさざ波の様に揺れている。 ルエラ姫は両手でオラの裾を掴んだ。 オラはルエラ姫の手首を掴んで、ルエラ姫を抱き寄せた。 ルエラ姫の頭を優しく撫でる。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/813
814: 松井秀喜(熊本県) (ワッチョイ fb17-yILz [175.28.186.21]) [sage] 2022/09/10(土) 03:01:58.31 ID:8qrRT5uv0 「心配しすぎじゃろ。ルエラ姫は、オラが守るけえ。行ってくるで」 オラはルエラ姫の額にキスをして、ルエラ姫の身体からそっと離れた。 オラはルエラ姫に背中を向けて、手を上げて振った。 「絶対よ? 何があっても、あたしを守って……カイトは、あたしのボディガードなんだから……」 オラの背中越しに、ルエラ姫の悲しい声が突き刺さる。 また、ルエラ姫の寝室の扉がノックがされる。 オラは、ルエラ姫の寝室の扉を静かに開けた。 「こんばんは。ルエラ姫はボクが攫うよ。ボディーガードくん」 少女の凛とした声。 少女は灰色のツインテール、右眼には精巧な眼帯をしている。 眼帯からは紅いレーザーが伸び、眼帯のレンズが伸縮したりして、オラのデータを採っている。 服は華やかな着物を着て、マントを羽織り、手には穴あきグローブを嵌め、両手の爪にはカラフルなマニュキュアが塗ってある。 膝下からすらっと足が伸び、素足で草履を履いている。 両足の爪にも、カラフルなマニキュアが塗ってある。 オラのお腹に、オートマチック銃の銃口が向けられ、少女は不敵に笑った。 引き金が引かれ、銃口から火を噴き、薬莢やっきょうが床に落ちる。 そして、少女はオラに銃を撃った。 「ぐっ」 オラは銃弾の衝撃波でオラの身体はくの字に曲がり、ルエラ姫のベッドまで吹っ飛んで仰向けに倒れる。 オラの身体に青白い電気が走り回り、青白い電気が痛そうな音を立てている。 オラの身体は痺れて動かない、オラの軍服のお腹に血が滲んでいる。 オラはお腹を手で押さえ、なんとか止血した。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/814
815: 和田一浩(熊本県) (ワッチョイ fb17-yILz [175.28.186.21]) [sage] 2022/09/10(土) 03:03:19.18 ID:8qrRT5uv0 防弾チョッキ、弾が貫通しおった。 あの銃、特殊な銃じゃわい。 少女がルエラ姫の寝室に足を踏み入れるのが見える。 少女は真っ直ぐルエラ姫に向かって歩く。 少女がオラに不敵に笑って、オラの横を通り過ぎる。 「お邪魔するよ。キミは痺れてしばらく動けないよ、ボディーガードくん。さあ、ルエラ姫。ボクと来てもらおう。抵抗するなら、話は変わってくる。どうする?」 少女の冷たい声が聞こえる。 オラは痺れる身体をやっと動かしてうつ伏せになり、少しずつ匍匐ほふく前進しながらルエラ姫を見る。 ルエラ姫は見知らぬ人間を見て、バルコニーで尻餅を突いて後退りしている。 ルエラ姫の右足のサンダルが脱げているのが見える。 「嫌、嫌よ。こ、来ないで。あ、あなた誰よ? 見張りの兵士はどうしたの? 何が起きてるの……」 ルエラ姫は、恐怖で声が震えている。首を横に振るばかり。 「くえっ、くえっ~」 さっきの人語を喋る大鷹が、開け放たれたルエラ姫の寝室の扉から侵入してきたらしく、人語を喋る大鷲はルエラ姫のベッドの手摺りにとまった。 「くえっ、くえっ~。事情も知らないで、攫われるのも面白くねぇよな! 姫様は、民衆の前で晒し首にされるのさ。その血は、魔王復活に捧げるってなもんよ。今宵、アルガスタの王族は攫われ、一週間後にアルガスタの王族は民衆の前で晒し首だ。傑作だね、こりゃ。アスカ、さっさと仕事を終わらせようぜ。オレは鰯が食いてぇんだ」 人語を喋る大鷹が大きな翼を広げて、翼を折りたたんだ。 人語を喋る大鷲がオラとルエラ姫を交互に見て、お腹を抱えて笑った。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/815
816: 上原浩治(光) (アウアウウー Sa9d-yILz [106.130.72.50]) [sage] 2022/09/10(土) 03:04:17.29 ID:8ho8j4Cua 「そうだね、ジェイ。今宵は、魔王復活の第一段階だ。魔物たちも紅月で不死身になる。余興を楽しませてもらうよ」 少女が言い終わった後、少女は掌を広げた。 少女の掌の上に載った小さな銀色の球。 少女は掌を翻し、小さな銀色の球を床に落とした。 床に落ちた銀色の球は閃光の後、煙が噴出された。 け、煙玉か。 オラは咳き込んだ。 オラは煙の中で、怒鳴っているルエラ姫に手を伸ばす。 「放せっ! 魔王の生贄なんてごめんよ! カイトー! 絶対助けに来て! じゃないと、呪ってやるからねっ!」 煙が充満する中。 アスカがルエラ姫を肩に担いでオラの横を通り過ぎる影が見えた。 オラは悔しくて、床を何度も叩いた。 、なにやっとんじゃ、オラは。 このままだと、ルエラ姫は魔王の生贄になる。それでええんか? 百年前に討伐隊によって封印された魔王。アルガスタで有名な話じゃ。 天生牙、オラに力を貸してくれ。ルエラを守りたいんじゃ。 オラは歯を食いしばって、天生牙を握り締め、天生牙を引き寄せる。 オラの涙が、天生牙の刀身に沁みる。 涙が一粒、天生牙の刀身に沁み。 二粒、三粒、四粒、五粒と、天生牙の刀身に涙が沁みる。 その時、オラの涙に反応したのか、天生牙が眩く青白く煌めく。 天生牙? オラは天生牙を見つめた。オラに応えてくれたんか? それを合図にオラの身体を青白い光が包み込み、オラの身体が軽くなった。 さすがにお腹の傷は治らんか。動くにはこれで充分じゃ。 オラは天生牙を床に突き刺し、お腹を押さえて立ち上がった。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/816
817: 松坂大輔(光) (アウアウウー Sa9d-yILz [106.130.72.50]) [sage] 2022/09/10(土) 03:04:55.18 ID:8ho8j4Cua オラはよろめきながら、ルエラ姫の寝室の扉を出た。 床にオラの血が滴る。 ルエラ姫の寝室を出た傍の壁に凭れ、左右を見る。 ルエラ姫の姿が見当たらない。 どこじゃ、ルエラ姫。今、行くで。 その時、廊下の柱時計が午前0時を知らせる鐘が鳴る。 窓ガラス越しに月を見上げる。 さっきまで青白かった月がみるみる紅く染まっていく。 「これが……ルエラ姫が言っておった、百年に一度の紅月か。二人で見たかったのう。それにしても、不気味な月じゃわい」 オラは窓ガラス越しに、紅月を見上げて鼻で笑う。 その時、廊下の紅い絨毯の上に黒い魔法陣が現れ、魔法陣が紅く光る。 魔法陣の中から、低級魔物が現れた。次々と魔法陣が現れる。 野犬の様な魔物、烏の様な魔物、猿の様な魔物、鬼の様な魔物、大鎌を持った死神のような魔物。 どの魔物も眼が紅く光り、獣は涎を垂らし低く唸り、武器を振り回している。 こいつら、オラの血に寄ってきたんか? 王族を攫う仕事をサボって、そげにオラと遊びたいんか? オラは天生牙を床に突き刺し、おもむろに立ち上がった。 「オラの最期の仕事じゃ。ルエラ姫、すまん。そっちに行けそうにないわい。思った以上に傷が深いで。じゃけえ、お前ら、行くでぇ!」 オラは天生牙を握り締め、お腹からの出血に構わず、魔物に向かって駆け出した。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/817
818: 松中信彦(光) (アウアウウー Sa9d-yILz [106.130.72.50]) [sage] 2022/09/10(土) 03:05:33.98 ID:8ho8j4Cua 天生牙一振りで、魔物の身体が一つの光の玉となって弾け飛んだ。 これが、天生牙の本当の力なんか? 天生牙の刀身が青白く光っている。 魔物を倒す度に、傷が癒えるような気がする。 オラは次々に魔法陣から現れる低級魔物を斬り倒しながら、廊下を駆けた。 お腹の傷を押さえながら。意識が遠のいて倒れながらも。 その時、窓ガラスから、火矢が窓ガラスを突き破り、火矢が壁に突き刺さる。 魔王軍の奴ら、城を燃やす気か。 オラは煙臭い廊下を口許を手で覆いながら進み、階段をよろけながら下りる。 階段の踊り場で、階段を上がってくるジンと出くわした。 ジンがオラの肩に手を置いた。 「カイト、まだいたのか。ここは危険だ。早く脱出するんだ。わたしは他に生存者がいないか、見回ってくる」 ジンは上を見上げて、オラに注意を促す。 ん? なんでシンがルエラ姫を担いどるんじゃ? 「おい、ジン。なんでルエラ姫を肩に担いどるんじゃ?」 オラはジンの肩に担がれたルエラ姫を見て、オラは首を傾げた。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/818
819: 福本豊(熊本県) (ワッチョイ fb17-yILz [175.28.186.21]) [sage] 2022/09/10(土) 03:07:50.39 ID:8qrRT5uv0 「廊下でルエラ姫が倒れてたんだ。他の兵士にルエラ姫を預けようにも、他の兵士が見当たらなくてな。恐らく魔物にやられたんだろ」 ジンはルエラ姫を担ぎなおす。 なんか変じゃのう。オラはまた首を傾げる。 ルエラ姫は、あの女に攫われたはず。 大事な生贄を、廊下に置き去りにするもんなんじゃろか? いや、それはないじゃろ。 それに、こいつから殺気を感じるで。 こいつ、オラの知っとるジンじゃない。 誰かがジンに化けとるな。オラを油断させるために。 「カイト、こいつは偽物のジンよ!」 ルエラ姫の大声が聞こえる。 ルエラ姫が目を覚ましたのか、じたばたしている。 ジンは何故かため息を零した。 「ボディーガードくんの知っている人間に化けても、殺気までは消せなかったか。ボクにしては上出来の変化だ」 ジンは頷いてから、アスカに姿を変える。 アスカの変身の様は、まるでカメレオンが姿を変える様だった。 アスカの殺気が一気に解放された。 オラはアスカの殺気で動けず、オラの眼はさざ波の様に揺らいでいる。 オラの手から天生牙が滑り落ちた。 階段の踊り場に落ちた天生牙が軽い音を立てる。 アスカが顎に手を当てて、まじまじと床に落ちた天生牙を見つめる。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/819
820: 立浪和義(熊本県) (ワッチョイ fb17-yILz [175.28.186.21]) [sage] 2022/09/10(土) 03:08:47.43 ID:8qrRT5uv0 「天生牙か。面白いものを見せてもらったよ、ボディガードくん。余興はここまでにしよう。キミはここで死んでもらうよ」 アスカは床に落ちた天生牙を拾うと一振りした。 アスカは不敵に笑い、オラの胸に天生牙を突き刺し、天生牙を引き抜いた。 アスカは天生牙の刀身についた血を眺めて、天生牙を投げ捨てた。 「カイト!? あんた、カイトになにしたのよ! 放しなさいよ!」 ルエラ姫はオラに振り向くが、状況を呑み込めず、必死に抵抗している。 オラはよろめいて、階段の踊り場の壁まで後退る。 「急所外しちゃったか。まあいいや。さて、ルエラ姫には絶望してもらおうかな。ボディーガードくんの最期を見届けなくちゃ」 アスカが閃いたように指を弾いて鳴らし、アスカはホルスターからオートマチック銃を抜いて、オラに不敵に笑った。 アスカはオラに銃口を向け、オートマチック銃は高い機械音を鳴らす。 「チャージショット」 アスカは静かに言うと、躊躇せずオラを撃った。 撃つ瞬間、銃口から火が噴いて、薬莢が床に落ちた。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/820
821: 落合博満(熊本県) (ワッチョイ fb17-yILz [175.28.186.21]) [sage] 2022/09/10(土) 03:09:42.17 ID:8qrRT5uv0 「ぐっ」 オラは口から血を吐いて、銃弾の衝撃波でくの字に吹っ飛んだ。 さっきの銃弾より強力だった。 銃弾の衝撃波により、階段の踊り場の壁を突き破った。 オラは断崖絶壁に投げ出された。 オラは階段の踊り場に、ぽっかり開いた穴を見る。 アスカはホルスターに銃を収め、ルエラ姫を肩に担ぎなおす。 アスカは踵を返して階段を下りてゆく。 ルエラ姫が階段に吸い込まれてゆく。 「カイトぉぉぉぉぉー! イヤぁぁぁぁぁ!」 ルエラ姫が叫んで、オラに手を伸ばす。 オラは歯を見せて笑い、親指を突き出した。 ルエラ姫の涙が風に運ばれ、オラの頬を優しく撫でる。 「くえっ、くえっ~。奈落の底へ真っ逆さまだな。さぞ、姫様が泣くことだろうよ。こりゃ傑作だぜ! くえっ、くえっ~」 ジェイがオラの傍にやってきて、お腹を抱えて笑っている。 くちばしに天生牙を銜えて。 笑い過ぎて額のゴーグルがズレて、くちばしを開けて天生牙を落とした。 「ほらよ、お前さんの武器だろ。冥土の土産として持っていきな。短い時間、せいぜい楽しめや。くえっつ、くえっ~」 ジェイは高笑いしながら、空高く羽ばたいた。 ジェイの大きな羽が舞い落ちる。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/821
822: 野村克也(熊本県) (ワッチョイ fb17-yILz [175.28.186.21]) [sage] 2022/09/10(土) 03:10:36.57 ID:8qrRT5uv0 オラは落ちてくる天生牙の刀身を掴んだ。 天生牙の刀身を掴んだので、オラの掌が切れて、血が手首を伝う。 行くで、天生牙。最期までお前と一緒じゃ。 オラは瞼を閉じた。 ルエラ姫、すまん。 最期にお前に会えてよかったわい。 ルエラ姫の言う事を聞けばよかったんじゃ。 なのに、オラは聞く耳を持たんかった。死ぬのが怖い、怖いんじゃ。 オラは涙を流して、お腹の上で天生牙を抱き締めた。 オラの身体が逆さまに、断崖絶壁に沈んでいく。 風がオラの身体を、死への恐怖へと誘いざなうように撫でる。 さよなら、アルガスタ。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/822
823: 古田敦也(熊本県) (ワッチョイ fb17-yILz [175.28.186.21]) [sage] 2022/09/10(土) 03:12:07.98 ID:8qrRT5uv0 異世界アルガスタ~異世界ユニフォンへ 第二話:栞と葛城とカイト オラの記憶が走馬灯のように脳裏を駆け巡る。 父ちゃんのようなアルガスタ親衛隊を志していたこと。 ルエラ姫との出会い。盗賊との戦い。ジンとの出会い。 射撃訓練は成績が悪かった。ジンとの剣術の稽古。初めてのルエラ姫の護衛任務。 お忍びでルエラ姫と一緒に城下町に出掛けたこと。 ルエラ姫との淡い思い出。 そっと瞼を開ける。 オラは断崖絶壁を急降下しているわけではなかった。 何故か蒼い空を仰向けに急降下していた。 手にはしっかりと天生牙を抱き締めている。 風が冷たくて心地いい。 綿あめの様な雲をすり抜けてゆく。 オラは身体を捻じって、うつ伏せになり両手足を伸ばし空を泳ぐ。 オラは生きてるんか? 自分の身体を見ると、何故か身体が半透明になり始める。 眼下に大地が広がり、見たこともない建物が建っているのが小さく見える。 ここは天国か? その時、オラの傍らに、箒に跨った女の子が寄って来た。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/823
824: 鈴木一朗(熊本県) (ワッチョイ fb17-yILz [175.28.186.21]) [sage] 2022/09/10(土) 03:12:50.90 ID:8qrRT5uv0 箒に跨った女の子は、黒いとんがり帽子を被り、帽子の先がくるんと曲がっている。 髪は淡いピンクのストレートヘア。髪の先っちょを紅く染めている。 前髪にハートのヘアピンを留め、左の瞳が澄んだ蒼色で、右の瞳がエメラルドグリーン。 耳にはハートのピアスをつけ、首にはハートのネックレス。 黒いワンピースを着て、胸に小さな紅いリボンをつけ、右手首にブレスレットを嵌めている。 お尻の辺りに大きな紅いリボンが付いて、縞のニーソックスを穿き、黒いリボンパンプス。 箒の先端の小さな穴に、ハートのキーホルダーが付けてあり、背中に小さなくまのぬいぐるみを背負っている。 女の子は微笑んでオラに手を振った。 「あれ? キミもユニフォンに来たの? アリスはアルガスタから転移してきましたぁ。アリスはね、アルガスタに転生した魔王様を探さなきゃならないのです。アリスね、初めてユニフォンに来ちゃった。もともと、アルガスタとユニフォンは一つの世界だったらしいよぉ。せっかく、ユニフォンに来たんだし、ついでに観光しよっと。それじゃ、まったね~」 少女はオラに手を振ると、ウィンクと投げキッスを同時にして、箒で急降下していった。 さっきの女、なんじゃったんじゃ? ひょっとして、オラにお迎えが来たんか? オラは首を横に振る。 眼下に大地が迫り、見たこともない建物が大きくなる。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/824
825: 名無シネマさん(東京都) (ワントンキン MMd3-uPBE [153.159.150.41]) [sage] 2022/09/10(土) 03:14:39.69 ID:hLTjNddMM >>803 そうだよ 例の集団ヒトリと同レベルの知能らしく同一端末で回線だけコロコロ変えてるからNGしやすいなw (福岡県)(ワッチョイ 9917-yILz [124.159.140.223]) (光)(アウアウウー Sa9d-yILz [106.128.150.137]) (熊本県)(ワッチョイ fb17-yILz [175.28.186.21]) http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/825
826: 村上宗隆(熊本県) (ワッチョイ fb17-yILz [175.28.186.21]) [sage] 2022/09/10(土) 03:15:12.36 ID:8qrRT5uv0 「まずいで! オラはまだ死にたくないんじゃ!」 オラは手足を必死に動かす。 重力に逆らうことはできず、オラの身体は虚しく落ちてゆく。 このままじゃと、地面に激突じゃぞ。 なんとかせえ、オラの天生牙。 オラは祈るように天生牙を天に翳した。 その時、陽光を浴びた天生牙が眩く青白く煌めく。 強烈な青白い光が、オラの身体を包み込む。 眼下に建物が迫る。 瓦屋根に激突しそうになり、オラは思わず顔の前で手を覆い目を瞑った。 もうダメじゃ。 次の瞬間、身体に痛みを感じた。 オラは瞼を開けると、階段を転げ落ちていた。 オラは階段下まで転がり落ち、胡坐をかいて頭の後ろを擦る。 「いててて」 上半身がすぅっとして違和感を感じ、自分の身体を見ると何故か安物の着物を着ていた。 恰好は白いシャツに藍染着物、下は皺だらけの野袴を穿いて素足だった。 オラは腕を組んで考え込み、首を傾げた。 な、なんでオラが着物着てるんじゃ? アルガスタの軍服を着とったのに。 それに、オラの身体は半透明になってたはずじゃ。 どうなってるんじゃ? オラは顔を上げて、辺りを見回した。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/826
827: 山田哲人(熊本県) (ワッチョイ fb17-yILz [175.28.186.21]) [sage] 2022/09/10(土) 03:16:40.58 ID:8qrRT5uv0 その時、オラの目の前に半透明の男が現れた。 格好はオラと同じで、オラと顔がそっくりじゃった。 もう一人のオラは、頭の後ろで髪を小さく結えている。 オラは思わず自分ともう一人の自分を見比べて、オラは唸って腕を組んで首を傾げる。 「お前がカイトじゃな?」 もう一人のオラは両手に腰を当てて、オラに訊いた。 オラは、もう一人の自分に向かって黙って頷く。 もう一人のオラは、腕を組んで微笑んだ。 「オラの身体、大事にせえよ。栞を頼むで……」 もう一人のオラは天を仰ぐと、身体が光の玉となって静かに天に昇った。 オラはあんぐりと口を開けて顔を上げ、もう一人の自分を黙って見送っていた。 オラは眼を擦って、もう一人の自分が消えた方を見上げる。眼を細める。 さっきのは、ゆ、幽霊か? オラはここにおるで? やっぱ、オラは死んだんか? オラは、もう一人のオラが消えた方に向かって、瞼を閉じて黙って手を合わせた。 何があったか知らんが成仏せえよ。オラのそっくりさんよ。 オラは腕を組んで首を傾げた。なんじゃったんじゃ? http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/827
828: 坂本勇人(福岡県) (ワッチョイ e917-yILz [116.94.119.125]) [sage] 2022/09/10(土) 03:19:16.67 ID:FD7/bjso0 その時、一階の廊下の奥から小走りに走ってくる可愛らしい音が聞こえた。 やがて、オラの前で小走りの音が止やんで、床が軋む。 廊下の奥から小走りしてきたのは、肩までのミディアムヘアで花の簪かんざしをつけた、和服を着た小さな女の子だった。 小さな女の子は後ろ手に小首を傾げ、不思議そうに眼をぱちくりさせてオラを見下ろしている。 「兄ちゃん、大丈夫?」 小さな女の子が心配そうに、オラに訊いてくる。 「だ、誰じゃ!? お前は!?」 オラは見知らぬ女の子を前にして、思わず後退る。 この子、誰じゃ? 人間みたいじゃが。 何されるかわからんで。 逃げようにも力が入らんわい。 オラの大声に驚いたのか、小さな女の子は眼をぱちくりしている。 そうじゃ、ルエラ姫はどうなったんじゃ。 あの女にルエラ姫は攫われたが、この子なら何か知ってるかもしれん。 もしかしたら、あの女が魔法でオラをアルガスタのどっかに飛ばしたかもしれん。 生きてるちゅうことは、ここはアルガスタのどっかなんじゃろ。 それに、オラの天生牙が見当たらん。どこいったんじゃ? 「おい。お前、ルエラ姫を知らんか!? ルエラ姫は攫われたんじゃ、なんか知らんか!? ここはどこなんじゃ!?」 オラは立ち上がり、小さな女の子身体を揺らす。 小さな女の子を責めるのが馬鹿らしくなり、オラは小さな女の子から手を離してため息を零した。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/828
829: 菊池涼介(福岡県) (ワッチョイ e917-yILz [116.94.119.125]) [sage] 2022/09/10(土) 03:20:44.61 ID:FD7/bjso0 こんな小さな女の子に責めてどうするんじゃ。 ここがどこか知らんが、とにかく事情を知ってる人を探さんと。 「栞の知らない人。兄ちゃん、誰?」 小さな女の子は、腕を組んで小首を傾げている。 「オラはカイトじゃ。栞、じゃったの。誰か呼んできてくれんか? できれば大人がええんじゃが……」 オラは屈み込んで、小さな女の子の両肩に手を置いて、小さな女の子の顔を覗き込む。 その時、廊下の奥から足音が聞こえた。 足音は栞の後ろで止まった。 オラは思わず栞から顔を上げる。 栞の後ろに立つ男。 頭に白いタオルを巻き、丸メガネを掛け、蒼い作務衣に身を包んだ男が腕を組んで立っていた。 「光秀。さっき大きな音がしたが、また階段から転げ落ちたのか? この寝坊助め」 男はオラを見下ろして、鼻を鳴らして笑っている。 小さな女の子は踵を返して、男の後ろに隠れるように男の脚にすがりついた。 オラはおもむろに立ち上がって栞を見送った。 「ん? 栞、どした? 光秀が怖いのか?」 男は栞の頭を撫でて、栞の顔を覗き込んでいる。 「栞の知らない人。栞の兄ちゃんじゃない」 栞は首を横に振って、男の脚に顔を埋めた。 男が栞と手を繋いで、顎に手を当てて唸りながら、舐めまわすようにオラを上から下まで見る。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/829
830: 浅村栄斗(福岡県) (ワッチョイ e917-yILz [116.94.119.125]) [sage] 2022/09/10(土) 03:21:53.06 ID:FD7/bjso0 「うーん……確かに、見た感じは光秀じゃないな。顔は似てるけど……あれ? そのブレスレット、ひょっとしてアルガスタの物だろう? ユニフォンじゃ見かけないしな、ブレスレットなんて。……そうか、キミが私の先祖、カイトくんだね? カイトくんのことは、お婆によく聞かされたよ。英雄伝としてね。そうか、この日が来たか。ようこそ、ユニフォンへ。僕は未来のアルガスタからこっち(ユニフォン)に移住してきた、佐藤葛城だ。ああ、アルガスタでの名前はアランだ。アルガスタでは刀鍛冶を営んでいてね、僕の技術をこっちに売りにきたんだ」 男は、オラの左手首に付けている白色のブレスレットに目が止まり、男はオラに訊いた。 その後、男は面白くもなくまくしたてた。 男が信じがたいことを言うので、オラは苛立って眉間に皺を寄せた。 オラは口を尖らせて腕を組み、人差指が上下に動いていた。 「オラの先祖じゃと!? アルガスタの未来人じゃと!? オラが英雄じゃと!? 訳がわからんわい。おい、あんた。誰か知らんが、とにかく説明せい! ここがどこで、オラは誰で、どうしてこうなったんじゃ!? さっきから嘘言いおって、なんなんじゃ!」 オラは葛城の上着の裾を掴み、拳を振り上げた。 オラは頭のモヤモヤを掻き消すように、頭をくしゃくしゃにした。 「まあまあ、落ち着いて。信じられないのもわかるよ。栞も怖がってるし、お茶でも飲みながら話そうじゃないか。あっ、そうそう。家系図を持ってくるよ。それで、カイトくんが僕の先祖だってことが証明されると思うから」 葛城は栞と手を繋いだままオラの肩に手を置いて、葛城はオラに優しく微笑む。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/830
831: 青木宣親(光) (アウアウウー Sa9d-yILz [106.130.72.111]) [sage] 2022/09/10(土) 03:22:56.03 ID:Rzt7im1Sa 「勝手にせい。あんた、何か知ってそうじゃけえの。訊かせてもらうで」 オラは葛城の腕を振り払い、腕を組み、鼻を鳴らしてそっぽを向いた。 「ああ。カイトくんが納得するまで、僕は話すよ。さてとっ、客間に案内しよう。美味しい茶菓子でも食べようじゃないか」 葛城は栞の頭を撫でて、栞と手を繋いだまま踵を返し、廊下の奥に向かって歩いてゆく。 栞が後ろを振り向く。オラが気になるんじゃろか? 「なんでこげなことになっとんじゃ」 オラはぶつぶつ文句を言いながら、頭の後ろで手を組んで、葛城の背中を大股で追いかける。 試しにオラの頬を思いっきり摘まんでみる。 「いてっ」 じんと頬が痛んで、頬を摘まんだ手を離した。 オラは両手の掌を広げ、自分の掌を見つめる。 やっぱ、夢じゃないわい。 なんでオラは生きとるんじゃ? アルガスタはどうなったんじゃ? ルエラ姫、無事でいてくれよ。 オラは両手を握り締める。 オラは真っ直ぐ前を向いた。 葛城は廊下沿いの襖を開けて、オラを手招きした。 栞は葛城の後ろに隠れて、顔をちょこんと覗かせている。 オラが近づくと、栞は恥ずかしそうに葛城の脚に顔を埋める。 「この部屋で待っててくれるかい? 今、茶と茶菓子を用意してくるから」 葛城はにっこりとオラに笑いかける。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/831
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