[過去ログ] 【伝奇】東京ブリーチャーズ【TRPG】 [無断転載禁止]©2ch.net (285レス)
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51: 尾弐 黒雄 ◆pNqNUIlvYE 2016/12/13(火)22:15 ID:6ccLBc3u(1/4) AAS
曇天。
遍くを照らす陽光は無く、然りとて地を濡らす雨も無い。
或いは、それは夕暮れ時にも似た狭間の情景の中。
黒白の鯨幕で覆われた部屋の中から、男は立ち去って行く一つの家族を見送る。
父親と母親
祖父と祖母
涙を流しながら、励まし合いながら、並んで男から遠ざかって行く四人の家族。
本来は、五人であった家族。
だが、その中に一週間前まで居た少年の姿は今はもうない。
死んだからだ。
原因不明の衰弱死。
それが、元気に遊び駆け回り、人懐っこく、子供たちの中心であった少年の死因であった。
そして……その少年の死に顔は、苦悶と苦痛、何より恐怖によって彩られていた。
異常とも言える、年若い子供に相応しくないその形相。
そんな物を誰にも見せたくなかった為に、少年の家族は身内だけでの葬儀を執り行った。
そして、つい今しがた火葬と告別式を終え、離別の悲しみを抱えたまま帰路に付いたという訳である。
「……全く、やるせないねぇ」
そんな家族を見送る男……喪服を着こみ、髪をオールバックで纏めた大男。
彼は、首元を手で押さえながら小さな声でそう漏らす。
警察は、病死だと言っていた。
病院は、原因不明の奇病だと言っていた。
だが、男は……少年の葬儀を執り行った、尾弐 黒雄 は知っている。
少年は、死んだのではない。殺されたのだと。
人に仇名す人外のモノ――――『妖壊』に憑り殺されたのだと。
不可解な死に方と、少年の死に顔、何より……遺体に纏わりつく、特有の気配が。
尾弐 黒尾がこの仕事を始めてから何度も感じてきた、悍ましい『この世ならざる』気配が、それを伝えていた。
「……おっと、浸ってる場合じゃねぇか。式場の片付けと葬儀代の回収しねぇとな」
けれども、その真実を知っても尾弐が動く事は無い。
感情に任せて動く事が出来る程に尾弐は若くなく、或いは……心自体が時間の経過と共に腐り果てているのだろう。
そのまま欠伸を一つして事務所まで戻った尾弐であったが、ふと壁に貼られたカレンダーに付けられた赤丸を見て思い出す。
「ああ……そういや今日は例の『八尺様』をどうにかする日だったか」
脳裏に浮かぶのは、計画を立ち上げた者達の姿。
正体不詳の狐面に、雪女の雄、都市伝説の混じり者の少女
「bleachers……“ヒョウハクする者達”か。全く、意地の悪い言葉遊びな事で」
皮肉気な笑みを浮かべながら呟き、尾弐黒雄は事務所の椅子に腰かける。
「ま、集合時間まで暫くある事だし……一杯引っかけてから向かうとするかね」
そうして取り出したのは、日本酒の瓶。
先の葬儀の際に、死んだ少年の祖父が「お礼に」と渡してきた高価な日本酒であった。
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