[過去ﾛｸﾞ] 【WHITE ALBUM2】冬馬かずさスレ 砂糖57杯目 [転載禁止]©bbspink.com (505ﾚｽ)
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173: 2015/10/09(金)13:33 ID:rcCCv2pq0(23/53) AAS
・ウィーンの街中
日本人観光客男「えくすきゅーず、みー。どぅー、ゆーのう…」
日本人観光客女「困ったね。英語通じないね」
春希「（あれは観光客か。かずさ以外から日本語を聞くのも久々だな。助けてやるか）こんにちは。何かお困りですか？」
男「おお！ 日本人ですか？ 助かります」
男「ありがとうございました。助かりました。私はこれこれこういう者です」
春希「そうですか。俺は、…。ところで、『冬馬かずさ』という名前をご存知ですか？」
男「いえ」
女「（スマホをいじりつつ）あっ。ピアニストの人ですね。数年前、前回のジョバンニで賞を取った」
春希「そうですそうです。自分はその冬馬かずさのマネージャーなんですよ」
省9
174: 2015/10/09(金)13:34 ID:rcCCv2pq0(24/53) AAS
・ウィーン
春希「そういえば、こないだフリューゲル氏について聞かれたけど、あのおじいさんって、今はどうしているんだ？」
かずさ「知らない。引退しているし」
春希「たまには会いに行ってみたらどうだ」
かずさ「不肖の弟子を見て体調悪くされても事だからやめとく」
春希「不肖の弟子かはともかく、会うだけでも喜ぶんじゃないか？」
かずさ「いや、弾いてみせろなんて事になっても困るしな」
春希「そうかな？ 曜子さんはどう言ってる？」
かずさ「あのじいさんももう年だし、新しい師匠探したほうがいいってさ」
春希「そうか…」
省11
175: 2015/10/09(金)13:35 ID:rcCCv2pq0(25/53) AAS
・フランクフルト
春希「ありがとうございます。その条件で」
音楽祭興行主「良いけどね。他のピアニストもいる中で２曲だけだから、交通費と宿泊費で飛ぶようなギャラしか出ないけど、いいのかい？」
春希「いいです。こちらも次の仕事につながる事を期待してのこの仕事なので」
興行主「あっそ。自信あるんだねぇ」
春希「？」
興行主「まあ、頑張ってください」
春希「はい」
・国際電話
曜子「そう。私がこれだけ頼んでもダメ？」
省26
176: 2015/10/09(金)13:35 ID:rcCCv2pq0(26/53) AAS
・フランクフルト。演奏後、控え室
ガシャン！ パリン！
春希「なんだ！？ なんで荒れてるんだ！？」
かずさ「どうもこうもあるか！ 大恥だ！ なんだ！ あの流れは！？ なんだ！ あのピアノは！？」
春希「なんだ、って…」
かずさ「ああいう膜がかぶりまくったようなピアノは大の苦手なんだよ！」
春希「（知らなかったし、膜がかぶったピアノってなんだ？）ま、まあ。演奏がうまくいかなかったくらいで荒れるなよ。よくあることじゃないか」
かずさ「それだけじゃない！ ピアノもあたしの曲にだけ合ってないんだ！ おまけに、前の奴らからの口上も！」
春希「な？ 何かおかしなところあったか？」
かずさ「あの皮肉もわからなかったのか！？ 明らかにあたしをコケにしているんだよ！」
省16
177: 2015/10/09(金)13:36 ID:rcCCv2pq0(27/53) AAS
・日本。曜子自宅
曜子「な、何よ。この記事は・・・何があったの！？」
プルルル
曜子「国際電話？ はい、もしもし。はい、おひさしぶり。こないだの話は考えてくれた？
なんですって！？ 協力できない？ あんな娘はゴメンだって？ 私の娘をあなた、って、聞いてるの？
くっ。切ったわね。私がこんな体でなければ」
美代子「ダメです！ 社長！ お身体に障ります。落ち着いてください」
曜子「そっちにあった連絡は？」
美代子「・・・」
曜子「・・・みんな私の娘はお断りってワケね。はは、はは」
省17
178: 2015/10/09(金)13:38 ID:rcCCv2pq0(28/53) AAS
・病院
小男「倒れたって聞いたけど、大丈夫そうだね」
曜子「日本に来てたのね。よくもぬけぬけと私の前に顔が出せたモノね」
小男「ボク、何か悪いコトした？」
曜子「あなたがかずさにちょっとでも期待してるフリしてくれれば、あんな陰険なマネかます連中も出なかったでしょうよ」
小男「ボクはむしろキミこそ何やってんだと思ってたケドね」
曜子「何よ。こっちはこのとおり、仕方なかったのよ」
小男「そうかい？ じゃあ聞くけど、キミは彼女たちにどうあって欲しいと願っていたんだい？」
曜子「どうって？」
小男「ボクがキミならドンとデカい公演や共演かまして、フランスのおばちゃんあたり師匠につけてメキメキ経験と力つけさせて世界に通用するコに育てるケドね」
省27
179: 2015/10/09(金)13:39 ID:rcCCv2pq0(29/53) AAS
・国際電話
麻理「北原。大変なようだな」
春希「ええ。古巣にまでさらし上げられて踏んだり蹴ったりですよ。後足で砂をかけるようなマネをして飛び出した俺の自業自得なんでしょうが」
麻理「仕方あるまい。あれだけテレビにまで広がったネタに黙ったままだとさすがに『開桜社は冬馬曜子オフィスに弱みを握られている』と疑われるからな。
これでも私が抑えさせた。北原や小木曽さんの件まで暴露に走ろうとした動きもあったからな」
春希「下品にやるときは徹底的に下品に、ですね。怨みはしません」
麻理「だが、小木曽さんやアンサンブルの編集長やグラフの皆も心を痛めている。お前のプロデュースする冬馬かずさが『日本の恥』として挙げられてしまった訳だからな」
春希「別に聖人君子気取った商売してるワケじゃありません。世界は広いですから、まだ幾らでも流れる水辺はあります。俺なら、かずさを何処へでも連れていけますから」
麻理「待て。やはり言っておかなければな」
春希「何ですか？」
省16
180: 2015/10/09(金)13:39 ID:rcCCv2pq0(30/53) AAS
・日本、開桜社
麻理「すいません。お力にはなれませんでした」
小男「いや、ボクも無理な願いを聞いてもらっている立場だしね。元上司のキミでもダメなら誰でもダメだろうなあ」
麻理「いえ。しかし、ウィーンでの協力はこれで無しですか？」
小男「そうだね。彼らもウィーンにコネや友人があったり、執着したりしているわけではないからね。キミの提案に向こうが乗ってくるようなら、ボクの方も考えたケドね」
麻理「やっぱりまだ怒ってらっしゃるので？」
小男「当たり前だよ。久しぶりに会ったのに編集長ときたらあんなにしょぼくれてしまっていて。しかも、あの旦那さんときたら、まだ日本の誰にも謝ってないそうじゃないか。自ら出向いたキミを除いて。
ボクはそういう礼に欠ける男だけはホント許せないからね」
麻理「でも、冬馬かずさまでが悪いわけではないのでしょう？」
小男「それはまた別だね。でも、旦那さんに囲われて誰にも会ってくれないからね。演奏の不安定さの方はおいておくとしても。
省20
181: 2015/10/09(金)13:41 ID:rcCCv2pq0(31/53) AAS
・ウィーン
ぴんぽーん
春希「う、かずさ。ちょっと待て。お客さんだ」
かずさ「は、はあ。どうせ、マスコミだろ。居留守しろ」
春希「一応確認する」
春希「！！ ま、まずい！ かずさ、終わりだ。着替えて部屋にいてくれ。あの方だ」
かずさ「春希、ひどい。途中だぞ！」
春希「すいません。玄関先で長らくお待たせして」
小男「いや、こちらもいろいろ忙しいところに、昼間からアポなしで訪ねて悪かったね」
春希「（何してたかモロバレだな、これは）いえ。おかげさまで仕事も無く暇ですよ」
省34
182: 2015/10/09(金)13:42 ID:rcCCv2pq0(32/53) AAS
・ワルシャワ
かずさ 「ここが新しいオフィスか。街の雰囲気も静かで良かったし、引越してよかったな」
春希 「まあな（かずさがウィーン以外で唯一独りで過ごしたことのある街だしな）」
かずさ「さて、引越しも終わったし、ゆっくりやるか」
春希「荷解きくらいさせろよ」
かずさ「急いで事務所を開けても仕事が入るわけでもなし。さあ、春希（ごそごそ）」
春希「わかったよ（ごそごそ）」
ぴんぽーん
記者「ガゼッタ・ベイナスコ誌の者ですけど、取材できますか？」
かずさ「な、なんで！？ なんで引っ越し初日に住所がマスコミに割れてるんだよ！」
省3
183: 2015/10/09(金)13:43 ID:rcCCv2pq0(33/53) AAS
・ワルシャワ
春希 「（悪い噂が広まってしまったせいで仕事減ってきたな）なあ、かずさ。しばらく営業で帰らないよ」
かずさ 「歩き回れば仕事が降ってくるわけでもなし、交通費がもったいないから営業もほどほどにしろ。
それに、最近は帰っても語学の勉強でロクにあたしの相手をしてくれないじゃないか」
春希 「仕事が軌道に乗るまでの辛抱だろ」
かずさ 「別に仕事を選ぶ必要はないぞ。コンサートでなくても、演奏の仕事ならなんでもいいからとって、早く帰ってこい」
春希 「そうは言ってもな」
かずさ 「全くないのか？」
春希 「無いことはないが」
かずさ 「ならその仕事を持って来い」
省14
184: 2015/10/09(金)13:44 ID:rcCCv2pq0(34/53) AAS
・クラクフ
春希 「そんなわけで、誰が悪い噂流してるのか解りませんが、ほとほと困り果ててます。もちろん、確かに一部事実のところはありますが、その何倍もひどい噂が流れてまして。
まるで、誰かが自分やかずさのことを憎んで中傷に精を出しているんじゃないかと疑いたくなりますよ」
・日本
朋 「はっくしょん！ はっくしょん！」
ＡＤ 「カット。いまの説明の最初からもう一度お願いします」
朋 「はーい。すいません」
・再びクラクフ
省11
185: 2015/10/09(金)13:44 ID:rcCCv2pq0(35/53) AAS
・国際電話
曜子「あなたがかずさを説き伏せて何とかすればいいだけでしょ。お預けくらわせれば３日も経たずいいなりになるでしょう」
春希「そんなのでかずさのモチベーションが上がるとは思えません。不真面目な態度で接すれば師匠を迎えてもうまくいかないでしょう」
曜子「難しいわね。あなたがいない時期はひたすら貴方のために従順にピアノを弾いていたのに」
春希「今でも俺のために俺の前で弾いてくれていますよ」
曜子「なにそれ。のろけ？ 若い子はうらやましいわね」
春希「違いますよ。ただ…」
曜子「ただ？」
春希「こないだ、ウィーンを出る間際に例の方が来て…」
曜子「何！？ あのチビじじい来たの！？ 何か言った！？」
省14
186: 2015/10/09(金)13:48 ID:rcCCv2pq0(36/53) AAS
・ワルシャワの街中
春希「たまには街歩きもいいだろ？」
かずさ「たまにはな。別に横に春希がいれば家の中でも外でもどこでもいい」
春希「あの人溜まりはなんだろうな？」
かずさ「何だろうな？ …う！？」
春希「（結婚式か。派手ではないけど友人たちが手作りで仕上げたガーデンウェディングといった感じだな）」
花嫁友人たち「結婚おめでとう！ お幸せに！」
花婿友人たち「おめでとう！ これはお祝いだ」
春希「（おや？ 楽器を出して…余興の演奏かな）ポーランドの人達って本当に音楽が好きだな。…って、かずさ！？」
かずさ「嫌だ…」
省13
187: 2015/10/09(金)13:49 ID:rcCCv2pq0(37/53) AAS
・自宅
春希「いったいどうしたっていうんだ？ かずさ。危なかったぞ」
かずさ「…春希はあれが平気なのか。そうか。いいな。
あたしは勘弁だよ。あんな幸せそうな光景見るだけでイヤになる」
春希「人の結婚式なんだからどうでもいいだろ？」
かずさ「春希は平気なんだな。こないだもあたしのウェディングドレスさえ見られればどうでもよかったんだろ」
春希「ウェディングドレスさえ着られればどうでもいいって言ってたのはかずさだろ？ だから曜子さんも遠慮してあんな慎ましい式にしてくれたんじゃないか」
かずさ「春希…まさか、あたしが結婚式に興味がないからそういうふうに言っていたと思ってたのか？」
春希「興味がないって…実際、嫌がっていたじゃないか」
かずさ「うう…春希だけはわかってくれていると思ったのに。あたしだって女だぞ」
省22
188: 2015/10/09(金)13:49 ID:rcCCv2pq0(38/53) AAS
・国際電話
春希「そんなわけで、かずさはもうひと月近く機嫌直してくれません」
曜子「あらまあ。それは溜まりまくってたいへんね」
春希「からかわないで下さい。元はと言えば曜子さんが結婚式にサプライズで雪菜たち呼んだりするからこんな事になったんですから」
曜子「あらあら？ 人のせい？ ギター君はそんな子じゃないと思ってたのに。私、やっぱり男を見る目がないのね。義母さん悲しいわ」
春希「曜子さんは人を見る目が無さ過ぎです。雪菜が音楽室に入ってきたあの時は俺だって穴があったら入りたい気分になりましたよ。かずさがああならずとも」
曜子「うーん。うまくいくと思ったのになあ」
春希「何を根拠にですか。あそこでかずさが滂沱の涙流して喜んでありがとうと返してくれると？
そんなことが起こったら俺はまずかずさがどこかですり替えられていないか疑いますね。俺には上手く行く筋道が全く見えません」
曜子「ほら、あのね。ド素人のあなたがたった２年ちょっとでドイツ語ペラペラになって、ちょっと知識足らないけど根性と口先だけはいっぱしのマネージャーになってくれたし。私も体調良くなって、ちょっと治療薬休めば酒も飲めて食欲も戻せるくらいに回復してね。
省6
189: 2015/10/09(金)13:50 ID:rcCCv2pq0(39/53) AAS
・ワルシャワの自宅
春希「（今日も引きこもったまま出てこないな。土曜日だというのに。もっとも、仕事もないのに曜日は関係ないか）」
春希「かずさ。今日は機嫌直して外に出てみてくれないか？」
かずさ「…中に来い」
春希「（部屋の中に入れてくれただけでも一歩進展か）ありがとう。入るよ」
春希「？ 窓から何を見ているんだ？」
窓から見える人集り「おめでとう！」「みんなありがとう！」
春希「（！ あの結婚式やってたチャペル横、この部屋から見えるのか…これはまいった）か、かずさ？」
かずさ「週末には毎週毎週、こうやって新たな奴らが祝福されてるよ。幸せな奴らって似たり寄ったりだよな」
春希「（なんか様子がおかしいが、話は合わせておこう）あ、ああ、そうだな」
省6
190: 2015/10/09(金)13:57 ID:rcCCv2pq0(40/53) AAS
．ワルシャワ、かずさ自室
かずさ「ほら。見てみろ、春希。いつもの広場でお祭りがやっているよ」
春希「（これは機嫌がいいのかな？）楽しそうだな。行ってみるか？」
かずさ「やめておくよ。何の祭りか解らないし。せめて英語が話せたらな」
春希「俺が話せるさ」
かずさ「解ってないな。そんな状態で行っても却ってみじめな思いするだけさ。こうして冷えたワイン片手に見ているだけで十分さ。
あそこの男女グループなんて、さっきからずっとあの馬鹿騒ぎっぷり。こうして離れた場所から見ている分にはいいが、近くにいて巻き込まれたらイヤだし、どうせしょうもない理由も解ってしまった方が興ざめだ」
春希「そう、かもな。
しかし、色々な結構色々な国の人がいるぞ。あのグループは日本人かな？」
かずさ「春希は耳が悪いな。しゃべっている言葉はどう聞いても日本語じゃない。…でも、なんだか、真ん中の酔っ払ってる女性、なんだか誰かに似てるな」
省7
191: 2015/10/09(金)13:58 ID:rcCCv2pq0(41/53) AAS
・ワルシャワ
かずさ「今日は雨だな。外に行く気にもなれない」
春希「出る気も無いくせに」
かずさ「仕事があれば出るぞ」
春希「はいはい。仕事が降ってきたら出ような」
かずさ「ああ。仕事が降ってきたらな」
ぴんぽーん
春希「客か。はーい」
牧師「どうも、始めまして。私はそこのチャペルの牧師です。 とうまかずささんいますか 」
春希「はい！？ いますけど。俺がマネージャーですが、何か？」
省10
192: 2015/10/09(金)13:59 ID:rcCCv2pq0(42/53) AAS
・結婚式後、チャペル裏の事務所
牧師「素晴らしい演奏でした。参列者の皆も驚いていましたよ」
春希「（汗）いえ、こちらも慣れない仕事に汗顔の至りで」
牧師「私も知らない事とはいえ、ジョバンニコンクール４位のピアニストにこんな仕事をお願いしてすいませんでした」
春希「いえ。ご迷惑かけたのはこちらの方で」
牧師「大丈夫ですよ。皆さんも最初は困惑していましたが、最後には嬉しいサプライズと思っていただけたようですから」
春希「すいません。かずさにもキツく言っておきます」
・自宅
春希「かずさ！ 今日の演奏はどういうつもりだ！」
かずさ「どうって、言われた曲を弾いただけだが。ついでに言うと、ここ最近で一番の演奏ができたな」
省8
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