[過去ログ] ToHeart2 SS専用スレ 4 (717レス)
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710: 11/13 言葉はいらない その7 2005/03/26(土)14:25 ID:a2PjcpUA0(2/4) AAS
 ――――――。
 ――昨夜――。
 ――――――。

「センパイ、眉間に皺が寄ってるッスよ」
 いつの間にか目の前にやってきてたよっちの指先がちょんと俺の眉間をつつく。その感触を追うと、よっち
と目があった。ドクンと心臓が跳ねる。
 そんな俺の動揺を知ってか知らずか、よっちは俺の隣にストンと腰を下ろすと、甘えたように腕にしがみつ
いてきた。その柔らかさにカッと体が熱くなる。な、なあ、誰か俺に腕にしがみつかれたときに、その腕の指
先をどう扱えばいいのか教えてくれ。腕を動かすとよっちの柔らかさを再確認してしまうだけのような気がし
て、俺は不自然な形のまま右腕をピクリとも動かせずにいる。
「センパイ……」
 呼びかけられてよっちを見ると、よっちはこっちを見ずに軽く目を閉じていた。
「なに?」
「センパイ……。センパイ……。あたしのセンパイ……」
 噛み締めるように一語、一語、よっちは繰り返す。
 ぎゅっと腕を抱く手に力が込められる。
 その声は、言葉は、感触はとろけるような甘みを持って俺の脳髄から神経の末端までをあっという間に侵
し尽くした。抗いがたい甘い誘惑――。
 それに身を委ねてしまえばどんなに甘美だろう。
 けれど、その甘い果実はもうすぐ遠いところに、行って、しまうのだ。
「……センパイが何も言ってくれなくても、あたしはあたしを振り解かないセンパイの腕を信じてる」
 ――いなくなる。
 そう思ったとき、右手が動いた。
 それはもう自分でも信じられないような勢いで、絡みつくよっちを振り解いた。
「えっ……」
 びっくりした顔で、大きく目を見開いて、よっちは固まってしまっている。
 胸の奥がぎゅっと締め付けられる。違う、そんな顔をさせたかったんじゃない。
「……よっち、今夜はもうおやすみ。客間の押入れにまだ予備の布団があるはずだから……」
 違う、こんなことを言いたいんじゃない。
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