[過去ログ] ToHeart2 SS専用スレ 4 (717レス)
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37: 1/9 ただ心だけが 最終話 05/02/17 20:34 ID:ssNEva170(2/12) AAS
 病院から帰ってくると、もう部屋に春乃はいなかった。代わりにテーブルの上に一枚の紙片。
 ――明日の準備のために帰ります。ほんの一週間程でしたが、幸せでした。ありがとうございました。
 それは春乃からの置手紙。一番の当事者であるはずの春乃が、明日どうなるかを知らないというのは奇
妙な感覚だった。もう何の温もりも残していないベッドに腰掛ける。
 それから顔でも洗おうと洗面所に向かったつもりが気がつくと雄二は環の部屋の前に居た。何故かは分
からない。ノックをしようとしていた手を下ろす。踵を返して自分の部屋に戻ろうとしたとき、ドアのほうが先に
開いた。
「……雄二?」
 環がすこしだけ心配そうに首を傾げる。
「風邪はもう大丈夫なの?」
「あ、ああ……あのな、姉貴……」
 なぜか言葉が出なかった。環はこの件で雄二にずっと協力してくれていた。だから事の顛末くらいはちゃ
んと話しておくべきだと思う。それなのに父親を相手にしていたときのような強気な自分は影を潜めてしま
う。環は雄二のことをいつだって頼りない弟としてしか見てくれないから。だから弱気になってしまうのだ。
 ふわっと暖かい温もりが雄二を包んだ。
「よしよし」
 頭を撫でられる。いつもならばバカにすんなよと虚勢を張っていただろう。だけど……。
「何も言わなくていいわ。分かってるから……何も言わなくていいのよ」
 優しい声でそう言われたとき、どっと堪えてきたものが堰を切ったようにあふれ出してしまう。
「……姉貴、俺、間違ってたのかな?」
 ほとんど言葉にならない。視界が歪んで、ぼろぼろと熱い塊が頬を滑り落ちていく。
「ううん。よく頑張ったね。雄二は正しいことをしたのよ。お姉ちゃんはちゃんと分かってるからね」
 無条件の肯定に包まれて、雄二はその暖かい胸に顔を埋めて泣いた。
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