[過去ログ] ガンダムヒロインズMARK ??I (152レス)
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142: フェニックステイル第39話 03/10(日)14:03 ID:O+JwS4S5(1/10) AAS
投下します。
今回もエロ無しです。
143: フェニックステイル第39話 03/10(日)14:08 ID:O+JwS4S5(2/10) AAS
 P−04中心岩体の港口から、1隻のジャンク回収船が出港した。
 虚空に敷かれた誘導灯の連なりに導かれながら、やや太短いずんぐりとした船体が緩やかに進行していく。その全長は100メートルに満たない。
 遠洋型のジャンク回収船としては小型の部類に当たるが、境界漁民の母船としては一般的なものだ。パイソン級宇宙貨物船90メートル型――俗にパイソン90と呼ばれる船級だった。
 パイソン級貨物船は宇宙世紀の地球圏における、小型〜中型民生用宇宙船のベストセラーである。
 その船体構造は、まず船首部に船の頭脳たる船橋(ブリッジ)と着岸腕に推進補機をまとめ、その後ろに貨物船の命である船倉部を繋げつつ、船尾に主推進機一式を置いて締める。
 各主要コンポーネントを一直線に繋いだシンプルな構成だ。平面基調の船体外板は貨物コンテナ等の外付け繋留にも標準仕様のまま対応する。
 パイソン級は月面上を含む多彩な領域での運行に対応しており、顧客の多様なニーズに応じて機関の換装から船倉部の延長・短縮に至るまで変更可能な柔軟性を有していた。
 その普及度とカスタマイズ性の高さから、連邦軍の艦艇乗員たちからはパイソン級をして『民船界のサラミス』とまで称する声もある。
 ――もっとも、宇宙戦闘艦としては間違いなく最多の生産数を誇るサラミス級をもってしても、その生産数の面ではパイソン級にはかなうはずもないのだが。
 パイソン級の姿はどこか大蛇を思わせるが、パイソン90はその中でもかなり小型の構成だ。船倉部の全長は50メートル程度とやや短く、それも外観に寸詰まりでユーモラスな雰囲気を加えていた。
省15
144: フェニックステイル第39話 03/10(日)14:09 ID:O+JwS4S5(3/10) AAS
 この船倉区画、なにしろ高さの方も20メートルに遠く満たず、MSは直立できない。さらにMSベッドも無いので、そのままでは駐機時の機体固定も厳しかった。
 だから機体が無人の間に船が急な加減速でも掛けたら、MSが船内を転げ回りかねない――そこまでの事情は、この4機に乗る4人の女性パイロットたちも事前に聞かされていた。
 4機は同機種同士が隣り合うかたちで2機ずつ2列になり、両膝を床面に付けて座り込むような姿勢で着座した。幸いなことに側壁にはMS対応規格らしきグリップがあり、脚部の電磁石以外にもそこを掴むことで機体を固定することが出来た。
 持ち込んできたビームライフルやザクマシンガン改は右手に握りこんだまま、盾も左腕に付けたまま。アイネ機が左手に提げて持参した予備の兵装や弾薬、部品入りのキャリーケースは、電磁石ユニットで壁面に固定した。
「とりあえず、これで良し……か」
『各員、異常なければ降機。船橋に集合』
「了解」
 臨時編成の4機を率いる、いつも不機嫌そうな栗毛の美女、カリナ・ベルトラン軍曹からの通信に応答して、アイネ・クライネ伍長は真空の船倉へとコクピット・ハッチを開いた。
 同乗していたマリエル・エイムズ軍曹とともにハッチの枠を力強く手押しし、その反動で『ダーウィン』の床へと降り立つ。
『クシナダ作戦』のため、『ダーウィン』へ送り込まれた5人の女性軍人が船倉内に揃ったのを見届けると、カリナは鷹揚にヘルメットの顎で船橋方向を示した。
省15
145: フェニックステイル第39話 03/10(日)14:11 ID:O+JwS4S5(4/10) AAS
 RGM−79、いわゆる『ジム』には一年戦争以来、大きく4種の基本系列が存在する。アイネたちはそう教えられてきた。
 まず、もっとも生産数が多く、連邦軍あるところほとんどどこでも見かけられる『標準型』。
『A』や『B』のサブタイプを持ち、のちに近代化改修されて今アイネたちが乗るRGM−79R『ジム?』となった系列だ。
『標準型』は地球系のサプライチェーンを用いてルナツーやジャブローで量産されたもので、今なお『R』型の新造が大々的に続いている。
 新興の連邦軍特殊部隊『ティターンズ』でも『RMS−179』の型式番号で採用され、独自の拠点で量産されているらしい。
 もう一つが『C』のサブタイプを持つ、『改型』あるいは『月面型』とも呼ばれる系列。『標準型』に次いで生産数が多い。
 一年戦争中に連邦軍のV作戦に参入したアナハイム・エレクトロニクスを中心とする月面系企業群が、独自のサプライチェーンで標準型と同等の基本仕様を満たしつつ、
独自要素も盛り込んで製造したものだ。
『改型』は一年戦争末期から連邦軍MS閥によって高い評価を獲得し、一時は『標準型』を押し退けて連邦軍第一線MS隊の主力機になるほどの勢いだったという。
 しかしその後、当のMS閥が失脚。連邦軍と月面系企業群との関係も大きく修正されると、『改型』の導入も一気に失速していった。以降『改型』は第二線級部隊に追いやられ、
省18
146: フェニックステイル第39話 03/10(日)14:12 ID:O+JwS4S5(5/10) AAS
『どしたんすか?』
 アイネとシエルが足を止めて謎のジム風MSを凝視していると、さっきの誘導係がにゅっと顔を出してきた。
 バイザーの向こうの浅黒いボーイッシュな顔立ちの中に、くりっとした大きな瞳がかわいらしくこちらを見ている。
 とりあえず、聞いてみることにした。
「これ、ジムなんですか?」
『あー、らしいっすね。ウチの会社は連邦軍から委託された地上事業で、これの同型ジャンクをたくさん回収してるんすよ。
 一年戦争のとき連邦の地上軍が『標準型』の配備を待てずに先走って、独自規格で勝手に作ったジムがあるらしいんすけど、こいつらがそれだって言ってました。
 んで、こいつは社長が何年か前に、南アジアの山ん中から掘り出してきた奴らしいっす』
『……そういえば、なんか聞いたことあるなその話。確か『陸戦型ジム』とかってやつじゃなかったっけ。今はもう、地上軍でもあらかた退役してるとか……』
「やっぱり、一応ジムなんだ……そんなのあったのか。でも、『陸戦型』?」
省16
147: フェニックステイル第39話 03/10(日)14:14 ID:O+JwS4S5(6/10) AAS
「スリーセブンだ! 縁起のいい機体なんだねっ」
『あー。それ山ん中から発掘したとき、そこの数字の『7』ひとつだけ掠れてギリなんとか読めたらしいんすよね。
 なんか縁起悪そうで嫌だったから、あと二つ足して『777』にして誤魔化したって言ってました』
「…………」
 からからから、と少女は笑う。
 聞かなければよかった。つまり、以前この機体に乗っていたパイロットは……。
『そこの二人、いつまで油を売ってるつもり? いい加減に行くよ』
 無線で呼ばれて顔を上げれば、カリナが腰に手を当てながら不機嫌そうにふんぞり返っていた。
 その傍らでアイネとシエルのMSパイロット訓練生課程の同期、ニノン・ルクレール伍長が口元に手をやってくすくす笑っている。マリエルも呆れていた。
「は、はいっ」
省25
148: フェニックステイル第39話 03/10(日)14:15 ID:O+JwS4S5(7/10) AAS
 カリナ、マリエル、ニノン、シエル、そしてアイネまでの軍人5人を冷たい瞳でさっと一瞥した後、彼女は進み出ながら、はっ、と一息吐き捨てて一礼する。
「この度はご協力まことにありがとうございます。アレント廃品回収社社長、フィオ・アレントです」
「クシナダ任務部隊指揮官、カリナ・ベルトラン軍曹。よろしく。――このまま彼女たちに、作戦内容を説明しても?」
「ふむ?」
 手短な挨拶を終えると、カリナは船上の最上位者たる船長席上のクレアを仰ぐ。船長から制止されないと見るや、口頭だけでそのまま続けた。
「作戦はシンプル。期間は最大7日間。『ダーウィン』はこのまま船長計画の隠密航行で、境界宙域の『宝船』とやらへ向かう。
 首尾よく接触できたら、あなたたちは回収に行く。その途中で『亡霊』が現れたら、それまで『ダーウィン』に隠れていた私たちが飛び出して、一気に『亡霊』を仕留める。
 騒ぎに感づいたルスランの連中が沸いてくる前に、さっさと引き揚げて帰る。それだけ。以上」
 ――いやいや、ぜんぜん『シンプル』なんかじゃないでしょ。
 カリナの大雑把すぎる説明を聞きながら顔を引きつらせ、アイネは改めて認識する。
省21
149: フェニックステイル第39話 03/10(日)14:16 ID:O+JwS4S5(8/10) AAS
「……そこは、あんたらの手際次第ね」
「はぁ? あたしたちが自分で出来れば、ぜんぶ出来るに決まってるでしょ。やる気無さそうなオバサン連中が問題なのよ。何ならあたしたちのボールとあんたらのMSを交換してみなさいよ。あたしたちだったら絶対ヘマせず全部やり遂げてみせるから」
「…………」
「いや、自分はやっぱりMSよりボールの方がいいッス。一球入魂、ボールですべてやり遂げてみせるのが真のプロボウラー(職業ボール操縦士)ッス」
 カリナとフィオの対決があっという間に白熱しすぎて、まったく空気を読まずに発されたアシュリーの発言は誰の耳にも入らなかった。
 アイネの背中に、嫌な汗がびっしりと浮かぶのを感じた。
「あ、この船のシステムってこうなってるんだー。へー。ふーん。どう、大変?」
「え……? え、ええ……」
 ニノンは何も聞こえていないように、船橋コンソール群の表示を興味深そうに観察する体を装いながら、船橋前列に座る女性オペレータ2人の片割れに話しかける。
 ニノンに話しかけられた女性オペレータはひやひやと後ろの様子に聞き耳を立てていたが、よく見るともう片方は船を漕いで――寝ていた。
省16
150: フェニックステイル第39話 03/10(日)14:18 ID:O+JwS4S5(9/10) AAS
 アイネはマリエルの傍らで強烈な帰りたさに襲われながら、そのみずみずしい美貌に激昂を宿すフィオに視線を戻した。
「『亡霊』は潰す。『宝船』も獲る。そして『全員で生還する』。『全部』やんなくちゃなんないのよ。ふざけんなよ。あんたらみたいに何のやる気もない雑な軍人どものせいで、……ナイアは……。あたしたちはこれ以上、もう……誰も、失えないのに」
 アイネの知らない誰かの名を呼んだあと、ぎりっ、とフィオがきつく歯噛みする。一瞬俯いたその目に光る何かを見た気がして、アイネははっと息を呑んだ。
 フィオが再びカリナを睨み上げ、真正面から啖呵を切る。
「テキトーにあたしたちだけ『餌』にして、『亡霊』だけ殺って帰ればハイ終わり、なんて安直な、漁の邪魔にしかならないクソ軍人どもなら……さっさとこの船下りて今すぐ帰れ、って言ってんのよ!」
「こ、……こんの、クソガ――」
「や、やばいよフィオぉ。謝ろ? ね? 今からでも謝ろ??」
「お、お姉ちゃあん!!」
 いよいよ青筋を立てながら目を剥いたカリナが、フィオへと半歩前に出る。顔面蒼白涙目になった豊満なマルミンと小柄なボナが両脇からフィオを守るようにすがりつく中、迫りくるカリナの長身が拳を振りかぶり、いよいよフィオを打ち据えるかと思われたとき――
「大丈夫。それ、私が全部やりますっ!」
省20
151: フェニックステイル第39話投下終了 03/10(日)14:20 ID:O+JwS4S5(10/10) AAS
今回は以上です。
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