ガンダムヒロインズMARK ??I (152レス)
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2: フェニックステイル第31話(承前) 2020/12/01(火)01:34 ID:P3dXRXkh(2/6) AAS
「P−04ってのは、プラント農業とジャンク漁業の町なんだよ――まあ私も、実際に行くのは初めてだけど」
 サラミス改級巡洋艦《トラキア》、MS格納庫――ルウム農協船団護衛MS隊との接触から、一時間前。
 この短期間に数度の実戦を潜り抜け、今また無事に帰還したばかりの艦載機RGM−79R《ジム?》への整備と補給に、整備兵たちが飛び交いながら奔走している。その壁際で、二人の少女兵が飲料を片手に話し込んでいた。
「ルウム戦役の時、ジオンは大量破壊兵器の無差別投入で徹底的にコロニーを破壊したけど、流石に細かいプラント全部までは潰しきれなかった。
 まあ核にも艦砲にも毒ガスにも弾数ってもんがあるし、連邦軍とも戦わなきゃいけなかったからね。
 だからコロニーの住民が全滅した後も、プラントの方には多少の生き残りがいたんだ。
 戦闘後に両軍が撤退してからの数か月後を生き残っていられた人たちを、同郷のルウム難民志願兵を中心に編成されていた、当時のトラキア隊がルナツーから来て助けて回ったらしい」
「ぜんぜん知らなかった……そういうところだったんだ」
「うん。まあこればっかりは、アイネが不勉強ってわけじゃない。私も今の部隊に来るまで、ほとんど知らなかった。このへんの情報、なぜだかほとんど外には出てないみたいだし。――もっと早く、知れていたらなあ」
 シエルが言葉を切ったその一瞬に、アイネは親友の横顔に過ぎる記憶の暗い影を見た。一息の間を見守られた少女はどこか遠くへ視線を投げて、何かを洗い流そうとするように続けた。
「――とにかく、戦中に始まったトラキア隊とプラント難民の協力関係は続いて、戦後には旧ルウム暗礁宙域に拠点を築いていった。
 暗礁宙域に潜伏したジオン残党と戦いながら、食糧難に陥った戦後地球圏への輸出を見越して、再生プラントでの農業を推進したの。そこへ83年の末に起こったのが、北米大陸へのコロニー落下事故。
 あのとき食料相場は狂乱したけど、ちょうど輸出態勢が立ち上がるのを待ってた大量の在庫で介入して、プラント難民組織――『ルウム農協』は財を成した。
 連邦政府の予算無しでも復興事業は軌道に乗るようになって、P−04が築かれた。そしてジオン残党どもが巣食う新サイド4に築かれた、連邦軍の橋頭堡になったってわけ」
「なるほど〜」
 眼鏡の小柄な少女パイロット、シエル・カディス伍長が淡々とMSパイロット候補生時代に同室だった同期生へ向かって語りかけると、相手は気抜けしたような調子で楽し気に頷く。
 シエルはトラキアではなく、第223戦隊の僚艦であるサラミス改級駆逐艦《アルマーズ》MS隊の所属である。
 だがシエル機は先の戦闘で頭部と脚部を失った満身創痍の機体で、戦域離脱時にかろうじてトラキアへ着艦したまま、今も艦外に繋留されている。
 本格的な修理に着手するのは、P−04への入港以降となるだろう。P−04への入港を控えて、パイロットのシエルもそのままトラキアに残されていた。
 そしてシエルの傍らには、そのかつての同期生――アイネ・クライネ伍長が、今は底抜けに幸せそうな――腑抜けたような、とも言えそうなほどに緩んだ表情で、彼女の話に聞き入っている。
 二人がMSパイロット訓練課程を修了してそれぞれの任地へと別れてから、まださほどの日数は経っていない。
 二人がその後のわずかな期間に経験した激しい実戦と、シエルが聞かされたアイネ戦死の「誤報」が心を揺らしても、互いの無事を認め合った後は、あの戦場で見せた互いの動きだけで、すべてを語るに事足りた。
 だから二人の話題は何事もなかったように自然と、世間話の方向へ流れていった。
 現在のトラキアMS格納庫では、アイネとマコト・ハヤカワ准尉のジム?2機、そしてサブリナ・ミケリヤ少尉のジム?キャノンの合わせて3機のMSに対する整備作業が進行している。
 いずれもシエル機と異なり、機体の損傷は小さい。艦外ではゲンナー・ウェズリー少尉のジム・ゲシュレイに率いられて、ロブ・サントス伍長とシュン・カーペンター伍長のジム?が対空警戒に当たっていた。
 アイネも自機の整備が完了し次第、次の指揮官となるサブリナとともに機体ごと出て、対空警戒を交代するになっている。シエルは引き続き待機だ。
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