ガンダムヒロインズMARK ]YI (152レス)
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13: フェニックステイル第32話 2021/02/28(日)22:11 ID:G2Yl2B1i(5/9) AAS
 タニアがソギルの言葉を継いだ。
「現在までに、この新サイド4暗礁宙域から地球圏の各地へと、ジオン系MSの密輸が十件近く確認されています。
 今までに押収・確認されている密輸MSの多くはザク?F3のような新型機ではなく、ザク?F型やF2型といった旧型機が中心ですが、そのほとんどがジオン本国での製造記録を持たないものです。
 旧ジオニック社の正規品ではない、デッド・コピーのレプリカMS――形態は不明ながら、ルスラン・フリートは独自にMSを開発し、一定規模での新規生産を行うだけの能力を有している。そう結論せざるを得ません」
「…………」
 リードがそのまま押し黙る。一年戦争後にも決して絶えることのない「ジオン残党軍」の脅威。旧ジオン公国軍の人員と装備だけではなく、戦後に生産されたレプリカMSがその戦列に加わっている、との噂話は連邦軍でも絶えることがなかった。
 だがこれは、規模の桁が違い過ぎる。かつてのデラーズ・フリートですら、少なくともMS隊の物量はこの水準には遥かに及ばなかったのだ。
 一方でリドリー・フランクス大尉とジャクソン・ヘイズ大尉の二人は溜息を吐きながらも、静かに現実を受け入れていた。
 これらの情報の大半はすでに、パブリク改級哨戒艇で任務中のトラキアへの合流を敢行したサブリナによって密かに、そして細部に至るまで、長くP−04から離れていたトラキアとアルマーズへ伝えられていたものだった。
 トラキア隊にとって今回のブリーフィングは、入手可能なあらゆる情報資料を収集・分析しうる上級司令部から公式に与えられる情報とそれらの「答え合わせ」と、今後、自分たちがそれらを知っていることをどこまで公言できるのか、を測るためのものに過ぎない。
「敵さん相変わらず、絵に描いたように見事な待ち伏せだねえ。教範に載せてやりたいよ」
「ですがサブリナも相変わらずいい仕事をしています。悪いのは男癖だけではないらしい」
 他人事のようにリンとマコトが小声で呟くと、隣に立つキーガンは唇を噛んで俯いた。彼もまたルスラン・フリートの旗艦部隊に殲滅されていった450戦隊のエース部隊と同様、ペズンの教導団出身者だったからだ。
「し、しかし――いくらなんでも、これほどの戦力差など前代未聞です。一年前にヨランダ・ウォレン准将が自ら率いてこられた大規模な増援を受け、今や我が新サイド4駐留艦隊の勢力はかつての比ではないほど充実しております。
 だというのに敵は、かつてのデラーズ・フリートに数倍するMS戦力を整備してきた。……一体どうやって……? ま、まさか。エゥーゴ? エゥーゴを支援しているという月のアナハイム・エレクトロニクスが、奴らに500機の大MS部隊を提供したのかっ!?」
「アナハイムも、そこまで暇ではないと思いますが……」
「とにかくっ! 現状は、まさに危機的状況です! すでに事態は、我が新サイド4駐留艦隊のみで対処できる範疇を大きく超えつつあります! 増援を……ティターンズが約束したという増援部隊の、さらに大幅な増強を要請しなければ!」
「心配はご無用。ティターンズはすでに、一騎当千の『特殊部隊』の派遣を確約しました」
 戦闘記録映像を含む豊富な資料で作られた発表で取り乱すリードに、タニアが明言した。マコトが後列で眉を動かす。
「ほお――」
 一騎当千。タニアが口にした景気のいい言葉に、マコトは七年前のア・バオア・クーで遥か遠方に見た、狂奔し絡み合う閃光の渦を思い出す。
 噂では聞いていた。あの伝説に匹敵するニュータイプ兵を人工的に育成し、同時にその異能に相応しい超兵器を開発しようとする試みのことは。
「ニュータイプ研究所」なる怪しげな組織が地球圏にいくつも乱立し、戦災復興を最大の課題とする戦後世界で多額の予算を獲得しながらこの宇宙にも跋扈していることは、マコトもとうに知っていた。
 ティターンズがその幾つかを抱き込みにかかっていること。そしてルスラン・フリート側もその幾つかを攻撃し、どうやら殲滅に成功しているらしいということも。
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