ガンダムヒロインズMARK ]YI (152レス)
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10: フェニックステイル第32話 2021/02/28(日)22:07 ID:G2Yl2B1i(2/9) AAS
「――以上をもちまして、『トラキア』からの状況報告を終了いたします」
 サラミス改級巡洋艦『トラキア』艦長リドリー・フランクス大尉が急拵えの資料で報告を終えても、新サイド4暗礁宙域に設けられた地球連邦軍要塞拠点『P−04』内部の作戦会議室は静けさを保っていた。
 前列の席に着くのはつい今し方P−04へ到着し下艦したばかりの、トラキアが属する第223戦隊の主要士官たち。戦隊司令リード中佐、旗艦『マカッサル』艦長カミラ少佐、その僚艦であるサラミス改級駆逐艦『アルマーズ』艦長ヘイズ大尉の3人が並ぶ。
 そしてその後方に艦載MS隊長たちが立つ。トラキアのハヤカワ准尉、アルマーズのリンリー少尉、それから不審船を巡る戦闘で壊滅状態に陥ったマカッサルMS隊の生き残りである隊長代理、キーガン少尉。
 もっともリドリーが報告した内容の大半は、すでに第223戦隊の内部ではレーザー通信経由で共有されていたものだった。戦隊側から質問を発する気配はなく、場の意識は会議室前方の最上位者に集中していく。
 室内における最上位者――すなわち、P−04駐留部隊司令官、ユン・ソギル准将。そして新サイド4駐留艦隊副司令ヨランダ・ウォレン准将の懐刀として知られる参謀、タニア・メーティス中佐の2人である。
「ご質問は?」
 微かな緊張を帯びながら、リドリーはソギルへ問いかけた。
「ふむ。ご苦労だった、フランクス大尉。さて……よろしいですな、中佐?」
 ソギルが傍らの黒人系女性士官へ何事かを確認すると、タニアは無言で同意を示した。ソギルがひとり頷くと、前方の大画面がリドリーの資料から切り替わる。
「では今度は、私から諸君らに説明しよう。諸君ら第223戦隊がこのP−04から離れ、外部拠点から新サイド4宙域への哨戒任務に移行して半年。その間にルスラン・フリートは我々の以前の推定を大幅に上回る、劇的な戦力強化を達成していたことが判明した」
 ソギルが手振りで促してリドリーを席へと返しながら画面の前へと歩を進めるや、大画面が再び切り替わって新たな資料を映し出した。
 航路図、部隊編成表、そして望遠の戦闘映像。
「それを明らかにしたのが、この戦闘だ――昨86年12月。P−04に拠点を置く新サイド4駐留艦隊第450戦隊が、巡洋艦1隻と駆逐艦2隻に21機のMS隊を搭載して、戦隊司令の独断でルスラン・フリートが実効支配する宙域――いわゆる『聖域』への侵入を強行した」
「――450戦隊?」
「3ヶ月前……では、やはり、あの噂は――」
 その部隊名と作戦の時期を聞いて、第223戦隊の指揮官たちが静かにざわめく。
 画面上の航路図で部隊符号が動き始めた。同時にその横へ新たな窓が開いて、かなりの望遠で撮ったと思しき戦闘記録映像を流しはじめた。
 450戦隊の3隻がMS隊を展開しつつ、敵宙域へと突進していく。暗礁宙域としてはかなりの速度が出ている。電撃的な侵攻作戦だった。
 そしてRMS−106『ハイザック』を主力としつつ、洗練された機動を見せるRMS−117『ガルバルディβ』の3機小隊を頂点とした21機もの大MS部隊が3隻のサラミス改の周囲と前方に展開していた。
 6機ほどのMS−21F3『ドラッツェF3』から成るルスラン・フリート前哨部隊を一方的に後退させつつ、敵陣深く侵攻していく。
 高機動性を存分に発揮しながら軽快に先頭を切っていくガルバルディβを相手に、ドラッツェF3はまともな抵抗を出来ていない。かろうじて紙一重で背後からの射撃を回避しながら、必死に逃げまどい続けるだけだ。
 それでもドラッツェF3の大推力にはガルバルディβといえども直線では追いつけないが、この暗礁宙域ではそうも行かない。何度も迫られ、危ういところを何度も紙一重でビームを回避する。
 それはもはや戦闘というより、中世貴族の狐狩りのような様相だった。
「第450戦隊はルスラン・フリートの前哨部隊を順調に駆逐しつつ、敵前進拠点を制圧するべく前進を継続した。が、敵はその間に態勢を整えていた」
 敵宙域の奥に、艦影が現れた。
「――マゼラン?」
「いや、艦橋が……では、まさか、あれが――」
 それは連邦宇宙軍の軍人ならば、誰もが見慣れた艨艟の艦影。しかしただ一か所、第一艦橋の形状だけが異なっている。
 巨大な艦体と不釣り合いに小さいそれは、旧ジオン公国軍のムサイ級巡洋艦の第一艦橋に挿げ替えられたものだった。
 ただその一点だけが、見慣れたはずの艦影に不気味な影を落としている。
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