[過去ログ] 【第13号機】新世紀エヴァンゲリオン【第13使徒】 (821レス)
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503: 【安らぎの契約(第20回)(11)】LASキッチー ◆8U.wBEFm.PLF 2015/09/06(日)13:03 ID:2P5xXlrU(4/6) AAS
考えてはいけないことを考えようとしている。
そうアスカは感じる。
(まさか……?まさか)
だが、動き続けえる思考はとめられない。
(そうか……)
数学の授業で方程式を解くように、迷い無くあっという間にその答えを導いてしまう。
「アタシを選んだんじゃない……」
シンプルで残酷な答えを。
「あの娘を選べなかっただけなんだ……」
アスカは自分の中で何かが壊れるのを感じる。
『アスカがいい』
大切にしていた言葉。
たった一つの、自分を支え続けていたあの言葉。
だが、あの言葉には何も意味は無かったのだ。
自分にとっての意味は。

自分は道化だ。
自分が道化であることを知らない道化。
アスカは笑い出す。
腹に溜まったものを吐き出すように笑いが迸る。
「……なぜ笑うの?」
レイが表情一つ変えずに聞いてくる。
「……可笑しいからよ。」
人の感情の分からぬ女。
言葉で説明されないとそんなことも分からないのか。
苛立ちが募る。
そして、レイの次の言葉がさらにアスカの感情を逆なでする。
「なぜ、悲しいのに可笑しいなんて言うの?」
「悲しくなんてないわよ!アタシは!アンタ、何言ってんのよ!?」
半ば怒りをこめて、アスカは吐き捨てる。
「……だって貴女、泣いているもの」
何の感情も含まないレイの言葉が突き刺さり、アスカの思考を止める。
そしてようやくアスカは気づく。
自分の頬をぐっしょりと濡らし、伝い落ちる涙に。
視界が急激にぼやけ、平衡感覚が狂う。
アスカはふらふらと2,3歩後ずさると、その場に崩れ落ちる。
両手をつき、俯いたままアスカは動くことができない。
暗い床に向かって、言葉をぶつける。
「全部……。全部あげたのに」
「ファーストキスも!バージンも!アタシの全部!」
胸の奥にしまいこんでいた想いが吐き出される。
「なのに!……なのに何で!?」
悲痛な叫びは薄暗い空間の中に残響を残して空しく消えていく。
答えてくれる者などありはしない。
アスカは座っていることも出来ずに、床に突っ伏する、
「こんなの……ずるい……。あの子にもう勝つことができないなんて…」
冷たく固い床が頬に触れるが、顔を上げることすら出来ない。
「……あ、あううあああっ!」
顔を床に押し付けたまま、アスカは嗚咽しつづける。
その場所は皮肉にも、赤木リツコが泣き崩れたのと同じ場所だった。
恋を失った少女を、感情を無くした少女がずっと見つめ立ち続けていた。

(つづく)
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