[過去ログ] 東京マグニチュード8.0でエロパロ 震度2 (384レス)
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43: 二学期の、出来事 2010/03/02(火)19:19 ID:Vc/b2MEQ(20/25) AAS
「待ちなよ、ユカ! いったいどういうつもりなの!?」

 未来の手を引いて音楽室に向かうユカについていきながら、苦情を唱えるマユ。何の説明もなく、
未来も自分も巻き込んで授業をサボろうと言っているのだから、文句が出てくるのは当然である。

「だいたい、なんで音楽室なの? あんた、まさかとは思うけど」
「うん。これからピアノを弾くから、未来とマユに、あたしの演奏を聞いてほしい」

 ユカのストレートな回答に、しばし絶句するマユ。ちょうど、音楽室の前に辿り着いたときのことだった。
 三人とも立ち止まり、ユカはマユに向き直る。マユは心底呆れたような顔で、つぶやいた。

「……何考えてんの? 授業サボってこんなことして、未来が喜ぶとでも思ってんの?」
「ちょ、ちょっと、マユ」

 容赦なくユカを糾弾するマユに、うろたえる未来。でも、ユカは引かなかった。マユから目をそらさず、
ユカは答えた。

「未来のためじゃない」

 それは、決定的な一言だったのかもしれない。こんなことを言ってしまったら、もう二人とは友達には
戻れないかもしれない。でも、もう嘘をつくわけにはいかなかった。ここで自分の気持ちを誤魔化すような
ことを言ってしまったら、今度こそ本当に、二人とは笑い合えなくなるような気がした。
 頑張れあたし。負けるなあたし。ユカは、自分に言い聞かせる。

「これは、あたしのただのワガママなの。今、急にピアノが弾きたくなったの。でも、誰も聞いてくれないと
寂しいから、未来とマユに付き合ってもらいたいだけなの。だから、あたしなんかほっといて、授業に行って
くれても構わないよ。ううん、きっとその方がいいと思う」

 嘘は言っていない。自分は全部、本当の気持ちを言っている。これは全部、今自分が考えていることだ。
本当は、とても怖かった。こんなことを言ってしまったら、未来とマユに嫌われて、もう友達ではいられなく
なるような気がして、とても怖かった。ここで二人が自分から離れて行ってしまったら、自分はもう
立ち直れないかもしれない。
 でも、そうなっても仕方がないと思う。たぶん、後悔はしないと思う。今の自分が未来とマユに自分の
気持ちを伝えられる方法は、きっとこれだけだから。一度嘘をついてしまった自分の言葉には、
何の説得力もないと思うから。自分の気持ちを誤魔化しながら二人と友達で居続けるなんて、絶対に嫌だから。

「……行くよ、未来」

 未来の手を掴んで、この場を立ち去ろうとするマユ。ああ、やっぱりこうなっちゃうのか……でも、
悪いのは全部あたしなんだから、しょうがないよね……マユの方が、正しいよね……。
 そんなことを考えて諦めかけたユカだったが、次の瞬間には、マユの足が止まっていることに気がついた。
未来が、この場から動こうとはしなかったからだった。

「……ごめん、マユ。あたしも、サボりたくなっちゃった」

 弱々しくも、意地の悪い笑みを浮かべる未来。マユはまた絶句して、やがて心底呆れたような表情をして、
ガリガリと頭をかいた。そして、開き直ったように二人を非難する。

「あー、もう! 後で怒られるのは三人一緒なんだからね!」

 ありがとう。ユカは、心の底から、そう思った。
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