[過去ログ] 東京マグニチュード8.0でエロパロ 震度2 (384レス)
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35: 二学期の、出来事 2010/03/02(火)19:11 ID:Vc/b2MEQ(12/25) AAS
 ある日の朝。ユカが登校して教室に入ると、未来は今日も先に登校していた。席に座って、窓の外を
眺めている。席が窓際だからなのか、未来は何もしていないときはぼんやりと窓の外を眺めていることが
多かった。それは一学期の頃から変わっていないのだけれど、今の未来の表情はぼんやりと、という様子
ではなかった。なんだか、とてもつらいことを思い出して、それにじっと耐えているような痛ましい表情を
している。ユカは黙って未来の隣の自分の席に座った。挨拶すらためらわれた。

「……あ、ユカ。おはよう」

 ユカに気付いた未来が、パッと表情を変えて挨拶してきた。

 ……未来、本当に大丈夫? 無理してないよね? 頭の中にいろんな言葉を思い浮かべてはみたものの、
結局そのどれも口にすることはできない。短い時間悩んだ結果、実際に口にできたのは、無難な挨拶だった。

「う、うん、おはよう」

 このところ、ユカは未来とうまくいっていない。なんだか、全然自然な会話ができていなかった。
やっぱり、未来に嘘をついたことを引きずっているのだと思う。未来と話そうとすると、申し訳ないという
気持ちが先に立ってしまうのだった。自分でもなんとかしたいと思ってはいるものの、あのときのことを
正直に話すのであれば、泣いている未来から逃げ出したことまで話さなくてはならなくなってしまうため、
なかなか踏ん切りがつかないでいた。おかげでどんどん自己嫌悪に陥る毎日である。
 でも、いつまでもこのままではいられないし、いたくもない。なんとか少しでも話し合わないと。
ユカはとにかく、思いついたことを口にしてみた。

「……未来、最近窓の外、よく見てるよね」

 これだけのことを訊くのにも、かなりの勇気が必要だった。さっきの未来の表情は、本当にそれだけ
つらそうだったから。もしかしたら、余計なことを訊いてしまっているのかもしれない。でも、今は
とにかく未来と話がしたかった。

「……うん。東京タワー……なくなっちゃったんだな、って思ってさ」

 それは、意外な返答だった。以前は教室の窓から、東京タワーが見えていた。それがなくなってしまった
というのは、確かに寂しいことなのかもしれないけれど。でも、それだけであんなにつらそうな顔で外の景色を
眺めるものだろうか。他に何か、理由があるような気がする。しかし、それがなんなのかまでは、怖くて訊けない。

 ああもう! あたしの意気地なし! 未来とちゃんと話がしたいんでしょ!? ユカは自分に言い聞かせて、
さらに話を続けようとする。

「そんなに……ショックだった? 東京タワー、倒れちゃって」

 その瞬間の未来の表情を、ユカはたぶん一生忘れない。まるで涙を流さないで泣いているみたいな、
悲しい顔だった。
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