[過去ログ] 東京マグニチュード8.0でエロパロ 震度2 (384レス)
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31: 二学期の、出来事 2010/03/02(火)19:09 ID:Vc/b2MEQ(8/25) AAS
「ただいま」
「お邪魔します」
「……お邪魔します」

 未来の家は、傾斜地に合わせて建てられたマンションである。地震でもほとんど無傷だった。
弟を亡くした未来だが、住む家まで失わなかったのは、不幸中の幸いと言えるのかもしれない。
帰宅した未来が友達を連れてきているのを見た母親は、顔をほころばせた。

「おかえり、未来。マユちゃんも、いらっしゃい。そちらのお友達は、初めてね」
「ユカだよ、ママ」

 未来が母親に紹介する。ユカは、初めての未来の家の訪問に、すごく緊張していた。

「は、初めまして、お邪魔します」
「いらっしゃい、ユカちゃん。ゆっくりしていってね」

 挨拶した後に、実は未来の母親と会うのがこれが初めてではないことに気がついた。
中学の入学式のとき、入口の前で転んでいた人がいたのを思い出したのだ。それが確か、未来のお母さんだ。
あのときの未来はまだ友達になる前だったけれど、とても大きな声で恥ずかしがっていたので、よく覚えている。
 お母さんも、きっとすごく悲しい思いをしたんだよね……。そう思うと、ユカの会釈はどこか
ぎこちなくなってしまった。

「あの、これ、つまらないものですがっ」

 用意していた菓子折りを差し出す。何しろこういうことは初めてなので、軽いパニック状態である。

「あらあら、そんなに気を使わなくてもいいのに」
「いえ、その、気持ちですからっ」
「ありがとう、ユカちゃんが来てくれて、あの子も喜ぶと思うわ」

 仏壇の前に案内されて、ユカは初めて未来の弟の、悠貴の写真を見た。小学校の入学式のときのものだろうか、
写真の中の悠貴はあどけない笑顔を浮かべている。夏休み前、マユと一緒に一回会ってみたいねって
話してたのにな……。まさか初めて未来の家に来るのが、こんな形になるとは思ってもみなかった。

 ロウソクと線香に火を灯し、線香の火を手であおいで消す。煙の香る線香を香炉に立てて、合掌すること数秒。
こうして、未来の家に来た目的は、ずいぶんあっさりと達成されてしまった。こんな感じで良かったんだろうか。
なんだか形ばかりの弔問になってしまったような気がする。

「じゃあ、あたし達は部屋に行くから」
「うん。マユちゃん、ユカちゃん、今日は来てくれて本当にありがとうね」

 母親に礼を言われはしたものの、それに値するようなことを自分がしたとは思えなかった。
自分は何もしていないのに、作法に任せた半ば自動的な流れで、何もかも終わってしまった。
気持ちが状況に追いつかないまま、未来に促されて、未来の自室に足を踏み入れる。
目に入ってきたのは、二段ベッドと二つ並んだ学習机。その一方を誰が使っていたものなのか、
考えるまでもなかった。

「この机……弟君、のだよね」
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