[過去ログ] 東京マグニチュード8.0でエロパロ 震度2 (384レス)
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29: 二学期の、出来事 2010/03/02(火)19:07 ID:Vc/b2MEQ(6/25) AAS
 あくる日の放課後、三人で一緒に未来の家に行って、仏壇にお線香をあげようということになった。
ユカがずっと静岡に居て連絡が取れなかったので、未来の弟の葬式には出られなかったからだ。
マユは葬式には出席していたのだけれど、ユカが行くのなら自分も、ということでついていくことになった。
こうして、三人で未来の家に向かっている最中のことである。

「この辺りもずいぶん建物が壊れてるんだね……」

 走行中のバスの窓から見える風景を見て、ユカがぽつりとつぶやいた。静岡に居てテレビで震災の映像を
見ていたときもショックを受けたものだけど、東京に戻ってきて自分の目で被災した街並みを眺めると、
言いようのない寂寥感を感じる。まるで自分が生まれ育った街ではないようだった。

「本当、大変だったんだ……」

 地震が起きたとき、ユカはたまたま静岡の祖母の家にいて、難を逃れていた。家族も全員無事だった。
東京に戻ったときも、家の中は倒れた家具や割れた食器などでメチャクチャだったけれど、家自体は無事だった。
おそらく東京在住者の中では、今回の地震で最も幸運だった部類の人間だろう。しかしそのせいか、
地震発生時に東京にいて震災の直撃を受けた人達に対して、ある種の申し訳なさを感じてもいた。
一番大変だった時期に東京にいなかった自分が、多少でも落ち着きを取り戻した頃にのこのこと戻ってきて、
のん気に学校に通っていていいんだろうか……などと考えてしまう。

「大変っていえばさ……トイレが一番大変だったね」
「へ? トイレ?」

 マユの唐突な発言。意外な話の流れに、オウム返しに訊き返すユカ。不幸なことに、このとき未来が露骨に
眉をしかめたことに、ユカもマユも気がついてはいなかった。

「うん、どこの家もトイレが使えなくなっちゃってさ」
「ああそうか、水道とか全部ダメになっちゃったんだもんね」
「そそ、だから近所の人はみんな公園の仮設トイレ使ってたんだけどさ、もう毎日毎日長蛇の列で」
「うへー、それは大変そうだね」
「ほんと大変だったよー。ヤバイと思ってから並んでたんじゃ間に合わないくらい。だから途中から
決まった時間になったらトイレに並ぶ習慣がついちゃってさ、おかげで今でも何もなくてもトイレに
行きたくなっちゃうように……あれ、未来、どったの?」

 全く会話に参加してこない未来の方をふと見ると、あろうことか、未来があからさまに悲痛な
表情を浮かべているではないか。思わずバツの悪い表情をしてしまうマユ。アイコンタクトで
『NG! この話NG!』と訴えるユカ。

「み、未来……ごめん、あたし、なんかまずいこと言っちゃった?」
「いや、ちょっと……嫌なこと思い出しちゃって……」

 ど、どうしよう……未来、すごく嫌そうな顔してる……トイレの話ぐらい大丈夫だと思ってたけど……。
もう未来の前で、地震に少しでも関係のある話はしない方がいいのかな……。

「いいの、もう。気にしないで。とにかく気にしないで」

 ああああああ。未来、すごく気にしちゃってるよおおおお。猛烈な罪悪感に苛まれる、ユカとマユ。
今度から未来の前では、雑談の話題選びは慎重にしようと誓う二人だった。
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