[過去ログ] 東京マグニチュード8.0でエロパロ 震度2 (384レス)
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抽出解除 必死チェッカー(本家) (べ) レス栞 あぼーん

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44: 二学期の、出来事 2010/03/02(火)19:19 ID:Vc/b2MEQ(21/25) AAS
「それはいいんだけどさ……音楽室、鍵、閉まってるんじゃないの?」
「あ、それなら大丈夫」

 マユの冷静な指摘にも、ユカは慌てない。ポケットをゴソゴソと探り、一本の鍵を取り出した。
誇らしげに頭上に掲げて、言い放つ。

「こんなこともあろうかとぉー!」

 どこからか、冷たい風が吹きつけてきたような気がした。未来もマユも、口をあんぐりと開けて、
固まっている。さ、寒い……。ああああ、だってだって、一回言ってみたかったんだよおおおお。

 でも、今はこんなことでへこたれてはいられない。ドン引きされたって、構うもんか。
 ユカは音楽室の防音扉に鍵を差し込んで、解錠する。練習に使っているピアノが地震で壊れたと
先生に話したら、いつでも学校のピアノを使っていいからね、と言って預けてくれた鍵だった。
省13
45: 二学期の、出来事 2010/03/02(火)19:20 ID:Vc/b2MEQ(22/25) AAS
 未来。本当にごめんね。あたしね、酷いこと考えてたんだ。
 あたしね、未来の頭の中から、弟君なんていなくなっちゃえばいいと思ってたんだよ。
 だって、未来の悲しい顔を見たくないんだもん。悲しくてつらいのを我慢して平気そうにしてる、
未来の顔を見たくないんだもん。そんな未来に、なんて話しかけたらいいのか、わからないんだもん。
 本当、自分勝手で、酷い友達だよね。はっきり言って、友達失格だよね。こんなあたしに、
未来にしてあげられることなんて、あるわけないよね。

 だから、この曲は未来のための曲じゃない。この曲は、あたしが自分の気持ちを伝えるための曲。
わがままで一方的で、空気を読まないただの自己主張。未来の悲しい気持ちは、あたしにはわからない。
本当の悲しみを知らないあたしには、未来の気持ちはわかってあげられない。
 だからこの曲は、悲しい曲じゃない。これは、嬉しい気持ちを伝える曲。未来とマユがあたしの
省22
46: 二学期の、出来事 2010/03/02(火)19:20 ID:Vc/b2MEQ(23/25) AAS
 終わっちゃった……。最後の一音まで、弾き終わってしまった。曲の余韻に浸るのも、束の間のことだった。
だんだん、頭の中が冷静さを取り戻してくる。静寂の中、心臓の鼓動が、やけにうるさく感じられた。
 あたし、もしかして、今、とんでもないことしてるんじゃ……授業サボっちゃったし、音楽室無断使用してるし、
未来とマユも巻き込んじゃったし……ああああ、何これ、すっごい恥ずかしい。穴があったら入りたいよおおお。

 拍手が聞こえた。最初は一人分の拍手だった。それがすぐに二人分の拍手に変わる。未来とマユが、
演奏を終えたユカに、拍手をしてくれていた。

 ああ、そうだよね……あたしが二人を巻き込んだんだもん、ちゃんと二人と向き合わなきゃ……。
なかなか鳴り止まない拍手の中、ユカは意を決して立ち上がる。まだ二人の顔を直視する勇気が持てなくて、
すぐにぺこりとお辞儀する。拍手は鳴り止まない。ユカは、なかなか顔を上げられない。まずい。
泣いてしまいそうだ。
省29
47: 二学期の、出来事 2010/03/02(火)19:21 ID:Vc/b2MEQ(24/25) AAS
 三人はもちろん職員室に連行されて、説教された。未来が泣き腫らした顔をしていたせいか、
そんなにきついお咎めは受けなかったのだけれど、それでもユカは心の底から反省した。

 先生、授業サボって、本当にごめんなさい。音楽室を無断使用して、本当にごめんなさい。
 もう二度とこのようなことは致しません。本当に、すいませんでした。

 当然、音楽室の鍵は没収された。こりゃもう、ピアニストになるのは無理かもね。
 お母さん、小さい頃からピアノを弾かせてくれたのに、本当にごめんなさい。

「……まったく、信じらんないよね。今どき先生に説教されて廊下に立たされるとか、
あり得ないから。全部ユカのせいなんだからね!」

 廊下で反省中の身なので小声ではあったが、これでもかと言わんばかりにユカを罵倒するマユ。
先生の説教よりも、よっぽどこたえる。本当に、なんでこんなことしちゃったんだろう……。
省27
48: 二学期の、出来事 2010/03/02(火)19:22 ID:Vc/b2MEQ(25/25) AAS
 たぶん、地震の前と同じようにはいかないと思う。
 未来はきっと、弟君がいなくなった悲しい気持ちを抱えたまま、笑ってる。
 あたしは、未来を傷つけて後悔した気持ちを引きずったまま、笑ってる。
 マユのことは、あたしはバカだからよくわからないけれど、何も悩んでないわけはないよね。
 いつか、マユのこともわかってあげられるようになれたらいいなと思う。
 きっと三人とも、地震の前と同じようには笑えない。
 でも、それでも、今、三人で一緒に笑ってる。
 前と同じではないけれど。何もかも元通りというわけにはいかないけれど。
 それでも、また、三人で、一緒に笑えたんだ。

 職員室の戸が勢いよく開いたのは、そのときだった。
省10
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