[過去ログ] サムスピ総合エロ萌えSS 4 (538レス)
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510: 陸捨肆 2013/10/19(土)08:12 ID:I9Am4IzT(1/7) AAS
心の海に自らの魂を沈めて、どれぐらいの時間がたったのだろう。
リムルルは未だ、いつ終わるとも知れない暗い海の底へと向かっていた。
だが、冷たさも暗ささえも意味を失い、感じることができなくなってきた。

――『おわり』、かな……?

リムルルは、おぼろげに理解した。
誰も訪れたことの無いほどの深さ、感じることも許されない暗さが支配する世界と、
自分自身の魂が同一になろうとしているのだ。
話に聞いたポクナモシリは、ここには無かった――いや、そもそも自分は死ぬのとは違う、
リムルルはそう思う。ポクナモシリは死後の世界だ。死んだ先の話。死んだ後の未来の土地。
だが、リムルルが歩むものは――
省22
511: 陸捨肆 2013/10/19(土)08:13 ID:I9Am4IzT(2/7) AAS
小さな唇が、誰に宛てるでもなく、その言葉を形作り――

『どうして?』

微かな女性の声だった。遠い瞬きが、突然リムルルに問いかけた。
だが、閉じかけた扉の向こうからの呼び声に、リムルルは応じるつもりは無い。
落ちていく自分そのままに、光の届かない方へと沈み行く。
『こんなに若くて、清らかな魂……。どうして自ら終わろうとしているの?』
今にもはじけそうな瞬きは、なおも問いかける。
『こんなに暗くて冷たい場所に、何を隠しているの? 何を……恐れているの?』
返事も無いまま、消え行く深海の主へと言葉を投げかける。
『分かるわ。どんなに辛い過去が、この闇の中に隠されているか……でも』
省28
512: 陸捨肆 2013/10/19(土)08:14 ID:I9Am4IzT(3/7) AAS
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ぎひーっ、ばたむ。
玄関の扉がそっと閉まる音がして、コウタの部屋を流れる時間が、再び止まったかのようだった。
一糸纏わぬまま、レラはがっくりとうなだれ、ひとり、その空間に取り残されていた。
本当に、時間が止まってしまったのだろうか……そう感じるほどの静寂だった。
だが、窓から吹き込む風がむき出しになったレラの身体を撫ぜ、肉体に刻まれた無数の傷が
ひりつくような痛みを訴えた。非情なほどに、時は流れ続けている。
レラはひとり、身を硬くした。
「うっ……ううう」
嗚咽を漏らす頬に、寒風に晒されたのとは違う、熱い、熱い痛みが伝い、畳に砕けた。
省34
513: 陸捨肆 2013/10/19(土)08:15 ID:I9Am4IzT(4/7) AAS
レラは両肩を抱き、爪を立てた。そうでなくても痛む全身に、さらに追い討ちをかけるように。
「なのに……なのにダメだったわよ。ねえ、何で? 何でなのよ!? 私が見た真実が
間違っていたとでも?あなたと、あなたとの命の遣り取りは、絶対の真実だったでしょう? 違う?」
両手を肩から腕に、腕から胸に。
「ひとつ、ふたつ、みっつ……」
レラはカムイの森で刻まれた傷を丹念に数えていく。
「とお……痛ッ……! ほら、全部っ、全部本当」
腹、背中、太もも。
川底のように冷え切った部屋の中、痛みに顔を歪めながら、それでもレラは傷をなぞる。
「ここまで私を追い込んだ、他でもないあなたが刻んだ傷……全て、真実でしょ?」
省32
514: 陸捨肆 2013/10/19(土)08:17 ID:I9Am4IzT(5/7) AAS
レラには返す言葉は何も無かった。彼らの怒りはもっともだった。
アイヌモシリに罰を与えたければそうすればいい。しかし、全部がぜんぶ納得は出来ない。
カムイのやろうとしていることが真実だとは、到底感じられないのだ。

――なぜ……魔界の門を開こうなどと?

想像を絶するほどの災厄と地獄が封じ込められた、いわばこの宇宙の禁忌……魔界門。
かつて、幾多のウェンカムイや、ウェンカムイにとりつかれた人間達が魅入られ、
こじ開けようとし、何度封じ込められてきたというのだろう。
レラもその実体は見たことは無い。しかし一度開けば、大地はおろか太陽をも飲み込み、
その魔の手はカムイモシリやポクナモシリ(冥界)にまで及ぶことは、容易に想像がつく。
連綿と続いた世界の、終わりの始まり。それが魔界の真実だ。
省35
515: 陸捨肆 2013/10/19(土)08:17 ID:I9Am4IzT(6/7) AAS
「ふ ふふ」
レラは、縮めた肩を震わせて弱く笑うと、それ以上の行為にふけることは無かった。
――なるほど ね。コウタ……あなた、私なんかより、何枚も上手だったってわけね。
右手を濡らした蜜をぺろりと舐めて、深いため息をひとつ。
レラは、戦いでぼろぼろになった服に、再び袖を通し始めた。
「確かにあなたの言うとおり……私が欲しかったのは、あなたじゃないわ。隠すまでも無い。
私に必要なのは……羅刹丸。私を必要としてくれる、あの男だけ」
腰紐をぎゅっと締めて、レラはもう一度白い息を吐き、精神をひとつにしていく。
玉虫色に輝いて自分を惑わす『真実のようなもの』を追い払い、心の中から不純物を取り去っていく。
すると、レラは自分の内側から、力強い波動が蘇ってくるのに気がついた。
省20
516: 陸捨肆 2013/10/19(土)08:18 ID:I9Am4IzT(7/7) AAS
「ふっ、くくく……あははははは!」

真面目ぶった口ぶりから一転、レラはこらえきれず、腹を抱えて笑い出した。
「大自然の戦士? 半面? ははは! いい加減にして欲しいわねぇ、本当に」
自分以外には誰もいない部屋で、チチウシをしまうことも忘れ聞こえよがしに、大声で。
「供物だの何だの、失われた命を蘇らせるだの! あなた達、いい加減にしなさいよ」
カムイの森で言い渡されたときの衝撃は、もはやどこにもなかった。それどころか、
思い出すほどに滑稽で、ばかげた話に感じられてくる。
「いいこと、教えてあげる。私はねえ、風なのよ! あなた達にも、時代にも、宿命にも
縛られることはないの! そして私自身にもね!」
視界が、五感が、どこまでも拡がっていくかのようだ。
省16
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