[過去ログ] 動物の悲しみ 4 (再) (262レス)
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255: .. 2007/04/17(火)23:36 ID:WoT4vDBA0(1/3) AAS
十月十三日、その日は空が青かった。
空気はびんとして、黄金色をしたやわらかな陽の光が部屋に射していた。
クロは、厚く布を敷いた籠の中に、目を閉じていた。小柄な黒い猫。
首に赤い毛糸を編んで作ったリボンをしている。
ある日の晩、家の前に停められた車の下から、「ニャア」といって足元に出てきた猫がいた。
家に入れて、少しばかりのごはんを食べさせると、それが気に入ったのか、翌日には塀の上から
家の中を覗き込んでニャアニャアいう。
窓を開けると、そこからぽんと飛び込んできた。家中をひと回り見て回った後は、ずっとここに
住んでいたような顔をしてすましている。
256: .. 2007/04/17(火)23:36 ID:WoT4vDBA0(2/3) AAS
こうしてクロがうちの猫になってから、十年が経っていた。
いつも元気だったクロは、今はもう水も飲めない。「クロ」と呼びかけてみる。
それにしっぽが、かすかに答えた。
時だけが過ぎていった。
とても長く感じられる夜が始まったころ、籠の中のクロが立ち上がった。
籠を飛び出ると、その傍らに敷いたままになっている布団まで歩いてくる。いつも寝ていた布団だった。
枕の横に頭をつけると、力が消え失せたように倒れこんだ。
前足を握って、体を摩る。
小さな胸の中で心臓がトクトク動いているのが、手のひらに伝わってくる。
とても速い。足や体が小刻みに震え始めた。
257: .. 2007/04/17(火)23:37 ID:WoT4vDBA0(3/3) AAS
今までに聞いたことのない、長く、悲しい響きの中で鳴く。
呼びかけにしっぽは答えない。少しあけた目に薄い光を浮かべて、クロはやがて静かになった。
胸の中からは、何も伝わってこなかった。抱きかかえると、まだ温かく、やわらかい。
落ちる涙がクロを濡らした。
一週間目の夜、枕元にクロがやってきた気配を感じた。
布団に入りたい時、よくしていたのと同じに、顔のところで様子を窺ってから、「ニャア」といった。
夢うつつの中、クロは遠くへ行く前のお別れに来たんだなと思った。
きっと幸せだったに違いない。
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