[過去ﾛｸﾞ] ワイが文章をちょっと詳しく評価する！[61] [無断転載禁止]©2ch.net (470ﾚｽ)
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212(9): 先頭行訂正ｗ 2016/02/18(木)10:23 ID:6ILIyNMl(2/2) AAS
生まれ故郷に転勤になったのは偶然だった。勤め先から30分も飛ばせば行ける小さな集落は随分変わってしまっていたが、そこかしこに昔の匂いを見つける事ができる。
大きいと思っていたものは小さく、家から遠いと思っていた場所は車で５分の場所だった。小学生になって自転車という足を手に入れた俺は帰りの予定も考えずに走りまわったんだ。
車の窓から見える風景を懐かしみながら俺は生家まで戻って来た。しかし山のふもとの生家を見た瞬間、懐かしさよりも何か忘れているような気がした。何かが足りない。
俺は振り返った。収穫が終わったこの田んぼで野球をした。久しぶりに田んぼの中を歩いてみる。この感触だ。田んぼの感触。稲刈りが終わればここを走り抜けて道の先へと
ショートカットしたんだっけな。スーツに革靴という格好も気にせず俺は当時のように走った。すぐに近づいてきた低いコンクリート壁をひょいっと飛んで道路に出た。
しかし膝に手をついて息をついているとふくらはぎの内側が汚れているのに気がついた。俺は顔をしかめたが、そのまま歩き始めた。しばらく歩くと川が見えてきた。ここでよく釣りをしたんだっけ。
土手まで来て川を覗き込むと、流れ自体は幅5ｍほどだ。俺ははたと思いついて川の向こうを見た。遠く一団の住宅の中に駄菓子屋が見える。俺は少し回って橋を渡り、田んぼを駆け抜けた。
店はまだ営業していた。すまし顔で店に入ってきょろきょろと見回すと、見つけた。埃を被っているとはいえ竹の釣りセットだ。セットを買った俺は釣り場へと走った。
土手を降りると土手を木の棒でほじくりかえしてミミズを捕まえた。3ピースの竿を継いで糸巻きから仕掛けをほどき、ミミズをつけて水面へと投げ入れる。浮きをじっと見ていると
ぴくぴくと動いている。高鳴る鼓動に追い討ちをかけるように俺の胸に衝撃与える浮きの沈下。素早く竿を上げると釣り上がってきた魚は白銀の魚体を躍らせて抵抗する。
省26
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