【復活】ニセ目医者・欲皮張蔵 (36レス)
1-

1: 作者 ◆L25G6ZgWC6 2015/05/02(土)22:18 ID:NjmsNifd+(1/6) AAS
眼科稼業はそっちのけ。我利我利亡者のコンタクト会社と壮絶なサバイバル闘争を繰り広げた、あのコンタクト眼科の申し子・欲皮張蔵センセイが、地盤沈下した現代のコンタクト業界に颯爽と閑古鳥、じゃなかった不死鳥のように甦る!
しがらみが解けて自由奔放に健筆再開といきたい。乞うご期待!
2: 作者 ◆L25G6ZgWC6 2015/05/02(土)22:25 ID:NjmsNifd+(2/6) AAS
近所のドドールで簡単な昼を済ませるのが、張蔵の日課であった。自身が開業する「欲皮眼科医院」は平日の午前中はガラ空きで、暇な年寄りが白内障の目薬を取りに来るくらいであった。
「パシャ!」張蔵は頼んだハムサンドをスマホで撮影した。いまいち慣れないので無音カメラアプリなどは知らない。店じゅうに撮影音が響いて他の客が振り向いたがお構いなしてあった。
3: 作者 ◆L25G6ZgWC6 2015/05/02(土)22:29 ID:NjmsNifd+(3/6) AAS
「これを眼科のブログに載せるんだよ…ドドールでランチタイム♪、と」いい年したオッサンが貧乏臭い昼飯を載せたところで集客になどならないはずだが、お構いなしであった。
暇もあって張蔵はブログを頻回に更新していたが、内容はどれもこれに似たような誰得?な情報発信で、自己満足以外の何ものでも無かった。
4: 作者 ◆L25G6ZgWC6 2015/05/02(土)22:34 ID:NjmsNifd+(4/6) AAS
その日の午後は都内の別な眼鏡店の付属スペースでアルバイトを入れていた。「お、そろそろかな」薄いアメリカンをズズッと飲み干して、張蔵はバイト先へと向かった。
5: 作者 ◆L25G6ZgWC6 2015/05/02(土)22:43 ID:NjmsNifd+(5/6) AAS
都内の老舗眼鏡店「蛾乱堂」に着いた頃には午後2時を回ろうとしていた。
「どうもー」張蔵は店員に会釈して自分の席についた。店内の隅の間仕切りもない机が定位置で、そこに診察する患者が連れて来られるという仕組みだ。死角が無いので読書もスマホもできずに無為に時間を過ごす苦痛なバイトであったが、張蔵も背に腹は変えられなかった。
6: 作者 ◆L25G6ZgWC6 2015/05/02(土)22:53 ID:NjmsNifd+(6/6) AAS
「あーどうも先生、今日もお願いします」店長が形ばかりの挨拶に来た。「いやー、急なお願いをお引き受け頂いて助かりました。院長がまた体調不良らしくて…全く女医さんは困りますねぇ」
ここの院長は聖マルチーズ医大卒の皮膚科医の女医だったが、よく休むので暇な張蔵によく代診依頼が来ていた。自院との掛け持ちなので、本来なら倦厭される半日案件であったが、張蔵には渡りに船であった。
7: 2015/05/03(日)06:03 ID:9ebnRuORH(1/3) AAS
懐かしいな。
8: 作者 ◆L25G6ZgWC6 2015/05/03(日)13:50 ID:6KJUjydnp(1/4) AAS
「まぁお大事に、とお伝え下さい」張蔵が殊勝に話すと、急に店長は畏まって去っていった。悪口に乗ってもらえず面白く無かったのだろうか。
ここ蛾乱堂眼鏡店はデパートに入っていて、平日でもそこそこ年寄りやヒマを持て余した主婦が来たりして、決してバイトとしてはオイシイ案件ではなかった。しかし張蔵にはそんなハイソな雰囲気も味気ないいつもの生活からしてみると憧憬の対象であった。
9: 作者 ◆L25G6ZgWC6 2015/05/03(日)16:14 ID:6KJUjydnp(2/4) AAS
張蔵はかつて大東亜オプタルというコンタクト会社と組んでコンタクト眼科の「雇われ」院長をしていたが、その悪辣なやり口に辟易して手を切り、自らいわゆる医師系コンタクトを立ち上げ一国一城の主として戦ったのだった。
しかし今の張蔵は疲れ切って往年のほとばしる勇姿は消え失せていた。何か死んだ魚の目のようなドンヨリした雰囲気が立ち込めていたのであった。
10: 作者 ◆L25G6ZgWC6 2015/05/03(日)17:40 ID:6KJUjydnp(3/4) AAS
欲皮眼科の周りには競合店がひしめき合っていた。都心から県境またいで30分ほどの地味な急行停車駅の商圏にしては明らかに過多であった。
張蔵と決裂して恨み骨髄の大東亜オプタル、中堅の不死コンタクト、老舗医師系のチープコンタクト、他に地場の眼鏡屋などが軒を連ねていた。
さすがに往時のような過激な安売り競争はお互い自粛していたが、駅前はチラシ配りが牽制しあっていた。こうした状況で張蔵陣営は消耗を強いられる結果となった。
11: 作者 ◆L25G6ZgWC6 2015/05/03(日)18:57 ID:6KJUjydnp(4/4) AAS
スケールメリットの無い張蔵は厳しい状況に晒されていた。バイトで何とか食いつないで次の戦略を練り直すしかなかった。
「バイトばかり入れてしまうと自分のところの患者を診るのが減ってしまうしな…」
張蔵は追い詰められていた。
12: 作者 ◆L25G6ZgWC6 2015/05/03(日)20:48 ID:9ebnRuORH(2/3) AAS
張蔵は蛾乱堂のバイトを終えて、牛丼屋で腹ごしらえをした。
そのまま帰宅してグッタリ…であれば安眠できそうなものだが、今のギリギリの経営状況ではそれさえも許されなかった。
彼はあらかじめ駅のコインロッカーに入れておいた荷物を回収して、ターミナル駅の場末の喫茶店で時間をつぶした。仮眠できなくなるのでコーヒーは避けたいところであったが、タバコを吸うとついつい誘われてしまうものである。
店を出る頃には23時を回っていたが、彼は駅とは反対方向へ大きなバッグを片手に歩いていた。おおよそ彼が医者だと気づく者はいなかった。
13: 作者 ◆L25G6ZgWC6 2015/05/03(日)20:58 ID:9ebnRuORH(3/3) AAS
そんな張蔵の後をつける、黒ずくめの男がいることに張蔵は気づいていなかった。地味ななりでスポーツ新聞で顔を隠しながら、男は張蔵と一定の距離を保つことに腐心していた。
幸い張蔵は駅とは反対方向に歩いていたので、人混みにまぎれて見失う心配はまず無かった。
と油断したのがマズかった。男はいかにも怪しい風体だったので警官に呼び止められ職質を受ける羽目になってしまった。解放された時には張蔵の姿はなかった。男は舌打ちしながら終電に間に合うよう家路につくしかなかった。
14: 作者 ◆L25G6ZgWC6 2015/05/04(月)18:59 ID:saaXg2pU7(1/2) AAS
男は次の日も欲皮眼科に行ってみたが、張蔵の姿は無かった。
その次の日の朝から張っていると、8時頃に一昨日と同じ大きなバッグを手にした張蔵が疲れ切った様子で無精ヒゲを生やして眼科に現れた。
いったいどこに居たのだろう?自宅に帰っている様子は無い。男は煙に巻かれた気分でいた。
15: 作者 ◆L25G6ZgWC6 2015/05/04(月)19:14 ID:saaXg2pU7(2/2) AAS
今日は一日張蔵は眼科で仕事をしていそうだったので、男は見張りを止めてアジトに戻った。
コンビニ袋を下げて薄汚い雑居ビルの階段を駆け上ると、3階の事務所のすりガラスに「茅野探偵社」と書かれた部屋があり、男はそこに入った。
無愛想な女が事務員をしていて、濃い目のお茶を入れてきた。「所長、稲木サンという女性の方からお電話がありました。番号を伺ったんですがまた掛けるからいいと…」「あ、分かってるからいいよ、有難う」
その女性こそ欲皮張蔵の尾行を依頼してきた人物であった。
16: 2015/05/04(月)19:17 ID:4j8UpFrTB(1) AAS
なんだ、暴露ネタかと思ったらサスペンスかwww
17: 作者 ◆L25G6ZgWC6 2015/05/05(火)15:29 ID:bnJllfATJ(1/3) AAS
探偵の茅野が稲木と名乗る女性から欲皮張蔵の素行調査を頼まれたのは、先週のことだった。
「浮気調査とは違うんですね?」
「ええ、違います。私は別に欲皮先生の奥様ではありません。名字も違いますから」言われてみればその通りだが、それならなぜしがない中年眼科医が仕事外の時間に何をしているのか関心を抱くのか、茅野には理解不能だった。
18: 作者 ◆L25G6ZgWC6 2015/05/05(火)15:41 ID:bnJllfATJ(2/3) AAS
その女性が話すには、張蔵は不定期に別なコンタクト眼科でバイトをしているが、その前の日の夜から姿を消し自宅に戻らず、バイトの次の日の朝に欲皮眼科に直接戻ってくるという。バイトには出ているようだが、その前後で所在不明になるというのだ。
19: 作者 ◆L25G6ZgWC6 2015/05/05(火)20:10 ID:bnJllfATJ(3/3) AAS
普通に考えればわざわざ探偵稼業をしていなくても女の影を感じるはずだ。しかし浮気調査では無いらしい。
不可思議な依頼ではあったが茅野が断る理由にはならなかった。欲皮眼科ではないが茅野探偵社も似たような同業が乱立して青息吐息であった。お茶汲みだっていつまで雇っていられるかといった体たらくであった。
「行動は規則的なはずです。特に期限はありませんが詳しく調べて下さい。くれぐれも欲皮先生本人に気付かれないように…」女は無表情に茅野に告げた。
20: 作者 ◆L25G6ZgWC6 2015/05/05(火)23:41 ID:4+pewrCsB(1) AAS
稲木と名乗る女依頼主は、手付と称して10万円置いていった。茅野は久々の贅沢に寿司屋で洒落込んでみた。
と言っても生来の貧乏性で回転寿司がせいぜいだった。もっと高くて星のつくような店に入ってみたい気持ちはあったが、たまの贅沢と細君に誘われても決してそういう気取った店に入るのは避けてきた。勿体無いと誤魔化していたが、つまらない惰性が邪魔してきたのだろうか。
1-
あと 16 レスあります
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル

ぬこの手 ぬこTOP 0.549s*