◎●○三島由紀夫の名言・格言○●◎ (853レス)
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544: 2010/08/05(木)10:59 ID:Ez6vk3ij(1/7) AAS
想像力といふものは、多くは不満から生まれるものである。あるひは、退屈から
生まれるものである。われわれが危急に際して行動に熱中し、生きることにすべての力を
注いでゐるときには、想像力の余地をほとんど持つことがない。もし、想像力がノイローゼの
原因になるとすれば、空襲にさらされた戦争中の日本は、最もノイローゼの出にくい
状況であつた。

人生といふものは、死に身をすり寄せないと、そのほんたうの力も人間の生の粘り強さも、
示すことができないといふ仕組になつてゐる。ちやうど、ダイヤモンドのかたさをためすには、
合成された硬いルビーかサファイアとすり合さなければ、ダイヤモンドであることが
証明されないやうに、生のかたさをためすには、死のかたさにぶつからなければ証明されないのかもしれない。

三島由紀夫「若きサムラヒのための精神講話」より
545: 2010/08/05(木)11:00 ID:Ez6vk3ij(2/7) AAS
泰平無事が続くと、われわれはすぐ戦乱の思ひ出を忘れてしまひ、非常の事態のときに
男がどうあるべきかといふことを忘れてしまふ。金嬉老事件は小さな地方的な事件であるが、
日本もいつかあのやうな事件の非常に拡大された形で、われわれ全部が金嬉老の人質と
同じ身の上になるかもしれないのである。

危機を考へたくないといふことは、非常に女性的な思考である。なぜならば、女は愛し、
結婚し、子供を生み、子供を育てるために平和な巣が必要だからである。平和でありたい
といふ願いは、女の中では生活の必要なのであつて、その生活の必要のためには、何ものも
犠牲にされてよいのだ。
しかし、それは男の思考ではない。危機に備へるのが男であつて、女の平和を脅かす危機が
来るときに必要なのは男の力である。
省1
546: 2010/08/05(木)11:00 ID:Ez6vk3ij(3/7) AAS
約束や信儀は、実は快楽主義のためにさへ守らなければならないのである。なぜなら快楽は
鳥の影のやうなもので、一度われわれがそれをつかみそこねたら永遠に飛びさつてしまふ
からである。

私は昔から約束を守らない女性は、どんな美人であつても嫌ひである。なぜなら私の考へでは、
どんな快楽も信儀の上に成り立つといふ考へだからである。

伝統は守らなければ自然に破壊され、そして二度とまた戻つてはこない。

外国人の目には、すべて民族的な服装は美しい。しかし美しいのと、便利とは別である。

日本人は、わりに便利といふことに弱い国民である。
省2
547: 2010/08/05(木)11:00 ID:Ez6vk3ij(4/7) AAS
人間は、場合によつては、楽をすることのはうが苦しい場合がある。貧乏性に生まれた人間は、
一たび努力の義務をはづされると、とたんにキツネがおちたキツネつきのやうに、身の扱ひに
困つてしまふ。

人間の能力の百パーセントを出してゐるときに、むしろ、人間はいきいきとしてゐるといふ、
不思議な性格を持つてゐる。

社会全体のテンポが、早く走れる人間におそく走ることを要求し、おそく走る人間に早く
走ることを要求してゐるのである。
これが現代日本の社会のひづみの、おそらく根本原因である。

三島由紀夫「若きサムラヒのための精神講話」より
548: 2010/08/05(木)12:00 ID:Ez6vk3ij(5/7) AAS
この世界には不可能といふ巨きな封印が貼られてゐる。

本当の危険とは、生きてゐるといふそのことの他にはありやしない。生きてゐるといふことは
存在の単なる混乱なんだけど、存在を一瞬毎にもともとの無秩序にまで解体し、その不安を
餌にして、一瞬毎に存在を造り変へようといふ本当にイカれた仕事なんだからな。こんな
危険な仕事はどこにもないよ。存在自体の不安といふものはないのに、生きることが
それを作り出すんだ。

男は大義へ赴き、女はあとに残される。

大義とは? それはただ、熱帯の太陽の別名だつたかもしれないのだ。

三島由紀夫「午後の曳航」より
549: 2010/08/05(木)12:00 ID:Ez6vk3ij(6/7) AAS
ところでこの塚崎竜二といふ男は、僕たちみんなにとつては大した存在ぢやなかつたが、
三号にとつては、一かどの存在だつた。少くとも彼は三号の目に、僕がつねづね言ふ世界の
内的関聯の光輝ある証拠を見せた、といふ功績がある。だけど、そのあとで彼は三号を
手ひどく裏切つた。地上で一番わるいもの、つまり父親になつた。これはいけない。
はじめから何の役にも立たなかつたのよりもずつと悪い。
いつも言ふやうに、世界は単純な記号と決定で出来上つてゐる。竜二は自分では知らなかつた
かもしれないが、その記号の一つだつた。少くとも、三号の証言によれば、その記号の
一つだつたらしいのだ。
僕たちの義務はわかつてゐるね。ころがり落ちた歯車は、又もとのところへ、無理矢理
はめ込まなくちやいけない。さうしなくちや世界の秩序が保てない。僕たちは世界が
省3
550: 2010/08/05(木)12:01 ID:Ez6vk3ij(7/7) AAS
血が必要なんだ! 人間の血が! さうしなくちや、この空つぽの世界は蒼ざめて枯れ果てて
しまふんだ。僕たちはあの男の生きのいい血を絞り取つて、死にかけてゐる宇宙、
死にかけてゐる空、死にかけてゐる森、死にかけてゐる大地に輸血してやらなくちやいけないんだ。

彼はもう危険な死からさへ拒まれてゐる。栄光はむろんのこと、感情の悪酔。身をつらぬく
やうな悲哀。晴れやかな別離。南の太陽の別名である大義の叫び声。女たちのけなげな涙。
いつも胸をさいなむ暗い憧れ。自分を男らしさの極致へ追ひつめてきたあの重い甘美な力。
……さういふものはすべて終つたのだ。

誰も知るやうに、栄光の味は苦い。

三島由紀夫「午後の曳航」より
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